第9話 ファーストキス

これはどういう状況だ?

思いながら俺は心臓をバクバクさせる。

それから俺は美鈴を見る。

美鈴は赤いままで俺の手を握っている。

握ってて離さない。


「.....み、美鈴。すまないが戻った方が良いと思う。俺的には.....」


「.....そ、うだよね.....」


「.....そ、そうだな」


美鈴は全くこっちを向かない。

それどころか俯いたまま顔が見えない。

どうなっているのだこれは?

何故俺は女子と2人きりで授業をサボっている?

思いながら状況でまた心臓が高鳴ってしまう。


「.....ねえ。昭仁君」


「.....な、何でしょう?」


「私が白雪姫なら.....起こしてくれる?」


「.....白雪姫.....ま.....まさか」


「.....そう。キス.....出来る?」


ば、馬鹿じゃないのか。

俺は思いながらも。

真面目な顔をしている美鈴に真剣に答えなくてはと思った。

そして俺は考える。

それから頬を掻いた。


「.....お前が白雪姫で.....もし.....仮にももし起きなければ。.....俺はお前にキスをすると思う」


「.....それは大切って事?」


「.....当たり前だろ。お前は.....俺を助けてくれたんだ。存在が」


「.....1年前の事?」


「ボッチだった俺に.....幼馴染を紹介してくれたじゃないか。.....友康っていう」


「うん。でもそれだけしかしてない。.....それ以外はしてないよ」


実は話してないが。

友康と美鈴は幼馴染であり。

そして俺の友人である。

つまり.....コイツを美鈴と呼んでいるのはそれが理由だ。


「.....友康は.....良い人だよね」


「.....うん。俺はそう思う。アイツが居なかったら。お前が居なかったら。何も変わらなかったこの頃だ」


「.....そうだね」


そんな他愛ない会話をしながら。

俺達は流れる雲を見る。

サボるのって心地良くないって思っていたけど。

案外晴れの日は良いかもな。

思っていると。


「.....ね、ねえ。膝枕してあげよっか」


「.....はぁ!!!!?」


「男の子ってこうすると喜ぶって言ってた。女子が」


「.....ま、まあそうだけど!夢だけど!?」


「.....じゃ、じゃあ」


そしてスカートを整えて膝を差し出す。

俺はその姿を見ながらゴクリと喉を鳴らす。

それからそのまま膝枕をしてもらった。

そうしてからゆっくり上を見ると。

そこに赤くなった顔の美鈴が見下ろしていた。


「.....ちょ、ちょっと恥ずかしいね」


「そりゃまあな。当たり前だと思うぞ」


「男の子の夢って誰かが言ってたけど.....本当に夢なんだね」


「.....そうだな。本来ならお前が好きな相手にしてあげる必要があるけどな」


「.....まあそうだね」


少しだけ複雑な顔を見せる美鈴。

俺は?を浮かべながら美鈴を見る。

すると美鈴は、ねえ。もしキスするって言ったらどうなる?、と言ってくる。

何故そんな質問が!?


「.....いや。もし私が恋人だったら.....どうするって話かな」


「.....そ、それは.....どうにも。考えられない。俺がお前の様な可愛い奴と.....」


「そ、そ.....そう?」


「お前は愛しいぐらいに可愛いよ」


「.....」


すると.....美鈴の顔が近付いてきた。

何をする気だ、と思っていると。

俺の唇にそのまま唇を重ねた。

そして離す。

.....てぇ!!!!?!!!!?


「お、お、お前!!!!?」


「抑えられないけど。.....言いたい。.....私は.....貴方が好き」


「.....え.....」


「.....私。恋をしているの.....貴方に」


「.....お前.....」


誰にも負けたくない。

だから私は貴方が好きって今言っておく。

幼馴染さんにも.....カナールさんにも負けない。

私は.....強く居たいからキスをした。

絶対に負けないから、と。


「.....お前が.....そんな事って.....」


「.....だから泣いていたの。.....私負けたかなって。でも勝負はこれからだった。負けない。私はカナールさんにもみんなにも」


「.....」


「.....これはファーストキスだよ。.....愛してる」


「.....」


心臓が高鳴り過ぎてヤバいんですけど。

何を言えと?こんな可愛い子に。

好きって言われて.....ダメだ。

麻痺っている。

完全に、だ。


「.....思考回路が全く定まらないんだが.....」


「返事は要らない。でもこういう女の子も身近に居るってこと。知っておいてね」


「.....マジかよオイ.....」


「告白してスッキリした。胸のモヤモヤが」


「.....」


汗が吹き出してきた。

鼓動が速くなる。

顔が見れない。

あまりの衝撃に、だ。

ヤバい.....ヤバい!


「私は勝ちたい。.....昭仁君は私のものだから」


「.....美鈴.....」


「エヘヘ。愛してる」


「.....ったく」


汗が滲んできたな。

困った告白だわ。

5月だってのに.....畜生め。

思いながら俺はそのまま空を見上げた。

心臓の鼓動を落ち着かせる為に。

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