6・どこにでも潜む脅威
「──ッ、殺意……!?」
ある一点から、並々ならぬ殺意を感じた。それは明らかに人間のものではなく、彼にとって非常に馴染み深いもので。
それは偶然にも相手チームのゴール付近から感じられた。
だがしかし、亜人である事を
ごうっ、と風を切る音。
砂埃すらも巻き起こし、そのボールは豪速球で相手チームのゴール──……のネットを突き破り、その更に向こうの目に見えない敵へと直撃した。
突然の事に誰もが開いた口が塞がらない。
酷い虚弱体質で運動神経もあまり良くないと噂されていた京夜が、予備動作も無しにあれ程のスーパーロングシュートを決めたのだから、それは誰しもが驚愕するに値する事だろう。
だが、これで終わりではなかった。
普段の無気力な姿からは想像がつかないような真剣な表情を作り、京夜は累へと指示を出した。
「累、校内放送とかで今すぐ学校の人間を全て避難させろ。あと篤に連絡してくれ」
「っ! 分かった。でも京夜一人で大丈夫?」
「……まぁ、死にはしないだろ」
「僕もすぐ戻って来るから!」
唖然とするクラスメイト達を置いて、二人は話を進める。京夜の指示に強く頷き累が動き出した時も、京夜の視線はボールが
「先生、それに皆もよう聞いて! ──今この学校内に、
「えっ、
「何で学校に?!」
「に──ッ、逃げろぉおおおおおおお!」
累の言葉を聞かず、クラスメイト達は蜂の子を散らすように逃げ始めた。
「話聞いてた!? 何好き勝手逃げとんねん! ええからはよ固まって校外に逃げて!!」
普段は温厚な累がここまで大声を出す事はかなり珍しい。その気迫に気圧されたクラスメイト達は、累の言葉に従うように一塊になって校門の方へと走り出した。
「おい東雲、お前と周も逃げないと駄目だろう!? 早く警察と保安局に通報して──……」
「保安局への通報は僕がしときますんで、先生も早く逃げてください。ここおったら、下手したら死にますよ」
体育教師が教師としての責務故か累に駆け寄るも、彼は食い気味にそれをあしらう。それどころか、累は教師の背中を押して逃げるよう再度言う。
それに教師が目を丸くしていると、
ドォンッッッ!
遠くの方で轟音と共に土煙が上がる。その直後土煙から飛び出して来たのは──全身二メートル程はある大男と、それの攻撃に受け身で対応する京夜の姿。
先程まで見えなかったその
この音は教室で授業中の生徒達にも聞こえていたらしい。気もそぞろになった生徒達の誰もが、何事かと前のめりで窓から運動場を見下ろしていた。
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