あとらんだむ
ナツキの体重は50キロ程度で、同年代の男子の中では比較的軽い方ではあるが、それでも運ぶことすら苦労する。俺が足首側を、ハルトが手首を掴み、振り子のように反動をつけて思いっきり投げ入れる。
「せーのっ!」
「ごめんナツキ!」
死体は柱の周辺のタイルにドスンと音を立てて落ちた。すると、ピンポーンと音を立てて落下地点のタイルは点灯し、両開きの扉のように開いた。死体は穴に吸い込まれ、数秒後に微かに地面に衝突したと思われる音が聞こえた。
「…落とし穴だ」
走り幅跳びの世界記録は確か8メートルくらいだったか。運動神経に自信のある方ではないが今死体を投げ込んだ地点までくらいなら届くはずだ。着地の衝撃で床が抜けたりもしないだろう。それよりも気を付けるべきなのは勢い余ってその次のタイルを踏んでしまうことだ。俺は十分な助走をつけてドアの直前で踏み切り、跳躍し、着地した。
「……」
とりあえず最初の一歩は踏み出せたが、安心している暇はない。ここからは神頼みだ。必死に自分を奮い立たせ、一つ一つマス目を進んでいく。残りのトラップは6つだから確率は6/24。4回に1回はアタリを引く計算だ。5列のうち1列を飛び越えたので、最短あと4回で向こう側の扉に辿り着ける。まあ、なるようになるだろ。
―――
拍子抜けするほどに順調に進んでいき、もう扉は目前だった。ここで一つの可能性に思い当たる。まさかこの扉の前のタイルがトラップのスイッチの一つなんじゃ…。あり得そうな話だった。ここまで手の込んだ施設を用意して他人の不幸を喜んでいるような奴の、いかにも考えそうな事だ。
しかし、あいつの説明が正しければ一度作動したトラップはそれっきりだ。なら俺に何が起きたところで、後ろのハルトたちはとりあえず扉に辿り着ける。俺は呼吸を整えて、最後の一歩を踏み出した。
「…セーフ…なのか?」
「やった!タイマー止まったよ!」
「おめでとう!ゲームクリアです。ラッキーだね!皆様どうぞ次のお部屋にお進みください!」
後ろの皆が安堵した表情で一斉に駆け寄ってくる。俺は皆の方を振り返り、
「え?」
チアキが矢のようなものに撃ち抜かれたのを目撃した。
「あっいけね!トラップの解除するの忘れてた」
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