第2話

「ああそうだ。小春さん、聞いた? 今朝の、ビッグニュース」

 今朝は、二人きりになる部屋に朝食から帰って来て早々、先輩がそう口を開いた。

 外は明るく、強い日差しが部屋へと差し込む。

「何ですか?」

 部屋の椅子に座っていた私は振り返りながら訊き返した。

「二つお隣の清良さん、今週末に彼氏とデートなんですって」

 先輩は嬉しそうな声音で言うのだけれど、それが一体どうして嬉しいのか私には分からなかった。そんなこと、私たちには関係のないことではないのか?

 二つ隣というのは、わたしたちの暮らす寮室の二つ隣の部屋に住んでいるという意味で、清良さんは先輩のクラスメイトでよくお話する間柄だ。

 反応の薄いわたしに、先輩はちょっと安心したような表情を作って、それからいつも通り、「そろそろ出ましょうか」と学生鞄を持ち上げた。


 私たちは始業の十五分前に教室へ着くように一緒に学校へと向かう。喧嘩こそしないけれど、仲が良いねと言われることはあんまりない。

 女の子しかいない学校では、疑似恋愛や疑似家族のように「仲良く」している女生徒たちがたくさんいるから。それに、喧嘩をしないのはお互いがお互いに遠慮しているからだ。

 下駄箱の場所が違うから、「いってらっしゃい」と言い合って、私たちは玄関で別れる。目についた生徒たちに「ごきげんよう」とか「おはよう」とか挨拶をしていると、先輩のことなんてすっかり忘れてしまった。

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