5章

1.

はぐれ山――


剣俊連なる山岳地帯であるパンテーラの地においても、一際高く険しい山。

まだこの地が人の支配を受けていなかった頃には『鉱精<ドワーフ>』たちの王国が存在し、栄華を極めたと伝えられている。

頂上付近には、山肌を直接くりぬいて作られたドワーフの住居群が広がっている。それも原始的な横穴式住居ではない。

彼らの手による精巧な彫刻が内外問わず掘られており、それはそれは荘厳華麗な景観であった。

言い伝えによると、王国の中心――山の最深部まで続く元ドワーフ王の居城に、莫大な財宝が隠されているという。


ありし日。欲深いはぐれ山の王は、山の内部に豊富に眠る鉱脈を掘り出し、国民のドワーフたちに見事な細工が施された武器や防具、宝飾品などを作らせていた。

近隣の国々と取引し、外貨を獲得し、富を貯め込み、国は豊かになっていった。それだけに飽き足らず、王は財力に飽かせて世界中の美術品や珍しい魔術品をかき集めコレクションもしていた。


もっと、もっと欲しい。欲に支配された王は、軍備を整え、他国への侵略をも企み出す。

近隣の『森精<エルフ>』の国の王は、ドワーフ王に対し幾度もその行いを改めさせようと、書状や使いの者を送った。

だが、ドワーフ王の際限なく膨れる欲は留まる所を知らなかった。


そんな矢先――王国に、天から悪魔が舞い降りた。


皮膜の乾いた羽音に住民たちが気付いた時にはもう遅かった。空から火炎が降り注ぎ、街は焼かれた。

ドワーフ王は負けじと王国軍を差し向ける。ドワーフ軍の兵たちは、自在に空を飛ぶ奴に対しバリスタで応戦する。

ドワーフ王国のバリスタは、はぐれ山の鉱脈にて採掘されるミスリル銀を鍛えて作られる。その鏃の硬度において、世界中のどの兵器も右に出る物はない。

そのはずだった。しかし、奴の身体はそれよりも硬く、全て弾かれてしまった。ドワーフ王国軍はなす術もなく、その悪魔に蹂躙される。


ドワーフ王はエルフ王に助力を求めたが、エルフの国からの援軍はなく、ドワーフ王国は敢え無く壊滅した。

ドワーフ亡き後、はぐれ山を支配した新たな主の名は『翠玉鱗の竜王』――



リオンたちは、はぐれ山頂上付近の遺跡群に辿り着いていた。

あぎと谷を出発して以来、ここまで来るのにそれ程の苦労はなかった。新たにパーティに加わった頼もしい仲間のおかげだ。


一人は99号。

ウサギ森でも彼女には助けられた。メイド服姿で華奢な身体に似ず、いくつもの長大な刀剣のような武器を使いこなす。

森ではマンドラゴラの群れをたった一人で撫で斬りにしてしまった。あぎと谷でも巨大な山椒魚のような竜を倒すきっかけを作ってくれた。

なぜ番号で呼ばれているのかは聞いていない。きっと、触れてはいけないような事情があるのだろう、とリオンは勝手に思っている。ドロシーが『クク』という愛称を付けたので、今ではそう呼ぶことにしている。スケアクロウは頑なに「メイド」と呼び続けているが。


もう一人。

執事のような格好をした、猫のそれにしか見えない耳と尻尾が生えている不思議な少女。

初めて出会ったのはあぎと谷からだが、その時は転移の魔法でいきなり現れた。空間を飛び越え、離れた場所へと瞬時に移動できる高位の古代語魔法――おそらく世界中を探しても使用できる魔法使いは数える程だろう。今のドロシーには無理だ。

どうやら人をからかうのが趣味らしく、ここまでの道程でリオンたちは彼女のイタズラに辟易していた。特にスケアクロウの反応が面白いらしく、彼はよくターゲットにされていた。


彼女らとの道中、何度か魔物の襲撃があった。

パンテーラに生息する魔物といえば、例外であるウサギ森のマンドラゴラを除くと、山の原生生物が変異したものがほとんどである。

その中でも、知性が発達した狼『ワーグ』はやっかいだ。リオンの村にも稀に家畜を狙いにやって来ることがある。

奴らは3、4頭の徒党を組み、普通の狼の群れを統率して襲って来る。まるで軍隊のように戦略的な狩りを行い、人間も不意を突かれ何もできずに食い殺されてしまうことがままある。

他にも、人間とは別の社会を築いている亜人の部族『ゴブリン』。人間の子ほどの背丈しかないが、その繁殖力と狡猾さは油断できない。人間から盗み取ったであろう武器で装備を固め、中には簡単な魔法を使う者もいる。

ワーグを飼育することもあり、一大勢力を築いて人間の国家と戦争状態にある部族も存在するという。


これらの魔物の襲撃は、99号――ククがほぼ一人で撃退してしまった。

ブリガンドが魔物の接近を察知すると同時に、彼女は背負っている剣を抜き、飛び出していってしまうのである。

リオンたちも慌てて後を追うが、追いつく頃には魔物は既にバラバラに切り刻まれていた。

規模の大きい群れに囲まれたこともあったが、その時でもリオンたちは多少の露払いをしただけで、99号は真っ先に群れのリーダー個体を斬り伏せてしまった。

チェシャ子はというと、高位の魔法の使い手であろうに、戦闘時には皆の影に隠れて逃げ回るばかりだった。怖いニャ怖いニャと喚いているが、戦えないはずはなさそうなものだが……


また、この旅において、最大の楽しみはキャンプ中の食事となった。

パンテーラの山脈には小動物や鳥も多く生息しており、食材には事欠くことはない。リオンたちが狩ってきた獲物は、全てククが美味しく調理してくれた。

中でもインパクトがあったのは、『魔物料理』だ。

はぐれ山の裾野辺りでは、竜の膝元だけあって獲物が全くいなかった。根こそぎ竜に捕食され尽くしてしまったらしい。

そこで仕方なく、その日に出くわした大型の『人食い芋虫<クロウラー>』を料理することになった。

このクロウラーは竜のせいで長く食事にありつけなかったせいか、非情に凶暴だった。竜に捕食されず生き延びていただけあって、外殻は堅く強敵だったが、リオン、スケアクロウ、ブリガンドが狙いを引きつけ、殻の隙間からククが斬りつけた後、ドロシーの魔法を傷口から叩きこみ倒すことができた。

ついさっきまで長い胴体をうねうねとさせ、無数の脚でガサガサと動き回っていたやつだ。料理するとなると、リオンは表情をひきつらせ、ドロシーは泣きそうになりながら拒否した。

それでも、ククの手によって油でからっと揚げられたクロウラーの肉は、芳ばしく香り彼らの食欲を刺激する。

スケアクロウがおそるおそる手を伸ばしてみる。そして、その味に驚愕した。例えるなら、炒ったピーナッツの味だ。生きていた時のうねうね、うにょうにょとした気色悪い感触はどこにもない。さくさくと歯触りが良くとても美味だ。冷えたエールが飲みてぇぜ、との彼の談だった。

ドロシーなどは何でこんなものが美味しいの、と地団駄を踏み、なぜか悔しそうだった。

リオンもその味の虜になり、むしろ魔物料理が楽しみと感じるようになっていく自分の味覚が心配になりもした。


しかし、ここから先は今までと同じようにはいかないようだ。

目の前に広がる荘厳な遺跡は朽ち果て、崩れた瓦礫がまるで迷路のようだ。しかも、上空には『翼手竜<ワイバーン>』が三頭、旋回を繰り返している。

リオンたちは奴らに見覚えがあった。村を襲った翠玉色の竜の取り巻きどもだ。

ここは既に、村を壊滅に追いやった翠玉色の竜のテリトリーなのだ、と実感する。

いくら99号が並々ならぬ強さだとしても、『仄暗き激渦の主』と同等と見られる竜の群れを一度に相手にするのは苦しいだろう。

リオンたちはワイバーンに見つからないように、朽ちた住居跡の影に隠れながら進むことにした。



2.

リオンたちは上空のワイバーンに注意を払いながら、遺跡の中を慎重に進む。

ブリガンが反応していないので、地上からの襲撃は今のところ大丈夫そうだが、油断はできない。

岩壁をくり抜かれて作られた住居跡に沿って、背を壁に当てながら歩く。

頭上ではちょうど岩が張り出して庇のようになっており、ワイバーンの監視の目からリオンたちを隠す形になっている。


ふと、ドロシーは岩壁を見上げてみる。いや、岩壁と呼ぶには、それは美しすぎる。

壁一面に見事な彫刻が掘られ、神殿と呼んでも差し支えない荘厳さだ。あちこち欠けているのが惜しまれる。

四角い窓のような穴が等間隔にずらりと並び、この岩壁がまるごと一つの巨大な居住施設であるようだ。向こうやそのまた向こうにも見える同じような岩壁も、もしかしたら中で繋がっているのかもしれない。

そういえば、お婆ちゃんから聞いたことがあった。パンテーラの地に人間が住むようになる以前に、ドワーフたちの王国があったこと。ドワーフたちは鍛冶や細工技術に優れ、彼らの国は全面に彫刻が施された、荘厳華麗な都市国家であったことを。

その国の残骸を今、自分は歩いている。ドロシーは少し感慨深い気持ちになった。できることなら、今背にしている居住施設の中に入って探検してみたい。竜を退治して無事村に帰れたら、また来よう。リオンと、クロウもブリガンも一緒に。


「ふひゃっ!?」


唐突に鼻にこそばゆさを感じ、思わず声を出しそうになるのを、ドロシーは手で抑えて堪える。

我に返ると、目の前には細い枯草がゆらゆらと揺れていて、それがドロシーの鼻をくすぐったようだ。またチェシャ子のイタズラだ。


(ちょっと! こんな時に何してんの? 竜に見つかったらどうすんのよ!)

(いや~、何か考え込んでるから、ちょっとイジってみたかったのニャ。)


小声で講義するドロシーを後目に、チェシャ子は前を行くリオンの首筋を狙う。


「うひゃぁああ……もがっ!?」


素っ頓狂な声で叫ぼうとするリオンの口を、ドロシーとスケアクロウが全力で抑えつける。


(ぐぐ、苦しいよ……ドロシー、クロウ……)

(この馬鹿野郎! 竜どもを呼び寄せる気か!)

(ご、ごめん……)


揉み合う三人の隙間を縫って、枯草が今度はスケアクロウの眼前に出現する。

スケアクロウの顎の下の僅かな空間から、執事服の袖だけが生えており、スケアクロウの鼻に枯草を差しこむ。


(この猫女、くだらねぇ事に転移魔法を使いやがっ……はっ……ふぁっ……)


スケアクロウは耐え切れず、くしゃみをしそうになってしまう。

その鼻を小さく華奢な手がぐにっと掴む。ククだ。


「んが!?」

「敵が来た。」


ククは息苦しそうなスケアクロウにポツリと言う。

見れば、ブリガンドが腰の剣に手をかけ周囲を警戒している。いつの間に? だが、それらしい気配はない。


ズズ……ズズズズ……


……いや、地面が微かに揺れている。

地の底から、徐々に何かが迫って来ているような圧を感じる。


ゴッ!!


次の瞬間、リオンたちが立っている地面が弾けた。

大量の土と石と共にリオンたちは宙に巻き上げられ、散り散りに地面に叩きつけられてしまう。


「い、痛たた……何が起こったんだ……みんな、大丈夫かい?」


尻もちをついたまま腰を撫でるリオン。その傍らに99号がふわりと着地する。どうやら彼女は上手く躱したようだ。


「竜に見つかった。」


99号は既に長大な刃を抜き、もくもくと立ち昇る土煙を注視している。

土煙の中に、巨大な何かの存在を感じ取れる。


――臭う……臭うぞ……人間の臭い……何ゆえ、このはぐれ山で人間の臭いがする……?――


巨木のような太く長い何かが、鞭のように土煙を斬り裂く。


バキバキバキバキ……!!


「ああっ、遺跡が……」


見事な彫刻が掘られた岩壁が、無惨にも崩されていく。

土煙を挟んだ反対側で、ドロシーは思わずつぶやく。


土煙が晴れたそこには、巨大な蛇のような魔物がとぐろを巻いていた。遺跡の壁を破壊した巨木のような太い何かは、奴の胴体だった。

手足が無く、鋭くささくれだった鱗に覆われた太く長い胴体。棘だらけの鎌首に目は見当たらず、代わりに感覚器官だろうか、左右にいくつかの穴が開いている。口は喉元まで裂け、サーベルのような長い牙が二本、下へと飛び出している。

胴体はとぐろを巻いているものの、尻尾の先端はまだまだ先にあるようで、長い身体の余った部分は地中の中へと続いている。


「な、何だこのでかい蛇……あぎと谷の竜より大きいんじゃ……」

「蛇なんてとんでもないニャ! ウォームだニャ~!?」


引きつった声で言うリオンを遮り、チェシャ子が悲鳴を上げる。そして、さっさと空間の歪へと一人隠れてしまった。


「あの猫、自分だけ逃げやがって……何だ、ウォームってのは?」


消え行く空間の歪に向かって舌打ちしたスケアクロウは、隣にいるドロシーに尋ねる。


「……うちの魔導書で読んだことがあるわ。ウォームは竜の眷属のうちの一種で、竜の原種とも呼ばれているの。猛毒を吐いて、地中を泳ぐように自由に移動するって。こんなに大きいなんて、どれ程永く生きているのかしら……」


遥か頭上の巨大な鎌首は、先の割れた長い舌を小刻みに震わせている。まるで地面を這う幽けき獲物どもに狙いを定めているかのようだ。

喉元まで裂けた口がゆっくりと開き、人の言葉を紡ぎ出す。


「この古の王国跡は、我ら竜の眷属とその主『翡翠鱗の竜王』の縄張り……人間如きが足を踏み入れて良い場所ではない。あぎと谷を預けた”激渦の”の気配が消えたと思うたが、もしや、うぬらの仕業ではあるまいな……!」


ウォームの低い声がびりびりと下っ腹に響く。まるで山全体に共鳴でもしているかのような物凄い威圧感だ。

リオン、ドロシー、スケアクロウの三人は目の前の巨大な存在に恐怖する。奴は、あの日村を焼き払った翠玉色の竜よりもずっと大きく見える。そんな奴を相手に、いったいどう戦えば良いのだろう。

蛇に睨まれた蛙の気持ちというのは、きっとこのような感じなのだろうか。


さらに状況は悪化する。

ウォームの声に反応したのか、上空を旋回していたワイバーンがばさばさと羽音をたてながら降りて来た。ウォームを中心に散り散りになっていたリオンたちを、三頭のワイバーンがさらに取り囲む。

ククは背中の武器を抜こうとするが、リオンは彼女の肩を掴んで制止する。彼女の刃は確かに風の如く速く、鋭い。もしかしたら、この中のどれか一頭を屠ることくらいはできるのかもしれない。

しかし、一頭に斬りつけた所で、その隙に別の個体に喰いつかれるのは容易に想像できる。かと言って、この状況を抜け出す方法など考えもつかない。


「きゃっ!?」


ウォームの巨体の向こう側から、ドロシーが悲鳴が小さく聴こえる。

同時にワイバーンがグゲ、ゴゲ、と鳴くのが聴こえた。続いて、スケアクロウの声。

まさか、ドロシーとクロウがワイバーンに……リオンの脳裏に、竜に貪り食われる幼馴染の姿が浮かぶ。


「ドロシー! クロウ! な、何てことだ……クソッ……」


今すぐ剣を取って竜どもを斬り捨ててやりたかった。それでも、目の前の巨大な脅威に対する絶望が大きく、手が動かなかった。

そんな自分が情けない。リオンは強張る右手を左手で掴み、無理やりに剣を握らせようとするが……


「何やってるニャ! さっさと逃げるんだニャ!」


背後からチェシャ子の声がして、リオンはマントを強く引っ張られた。


「うわっ!?」


その勢いで仰向けに倒れてしまい、彼の視界と意識がブラックアウトする。

竜たちには、今まで地面を這いずっていた人間どもが急に掻き消えたように見えていた。


「ほう……転移の魔法とは人間にしてはやりおる。だが、この『山穿つ地震(ないふる)の大蛇(おろち)』から逃げられると思うな……ワイバーンどもよ、行け!」


ウォームの命令に、ワイバーンたちは一斉に舞い上がり、空を切って四方へと飛び去った。



3.

「……はっ!? ここはどこだ……?」


リオンが目を覚ますと、そこは薄暗い洞窟の中だった。

洞窟とはいっても、天井は遥か頭上、底も見えない程に深い。うちの屋敷など足元にも及ばないだだっ広い空間だった。

リオンが寝ていたのは、その広い空間の中で細い幾つもの柱に支えられている、石造りの橋の上だった。

見ると、上下左右、他にも幾つも同じ橋が空洞の中を縦横無尽に走っている。どれも外の遺跡と同じく、見事な彫刻がびっしりと施されている。


「リオン、起きたのね。無事で良かったわ」

「!? ドロシー!? 良かった、生きてたんだね!」

「ちっ、いちゃついてる場合かよ」


ドロシーとスケアクロウの無事な姿を見て、リオンは思わず涙ぐむ。

ブリガンドもドロシーの傍で大剣を手に辺りに注意を払っている。


ククも無事だ。彼女はぐったりとしているチェシャ子を荷物でも運ぶかのように、ぞんざいに肩に担いでいる。


「ニャ~……疲れたニャ~……」


ドロシーの話によると、チェシャ子が転移の魔法で全員を逃がしてくれたらしい。

絶体絶命の状況は脱したものの、全員を転移させた魔力の消費は激しかったらしく、彼女は疲れ果ててしまったようだ。

転移先のここはと言うと、おそらくはドワーフ王国の遺跡の内部。しかしこの広さは、もしかしたらはぐれ山そのものが、一つの巨大な城塞なのかもしれない。

周囲は不気味なほどに静かだ。リオンたち以外に、生命の気配はない。

大昔にここに住み、栄華を誇っていたであろうドワーフたちの生活の痕跡は、朽ち果ててしまったようでほとんど見当たらない。

ところどころ、巨人が巨大なスコップで抉ったかのような跡だったり、溶け落ちて硝子化している箇所がある。これはドラゴンの爪と火炎の跡か。

山に生息しているはずの魔物との遭遇も一切無い。全て奴に捕食されてしまったのだろうか。まだ姿も見えていないというのに、奴の、あの村を破壊した翠玉色の竜の存在をひしひしと感じる。


しばらく行くと、橋桁が円形に広がっている場所へと出た。

その奥には錆びついた大きな鉄の扉が破られた跡がある。溶けて大穴が開き、ぐにゃりとひしゃげている扉の手前には、何やら細かい金属片のようなものが散乱している。


スケアクロウはそれを目にした瞬間、密に歓喜した。ここだ、と――


ズズン!!


突然、橋桁が大きく揺れる。


「な、何だ、この揺れ!?」

「ちょ、リオン!? どこ触ってんの!」


リオンは立っていられず、思わずドロシーに抱き付いてしまう。二人の惚気めいたやり取りを余所に、ブリガンドとククは足元を警戒している。


揺れが一層大きくなると共に、橋桁の下から巨大な鎌首がぬぅっと生えて来た。

あのウォームが、橋を支える柱に巻き付いている。


「ニャー!? 竜がまたわんさか来たニャ~!?」


チェシャ子が指差す先から、皮膜の乾いた羽音が迫って来る。

天井の見えぬ頭上から、三頭のワイバーンが舞い降りて来た。


「この山を漂う地の精霊は我が下僕。全てが我が監視下にあると知れ。」


再びリオンたちの前に立ち塞がる竜の群れ。

チェシャ子の転移魔法はもう期待できない。この体格差では逃げた所で追いつかれる。もう戦うより他に、生き延びる術はないのか。


リオンとブリガンドは剣を構え竜に向かっていく。

ククはチェシャ子を担いだまま、片手で背負った刃を抜き、ウォームの頭部目がけて跳躍する。

ドロシーは魔法の詠唱を始める。先制してリオンたちが攻撃を仕掛ける隙を作るつもりだった。しかし、スケアクロウが彼女の腕を取り、それは中断されてしまう。


「クロウ? 邪魔しないで、リオンたちに加勢しないと……」

「いいから来い! お前だけは助けてやる。」


スケアクロウはドロシーを無理やり伏せさせ、ズボンのホルスターから赤い炸裂筒を取り出す。


「へへっ、とっておきをお見舞いしてやるぜ」

「クロウ、何を……やめてっ……!」


ドガァアアアーーーーン!!!!


スケアクロウが投げた赤い炸裂筒が大爆発を起こし、凄まじい爆風が巻き起こる。

橋桁は大きく揺れ、爆心地を中心に橋桁に亀裂が走る。

橋は竜の群れの重さに耐えきれなくなり、ガラガラと音を立てて崩れ出した。


「うわぁっ……!?」

「ニャ~!? 落っこちるニャ~!?」


リオンたちと竜の群れは、崩れ行く瓦礫に吸い込まれるように、底の見えない奈落へ落ちて行った。

半壊した円形の足場の上、二人だけ残ったスケアクロウとドロシー。ドロシーは茫然としてその場にへたり込む。


「な、何てことを……」

「ふん、竜どもはお坊ちゃんとあのお強いメイドに任せておこうぜ。生きていられたらな。」


不敵に笑うスケアクロウだったが、一頭のワイバーンが崩れかけた橋の支柱にしがみ付いているのに気付く。

そのワイバーンは橋の上の二人を見止めると、焦げ付き傷んだ翼をを羽ばたかせ、一気に彼らの頭上へと飛び上がった。


「グガァアアアァアアアアアオ!!」


無機質な爬虫類の鎌首からは表情を伺い知れないが、ワイバーンは明らかに怒りに燃えている。

ワイバーンがズシリ、と地響きを立てて着地すると、ただでさえ崩れかけの足場の亀裂はさらに広がり、心許なくなっていく。


「くそっ、しぶてぇ蜥蜴野郎め……おい、ドロシー。何やってる、逃げるぞ!」

「クロウ、あなたって人は! 自分が助かるために、仲間を犠牲にして……!」


ドロシーはスケアクロウの横っ面を張る。

スケアクロウはそれを意にも介さず、ドロシーの腕を無理やり掴む。


「だから、お前だけは助けてやったろうが! 今は言い争ってる場合じゃ……!」


二人が揉み合っているうちにも、ワイバーンの牙が咆哮と共に迫って来る。


「グガァアアアアアア!!」


喰われる、と二人が目を瞑ったその時。


「ギャァアアアアァアアァアアオオオオン!?」


その牙は届くことなく、ワイバーンは何故かもがき苦しみ始めた。

奴の頭部に人影が獲り着いているのが見える。

苦しみに喘ぎ、咆哮と共に牙がかち合い、発生した火花をその大柄な体が反射させて煌めく。


「ブリガン!?」


先程、リオンたちや竜と共に落ちて行ったと思われたブリガンドが、ワイバーンの頭に大剣を突き刺し取りついていた。

もがき苦しむワイバーンは、長い首を鞭のようにしならせ振り回す。ブリガンドは大剣の柄を両手で握り、身体が風圧に煽られながらも耐えている。

しかし、彼の金属の身体は炸裂筒の爆発で損壊しており、全身がひびだらけだ。見るからに長くは持ちこたえられそうにない。


ドロシーはタリスマンを手に取り、ブリガンに戻るよう命令する。が、ブリガンドは反応せず、なおも大剣を握り、さらに深くへと押し込んでいく。

そんなはずはない。仮初の命を与えられたゴーレムに過ぎないブリガンドが、術者であるドロシーの命令を無視するなど。

やがて、ワイバーンの動きが一瞬だけピタリと止まり、長い首が根元から崩れ落ちる。頭部が足場に叩きつけられ、投げ出されたブリガンは体の大部分が砕け散っていた。


「ブリガン……どうして……?」


ドロシーはブリガンの頬――半壊した面頬を撫でる。

命の源であるコアが壊れかけている。甲冑に憑依させていた仮初の命は、もはや消える寸前だ。


「……主……ヨ……」

「ブリガン!? あなた、喋っ……?」


信じられないことが起きた。

命令を聞くだけの意思を持たないゴーレムが、言葉を話したのだ。消え入りそうなか細い声で、ブリガンドは言葉を紡ぐ。


「我ヲ……創造シテクレタ事ヲ……感謝スル……短イ間ダッタガ……貴女方トノ旅ハ……楽シ……カッ……」


そこまで言うと、ブリガンの兜はバラバラに砕け堕ち、二度と動くことはなかった。

意思を持たぬゴーレムの彼は、仮初の命が終わるその時に、本物の心が芽生えたのだった。


ドロシーはブリガンの欠片を胸に抱き、泣き崩れた。

初めて自分の力だけで造ったゴーレム。何度も危険から身体を張って守ってくれた。

ほんの数カ月の間だったが、ブリガンとの旅の思い出がドロシーの胸に去来する。


「……ふん、あのブリキ野郎、最期に役立ってくれたもんだ。さあ、立てよ、ドロシー。これからは俺がお前を守ってやるぜ。」


スケアクロウはドロシーの背に覆い被さり、そのまま羽交い絞めにする。


「きゃっ!? クロウ、何を……!?」


耳に鋭いに痛みが走り、ドロシーは小さく悲鳴を上げる。耳を噛まれたらしい。

そして、胸元に回った手が柔らかで控えめな膨らみに、乱暴に食い込む。


「ち、ちょっ……や、やめて、クロウ……!?」


必死に抵抗するドロシーだが、彼女の力では大の男の拘束を振り払えるはずもない。

羞恥に染まる彼女の頬が鷲掴みにされ、無理やり横を向かされる。彼女の唇を奪おうと、スケアクロウの舌が迫る。


「嫌……離してっ!」


すんでの所で、ドロシーはかかとでスケアクロウの股座を蹴り上げる。


「ぐがっ!?」


もんどり打って、ドロシーから離れるスケアクロウ。


「どうして……? クロウ、どうしてこんなこと……」


ドロシーは乱れた胸元を抑えながら、スケアクロウに杖の先を向ける。その目には大粒の涙が溢れている。

スケアクロウは下卑た笑みを浮かべながら、軽々とドロシーの杖を奪う。


「ふん、俺に魔法を叩き込もうってか? 女狐が……!」


スケアクロウはドロシーの杖を投げ捨てると、彼女の亜麻色の三つ編みの根元を乱暴にひっつかむ。


「来い……俺の目的を果たす瞬間に、立ち会わせてやるぜ」

「痛っ……! やめて、離して、クロウ……!」


スケアクロウはドロシーを引っ張り、扉の残骸の先へと向かう。

ドロシーは痛みと恐怖の余り抵抗できず、スケアクロウに従うしかなかった。


破られた鉄の扉は、見上げる程に大きかった。

例に漏れず、全体に見事な彫刻が施されている。天国への門があるとしたら、このような感じなのだろうか。

厚みも普通の扉の何倍もあり、人間の胴体程もある太い閂が付いているが、それもひしゃげ千切れていた。

扉にぽっかりと空いた穴、千切れた閂の切り口は、溶けて落ちたようにぐにゃりと醜く変形している。

扉の周辺に散らばっている金属片のような物は、丸く薄く延ばされた金だった。

表面には様々な模様が掘られている。桂冠を被った人物の横顔、雄々しい戦士の姿、イチジクの葉……古の時代のコインだ。それも、世界各地の歴史書に記述されている逸品の数々だ。


スケアクロウは、ここに間違いない、と確信する。

ドロシーの髪を引きつつ奥へ進むと、広いホールへと出た。そこには、彼の思った通り、金銀財宝が山と積まれていた。


「見ろよ、ドロシー。伝説のドワーフ王がため込んだって言う、お宝の山だぜ。」

「あんたの目的って、これなの?」


ようやく解放されるドロシー。彼女はじんじんと痛む後頭部を抑えながら、呆れ果てたように言った。

スケアクロウは首を横に振る。


「へっ、俺の目的の物に比べちゃ、どんな宝だってゴミ同然さ……」


金塊、真珠のネックレス、大振りのダイヤがはめ込まれた指輪、見事な装飾が施された鎧や剣、宝石が散りばめられた王冠等々、そのどれにも目もくれず、スケアクロウはただ一点を目指して歩く。

彼の目的は、無造作に床に転がる、壊れて首だけになった石像。その額に嵌められているサークレットに手をかける。

黒く艶のある材質は黒曜石だろうか。牙のような突起が規則性なく歪に生えており、額にあたる部分には人間の閉じられた瞼のような意匠が一つ、生々しく施されている。


「これだ……こいつこそ、俺の求めていた秘法。『ギャブレットの冠』だ!」


スケアクロウはサークレットを掲げ、喜びに打ち震えた。


「そ、それは!?……実在していたなんて……!」


ドロシーはそれを知っていた。お婆ちゃんの書庫にあった魔導書に、それに関する記述を読んだことがある。


『ギャブレットの冠』――

かつて、魔道を極めんとする魔法使いがいた。

その魔法使いの主な研究対象は、『不死術<ネクロマンシー>』。

彼は研究のためならば、どんなに非人道的な実験も辞さなかった。ある時は人間を生きたまま解体し、その構造を調べた。またある時は、実り豊かな森をまるごと枯死させた。そしてまたある時は、国の水源となっていた湖の水を毒水に変えた。

研究のためなら良心の呵責など微塵もなかった。そのおかげで、魔法使いは遂に手に入れた。『永遠の命』を。

だが喜びも束の間、彼のアジトは軍隊に囲まれていた。数々の非道なる行いが、国王の怒りを買ってしまったのだ。

魔法使いは研究により編み出した、恐るべき魔法を駆使して一人軍隊と戦った。その魔法とは、生物の命を弄ぶ忌むべきものだった。大半の兵士たちは生きたまま肉体が腐り落ち、ゾンビとなって魔法使いの意のままに操られた。

激しい戦いの末、遂に魔法使いは捕らえられ、その場で処刑されてしまう。

永遠の命を持つ彼は死なないはずだった。しかし、肉体は死してしまい、意識だけが現世に留まった。自らにかけた不死の術は、完璧ではなかったのだ。

魔法使いの意識は、彼が常に身に着けていたサークレットに憑依した。肉体が朽ち果てた後も、サークレットに残った意識は現在に至るまで生き続けていた。


「それがこの冠だ。こいつを被れば、古の魔法使いの知識と魔力が全て手に入る……くくっ、お前には感謝しているぜ、ドロシー。あの日、俺はお前を無理やりモノにするために、お前の店に忍びこんだんだ。そこで、偶然こいつについて書いてある本を見つけてよ……教えてやろうか? 俺の一族はな、ずっとこいつを手に入れるために旅してたんだ。ようやく、死んだ親父と俺の野望が成就するんだ!」

「クロウ……待って、やめて!」


ドロシーの制止を聞かず、スケアクロウは『ギャブレットの冠』に身を委ねた。

こめかみに電流が流れるような痺れを感じ、小さくうめき声を上げる。

サークレットから囁くようなかすれ声が聴こえて来る。いや、鼓膜を通してではない。その声は脳内に直接響いている。


――我を戴きし者に、我が英知の全てを与えよう――


頭の中に何かが侵入してくるのを感じる。

脳の皺に指を差しこまれ、こね回されているような感覚。意識を土足で踏み荒らされ、自我を犯される。

言い知れぬ不快感。スケアクロウは自らの身体を裂き、臓器を棄ててしまいたい衝動に駆られたが、同時に実感もしていた。サークレットから今まで知る由もなかった魔道の知識、魔力が身体の隅々にまで流れ込み刻み込まれていくことを。


「はは……ははははははっ! 俺は手に入れた……手に入れたぞ! 見ろ、俺は最強の魔力を手に入れたんだ!」


ギャブレットの冠が怪しく輝き出す。

額部分の閉じられた瞑目する瞼のような意匠がカッと見開き、眼球のような宝玉がドロシーを凝視した。

サークレットから放たれる光がドロシーを照らす。


「えっ!? か、影が……あぅっ!?」


すると、彼女の影がスライムのように蠢き、実体化し、その華奢な身体に纏わり付き縛り上げた。

スケアクロウは勝ち誇り見下すような笑みを浮かべながら、動けないドロシーの頬を撫でる。

ドロシーは唯一動く首を力いっぱい振り、その手を拒絶する。だが逃げられるはずもなく、顎を強く掴まれ、無理やりに彼の方を向かされる。


「どうだ? 俺は今や最強の不死術士<ネクロマンサー>だ……お前を最強の魔導士の妻してやるぜ」

「!……誰があんたなんかに……!」


ドロシーはスケアクロウの顔に唾を吐きかけ、精一杯抗ってみせる。彼には絶対に屈しない、と。


「そう邪険にするなって。安心しな、竜なんぞ俺が退治してやるからよ。何だったら、リオンの奴も蘇らせてやったっていいんだぜ? アンデッドの奴隷としてな! はははははっ!」


ドロシーは悲しかった。スケアクロウにいいようにされていることが、ではない。

幼い頃を共に過ごした友人――少なくとも、自分はそう思っていたのに。スケアクロウの憎しみはそんなにも深いのか。あの頃の楽しかった思い出すらも霞んでしまう程に。いや、その思い出も自分の思い込みだったのだろうか。


「クロウ……」


もはやスケアクロウにはドロシーの声は届かない。

彼は完全に『ギャブレットの冠』の魔力に溺れてしまった。


「さぁて、竜の野郎はどこにいるのかね? ぶっ倒して、この城を俺様のモノにしてやる……」


スケアクロウは言いかけて、背筋が凍りつくのを感じる。


――ほう、我を倒すとぬかしたか……思い上がりも甚だしいぞ、盗人めが――


突然、ホールに響いた声に、金縛りにあったように体が動かなくなってしまう。かつて感じたとてつもない恐怖を思い出し、足がすくんでしまったのだ。

その声――あの時、空から舞い降り村を焼き尽くした、あの悪魔の声。


金銀財宝の山がぼこり、と持ち上がったかと思うと、ざらざらと崩れていく。

無数の金貨や宝飾品の雪崩の中から現れたのは、翠玉色の鱗に覆われた、巨大な鎌首。

故郷を滅ぼした竜どもの長、『翡翠鱗の竜王』だ。


「へへっ、出やがったなドラゴンめ……このギャブレットの冠の魔力、てめぇに叩きこんでやるぜ!」

「待って! 一人じゃ無理よクロウ! 私の拘束を解いて!」


ドロシーの制止を無視して、スケアクロウは古代語魔法の詠唱を始める。

ドロシーも聞いたことのない、未知の古代語呪文<エンシェント・スペル>だ。

しかし、隙があり過ぎる。本来、敵と直接対峙した状態での呪文の詠唱というのは、詠唱者を敵の攻撃から守る戦士の存在が不可欠だ。魔法使いとしての経験値がないスケアクロウは、そこに気付いていなかった。これではいい的だ。

にもかかわらず、翠玉色の竜は何もせず、その巨体に張り付いている金貨をのんびりと振り払うばかりだ。

ドロシーは理解した。この竜には、スケアクロウの魔法に耐える自信があるのだ。


「くらいやがれ!」


サークレットが怪しく光りを放ち、額の宝玉がぎょろり、と生きているかのように竜を凝視する。

スケアクロウの影が膨れ上がり、漆黒の柱が間欠泉の如く吹き出し、槍となって竜を襲う。

しかしそれは竜に刺さることなく、翠玉色の鱗の前に儚く霧散してしまった。


「な、何だと……なら、こいつならどうだ!」


再び未知の呪文が詠唱される。

スケアクロウの影が広がり、床を埋め尽くす。一面の黒い沼となった床が沸騰したようにぼこぼこと泡立ち、人間の背丈の半分くらいの骸骨が一斉にせり出してくる。そいつらは皆、錆びついた甲冑と剣・斧等で武装している。


「伝説のドワーフ王国の亡霊どもだ! こいつらに腸食い荒らされちまいな!」


ドワーフの骸たちが次々と竜に取りつき、武器を突き立てる。

キン、カキンと金属同士がぶつかる甲高い音が何度も響く。が、竜がダメージを受けている様子はない。

それどころか、竜が一振り、二振り前肢を動かしただけで、簡単に振り払われてしまった。ある者は踏まれて潰され、ある者は尻尾に弾き飛ばされ、ドワーフの骸たちは敢え無く粉々にされてしまった。


「無駄だ。我が滅ぼした王国の兵など使役した所で、我を倒せるはずもなし。諦めよ、我が翠玉の鱗はあらゆる攻撃を跳ね返すのだ。」


竜は深く呼吸し、喉元を大きく膨らませる。蛇腹の喉が赤熱し、小さく放電している。

『炎の吐息<ブレス>』だ――


「バカな……」


絶望し立ち尽くすスケアクロウは、動こうともしない。


「クロウ! 何してるの、避けて!」


ドロシーの叫びも虚しく、燃え盛る竜の熱息<ブレス>がスケアクロウを襲った。

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