第7話 魔を屠る怒りの刃(と○る魔術の〜風)

美鈴は本気で料理を作った。

その料理メニュー。

焼き魚、冬瓜の煮付け、味噌汁、卵焼き、ご飯。

馬鹿みたいに作ってくれた。

しかも味見したら異常に美味い。


「.....良かった。緊張していたけど作れて」


「お前本当にすげぇな.....こんなのを本当に作れるなんて」


「冬瓜の煮付けは私の好物です」


「.....ああ。そ、そうなのか」


冬瓜とか料理の為に処理するだけでゾッとする。

未知の食い物だわ。

確かネットで観たことあるが硬いらしい。

外側が全部、だ。

だから未知の食材である。


「しかし美味い.....」


「美味しいねぇ」


「.....良かった。喜んでくれて。朔子ちゃんも」


そんな事を言いながらニコニコする美鈴。

そしてハッとして顔を上げてから。

じゃあ帰るね、と言ってくる。


俺は、あ、ああ、と返事しながら美鈴を見る。

本当にこれだけの用事で来たのか?

ありえないんだが。

思いながら、なあ。美鈴、と尋ねる。


「何?昭仁くん」


「.....お前本当にこれだけの用事か?本当に目的があったんじゃないのか?」


「.....うん。でもそれはもう叶っちゃった」


「.....は.....?」


「良いから。気にしない」


何が叶ったのだ?

全く分からない.....、と思いながら美鈴を見る。

美鈴は満面の笑顔でそのまま玄関を開ける。

それから帰って行った。

するとポコッと背後から朔子に叩かれる。


「何すんだよ」


「.....もー。お兄ちゃんったら。乙女の秘密に食い込もうとしたでしょ」


「.....駄目なのか?友人だぞ?」


「当たり前だけど駄目に決まっているでしょ。.....全くお兄ちゃんの鈍感」


「.....???.....俺って鈍感なのか?」


「うん。鈍感すぎ」


だけど今日は料理のお見事サポート。

朔子的にポイント高い、と言いながらウインクする朔子。

意味が分からないが.....まあ高いなら良かったんじゃないかな。

思いつつ俺は.....そのまま苦笑しつつ。

戻るか、と話した。


「だねぇ。.....料理が冷めないうちに」


「そうだな。せっかく作ってくれたしな」


そんな会話をしながら。

俺達は笑みを浮かべつつ戻ってから食事をする。

というかこの味付けは.....俺好みだが?

まさかアイツ.....計画的?



「おにーちゃん」


「.....何だ?」


「おにーちゃんは乙女の心が分かりませぬ。だから今から教育します」


「.....は?.....え?」


風呂に入ってからボーッとしてテレビを観ているとそう言われた。

俺は?!と思いながら風呂に入った朔子を見る。

そして朔子はニヤッとしながら、1。乙女は砂糖菓子です、と言ってくる。

砂糖菓子って何だ?


「つまりそれだけ甘く。壊れ易いの。だから気を付けなさい」


「へ、へい」


「2。おにーちゃんは限度を知らないと」


「へ?限度って.....?」


「乙女の心に忍び込みすぎ」


「あ、はい」


俺はテレビを切りながら反応する。

すると朔子が横に腰掛けてきた。

それから人差し指を立てる。

そして笑みを浮かべる。


「3。喜ぶ事をする。気を遣う」


「.....え?それは何時もやっているぞ」


「チッチッチ。まだまだだねぇ。おにーちゃん」


「.....へえ.....!?」


難しいもんだな?

乙女の心ってのは。

思いながら俺は顎に手を添える。

そしてグルグルメガネをすちゃっと身に付けた朔子を見る。

それパーティー用のメガネだろ。


「.....おにーちゃん。まだまだ学習が足りないよ」


「俺なりに必死にはやっているんだが.....」


「まだまだ。.....おにーちゃんは.....付き合った経験はあるんだから。しっかりして」


「.....」


懐かしい記憶を出すね。

俺は思いながら苦笑いを浮かべながら.....窓から外を見る。

サロンドル・カナール。

俺のフランス人の元カノだ。

今からそうだな.....3年前の。


「.....その事はもう諦めているからな。.....当てにはならん」


「.....まあそうだね。.....でもきっかけは知っているでしょ?」


「.....確かにな」


俺は少しだけ苦笑しながらもその言葉に答える。

そして溜息を吐きながら.....1週間だけの付き合いだったけどな、と答えた。

ホームステイで帰ってしまったから、だ。

だから当てにならない。


「.....おにーちゃんは後悔してないの?」


「どう後悔するって?彼女も幸せになっている筈だ。俺なんか忘れてな」


「.....」


「.....だからもう良いんだ。.....有難うな心配してくれて」


グルグルメガネを外しながら俺を見る朔子。

俺はその姿に頭を撫でた。

そして、まあまた再会出来たら.....その時は、と言う。

そんなこんなで俺は翌日を迎えた。



「サロンドル・カナールです!日本に移住して来てばかりです!宜しくお願い致します!」


「「「「「いやっふぅ!!!!!美少女ぉ!!!!!」」」」」


クラスの男子は盛りをした猿の如き。

金髪碧眼美少女。

あの頃と変わらない感じの顔立ちも小さい相当なフランス人形の様な美少女。


神様.....貴方は何故こんな試練を.....。

俺は思いながら赤面でカナールからずっと外を逸らす。

気が付かれない様に、だ。


「おい。何であの娘から目を逸らしてんだよ?昭仁。外国人の美少女だぞマジな」


「.....ウルセェ。お前は黙れ」


「意味が分からん。今すぐにでも貰っちまうぞ俺が」


「.....」


そうしてくれると有難い.....が。

思いながら外を見ていると。

駆け寄って来る音がした。

そして両手で右手を掴まれる.....ファ!?

俺はビックリしながらカナールを見る。


「アキヒトさん。お久しぶりです。私です。カナールです!」


「.....あ、ああ。お、おう」


貴方にまた出会えて幸せです!、と微笑みながらカナールが言った瞬間。

クラスがマイナス120度ぐらいで瞬間凍結した。

完璧凍結の様な感じで、だ。

友康もそうだが。

美鈴も凍りついた。


「.....オイ。.....昭仁くぅん?.....その女の子とどういう関係かな?」


「.....お、おう。えっとな.....」


「私の白馬の王子様です!」


「「「「「.....」」」」」


早退して良い?俺。

マジにクラスメイトにぶち殺されるかもしれんわ。

思いながら目の前の友康を見る。

友康は、ぁは?、とか言って手をコキコキ動かしていた。

美鈴は悲しげな目をしながら逸らしている。


あ、死んだわこれ。

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