やってしまう
柱のタイマーは刻一刻とカウントを進めているが、皆その場に立ち尽くしてしまっている。
「ねえ…さっきあいつ、人の重さに反応するって言ってたよね」
恐る恐る、フユリが口を開いた。
「…なりふり構ってられなそうだから言うけど、ナツキの死体…アレを部屋に放り込んで身代わりにしよう」
「そんな…無理だよそんなの」
正直耳を疑った。が、すぐに思いなおす。確かに友人の死体を罠の囮として用いるなど非人道的なアイデアだ。そのことは重々フユリも承知だろう。思い付いたとしても普通口に出すのは躊躇う。しかし…今この状況で常識的な倫理観を尊重したところで、それが俺たちの無事を保障してくれるのか?
「あいつ、わざとらしく人の重さに反応するみたいな事言ってたから。もしかしたらそういう事を私たちにやらせたいんじゃって思ったの」
「やろう。俺とハルトでナツキの死体を持って、振り子の要領で投げ入れよう。それで安全な場所を探すんだ」
俺たちを監視しているであろう声の主に問いかける。
「おい!この部屋は全員で通過しなきゃいけないのか?」
「はいはい。んーとどうしよっかな。そうだねーそれじゃあ一人でもゴールに辿り着けたらクリアって事にしてあげる。その時点でタイマーを止めて罠は全部解除するよ」
「よし。それなら俺が行く」
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