3.思い出
「これやっぱり買おう……」
「卯羅がそういうの買うの珍しいね」
お姉ちゃんと買い物に行った時に見かけたインスタントカメラ。撮ったらその場で写真が出てくるんだって。
「お姉ちゃんは、中也さんと、あと何年一緒に居れるかなとか思ったこと無い?」
「あんまり無いかなぁ。卯羅そういう事考えてるの?」
「最近、なんとなく思うんだよねぇ」
ピンクの機体を手に取ってレジに。勧められるままに、予備のフィルムも買った。
明日、放課後に治くんとパンケーキ食べようって約束してるから、持っていこ。
「……という訳で、買ってみた」
「へえ」
パンケーキを待ちながら、カメラのお話。治くんは珍しい物を見るように、手に取り、姿形を検分する。
「なら、記念すべき初撮影は、この男前にしたらどうだい?」
自ら構えて自撮り。無機質なぜんまいの音と一緒にフィルムが出てくる。やっぱり美人さん。
「卯羅」
手渡された写真に見とれていると治くんが。私に向けて、一枚。
「うーん……矢張可愛い。愛らしさの天才だよ」
アルバムの表紙はこれで決まりだね、と二枚を並べる。
その後も、パンケーキを食べてる治くんを撮ったり、あーんしてくれる治くんを撮ったり。一枚でも多く、笑顔の治くんを撮りたい。
「肝心なのを撮っていないね」
帰り道。二人で並んで歩いていたら、貸して、と治くんが。くっと腕を引かれて、密着。「ほら、カメラ見て」
カシャッ
軽やかな音と、頬に触れる何か。出てきた写真を確認。
「治くん!」見た瞬間に顔が赤くなって、思わず彼の袖を掴む。
「たまにはこういう写真も善いだろ?」
悪戯に笑うのが好きで好きで。握り直された手を、握り返す。
ずっとこのまま、二人で。ずっとずっと、一緒に居れたら素敵。お家に帰ったら、二人のアルバムを作ろう。今までの写真も全部。
この先も、ページを増やせますように。
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