4.甘んずる

 嗚呼。またか。

 隣で眠る卯羅の身体に触れる。

 独特の湿り気を伴い、赤紫に色付く身体。彼女の異能の象徴、花弁が彩るよう。

「卯羅、痛かったろう……」

 行為の疲れで眠りにつく。顔は安らかだが、内はどうだ?

 解らない。

 卯羅にしか解らない。

「可愛い子兎ちゃん……」

 何度この行為をしたのだろう。何度君の身体を傷つけ、君を泣かせた?

 最中に流るる涙。痛みか、それとも感情の拒絶か。

 いやに求めてしまう。

 君が其処に居てくれる証。

 私を受け入れてくれる証 。

 愛してと泣いていた少女。手元でただ愛でていた。愛玩具として。それがどうだ、今や手放す事が憚れる。

 此処まで他人を欲するなど。

 私には有り得なかった。何故卯羅だけ。

「一番愚かなのは私なのかもしれないね」

 凡てお前がした事だ。そう示すように寝返り。その度に新たな花弁が。

 執着し、欲したのは私か。安らかな寝顔に向ける顔は、歪ではないか?欲に歪み、痛め付け、我が物にしようとしていないか?

 そんな事は、どうでも善い。

「卯羅、君はこの先も、私だけを欲してくれるかい?」

 答えは無い。それもそうかと、一人で嗤う。

「おさ……む……ふふっ」

 寝言か。だとしても。

「これからも、一緒に居て善いかい?」

「……いて……どこ……」

 探るように手が動く。そっと指を添えてやる。「いたぁ……」私の指を握っておやすみなさい。少し上がった口角の無邪気さ。

 ずっと居てやろう。傍に居てやろう。

 卯羅は私のもの。私だけのもの。姐さんにも、森さんにも渡さない。この先、誰が波風を立てようとも、絶対に。

 君が受け入れてくれた行為と気持ち。そして受け取ってくれた銀で作られた証。これがある限り、私たちの気持ちは似ているだろう。

 永遠に共にいる方法は解っている。だがそれを実行するには。まだ足りない。まだこの重苦しくも愛しい関係に甘んじていたい。

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