8.寒の入り

「解った、解ったから」

首領の呼び出しから解放され、自宅に戻り、風呂を出た後、何が原因かはさておき、卯羅を怒らせたらしく、寝室から閉め出された。無論、事をしようと、相応の格好。寒い。流石に廊下は寒い。

「卯羅ぁ、機嫌を直しておくれよ〜」

「もう治さんとは寝てあげない」

「えー……弱ったなぁ……じゃあ他の子のところ行こう」

「……行けば善いじゃない」

「行けるわけ無いだろ、この格好で!家出た瞬間に捕まるだろ、変質者って!」

「一度捕まれば善いじゃない!」

部屋の扉越しに聞こえる声。なんだ、直ぐ其処にいるんだ。もう寝台に入って無視されるのかと思った。

「きっと捕まったら、出てこれないよ?」

「……それはぁ……」

語尾は小さく、消えるように。「なあに?聞こえなぁい」

「嫌だ!それは嫌だ!」

「だろ?だから、入れてよ」

先ずは原因解明が先。何に怒ったんだろう。

確かに寄り道はした。今日は織田作達とは飲みに行かず、軟派した娘にちょっかいかけてた。それから帰って、卯羅の作ってくれた夕飯を食べて、共に風呂に入り、今に至る。

「うーん、降参!卯羅、降参!お願いだから中入れて!というか、顔見せてよ!」

精一杯の懇願。風邪ひくよこのままだと。君に抱かれるなら善いけど、夜風に抱かれるのは嫌だ、寒い。喧嘩して仲直りすることを、雪解け、とか云うらしいけど、解ける前に私が凍死するよこれ。

「ちゃんと反省して」やっと扉を開けてくれた。目だけ覗かせて、私を伺っている。

「卯羅の胸に手を当てて考えるから」

鼻先で、ぴしゃん。カチャって音がした。

「ねえ」返事がない。「卯羅?卯羅ぁ」返事が無い。待って、待ち給えよ。寝た?

また少しだけ扉が空いて、寝間着が出てきた。封印してた、起毛のもこもこしているやつ。これだけでとても暖かいんだよね。卯羅とお揃いでウサちゃん柄。

「それなら寒くないでしょ?おやすみなさい」

「寒くないけども!卯羅!」

布団に潜る音がする。鍵、開けたら怒るだろうなぁ……。

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