11.囚われ
太宰さん、寝たかしら。
私の胸の中で、か細い寝息が聞こえる。善かった。今日は寝れた。寝ないのによく頭が働くこと。
寝顔は年相応なんだから。普段の怖い顔からは想像できない。美人さん。十五歳の頃から、変わっていないようで、確実に大人の男性に成ってる。あんなに丸かった眼も、鋭く。華奢だった身体も、逞しく。それなのに。
「治さん……」今日眠れないのは私。彼の蓬髪を撫でながら、彼の心音、彼の寝息に耳を澄ませる。時折、腰を抱く手に力が入る。「一緒に居られるのが幸せだよ。私ね、貴方が思ってるよりも、貴方を愛してるらしいの」
おやすみなさい。
一つだけキスをして、私も……
「卯羅……おはよう」
いつの間にか。陽が差していた。お休みで善かった。胸に擦り寄ってくる太宰さん。「卯羅の夢見てた」
「眠れたの?それ」
「眠れたよ。卯羅の夢を見ると落ち着くんだ。君が居てくれる、それだけで安心するのかなあ。不思議だね」
笑う顔は少年の顔。可愛い。ずっと手元に置いておきたい。母性?まさか。私にそんなものがあるなんて思えない。ただ、太宰治という男の魅力に囚われているだけ。
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