第10話 それでも君が好きだから

何をやっているんだろうと思う。

思いながら俺は赤くなりながら教室に帰って来ると。

よう。腸チフス野郎、と声がした。

友康である。

俺を逆恨みの様な目で見てくる。


「何処行ってたんだよマジに?大変だったぞ」


「.....あ、ああ」


「.....同時に美鈴も戻って来ず居なくなってよ。.....全くお前は」


「.....あ、ああ」


「おい。真面目に聞いているのかお前は」


イカン頭がボーッとする。

思いながら美鈴を見る。

美鈴は笑みを浮かべてニヤッとしていた。

その様子を友康は?を浮かべて眉を顰めて見る。

俺は汗を流した。


「.....何かあったのか?」


「何も無い。すまんかったな。さっきは」


「にしては相当な汗だな?」


思っていると頬を膨らませたカナールがやって来る。

何処行ってたんですか、と怒りながら。

俺は、す、すまん。体調不良だ、と答える。

するとカナールは、本当ですかぁ?、という感じで見てくる。


「.....友康さんは何か知っていますか?」


「さあ。このアホに聞け」


「投げるな!?」


「当たり前だろお前。ふざけんなよマジに。良さげな感じをさっきの時間で繰り出していたら殺すぞ」


「俺だって好き好んで腸チフスになった訳じゃねぇ!」


ほほーう。

この事は全部お前の幼馴染のミクさんに報告だな、と言う友康。

いやちょっと待て。

それはマズすぎるから止めてくれ。

思いながら俺は顔を引き攣らせてから居ると。


「.....カナール?」


そんな声がした。

背後を見ると目を丸くしているミクが居た。

どうやらカナールを見たのは3年ぶりで初めてらしい。

するとカナールは、お久しぶりです。ミクさん、と頭を下げた。

そしてニコッとする。


「.....カナールさん帰って来てたんだね」


「.....そうだな.....すまん。報告が遅れた」


「.....うん。聞いてる。腸チフスになって授業サボったんだよね」


「.....」


友康ぅ!!!!!

チクったなこの野郎!!!!!

まさかもうチクっているとは!!!!!

思いながら顔が深刻を増していくミクを見る。


「.....どうしてかなぁ?」


「.....そ、それはですね.....」


「サボったとはどういう事ですか?アキヒトさん.....?」


「そ、それは.....」


駄目だこれ.....。

オッフな状況だわ。

思いながらミクを見る。

そしてカナールを見つめる。

困った.....。


「あ、あの」


「.....ん?どうしたの?美鈴さん」


「美鈴サン?」


「.....あまり昭仁君を責めないで下さい。私が.....悪いのです」


美鈴は言いながら胸に手を添える。

そして決意した様に顔を上げて2人を見る。

2人はビックリしていた。

美鈴が原因とは思わなかったのだろう。


「.....美鈴さんが原因ってどういう.....?」


「.....えっと.....その。.....私.....」


「.....?」


「.....私。昭仁くんに告白しました」


「「「「「.....!?」」」」」


クラスメイトが固まった。

まるでアスファルトの様に、だ。

そして友康も固まった。

それから2人は驚いた顔を見せる。


「.....私は昭仁くんが好きです」


「お、お前.....美鈴!?」


「.....私を慰めてくれて.....それで席を外していました」


「.....何故お前それを!?」


いや状況がどんどん悪くなるだろ!

思いながらカナールとミクを見てみると。

ミクもカナールも顎に手を添えていた。

作戦を講じている様に見える。


「富山。死んで下さい」


「そうだな。死ね富山」


「富山マジ卍」


クラスメイト達が憤怒の罵声の声を上げる。

その中で友康だけはいつもと違う感じだった。

それから、美鈴。お前昭仁が好きなのか、と聞く。

俺は?を浮かべて友康を見る。

すると友康は顎にまた手を添えた。


「.....今回は俺は美鈴の側につくわ」


「.....え?」


「友康?」


「俺の幼馴染が恋をしているんだぞ。それだったら普通はそっち側につくのが当然と思わないか」


「.....有難う。友康.....」


何だコイツ.....珍しい。

思いながらも、まあ当然か、と思いつつ2人を見る。

2人は俺を見ながら頷き合った。

それから美鈴を見る。


「.....美鈴さん」


「美鈴チャン」


「.....はい」


美鈴は何かを察しながら真剣な眼差しになる。

そしてカナールとミクをそれぞれ見る。

それから2人はこう言った。

君がそうなら、と。


「負けないデス」


「私は気に掛けているだけだけど。それでも幼馴染だし」


「.....はい!」


こうして何かの関連図が出来上がっていく。

俺は今の姿を見ながら苦笑する。

そして次の授業が.....始まろうとしていた。

中間考査も近い。

勉強しないと。

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