第15話 ミク、初めての出走④

デトロイトも終盤。

ブレーキをほとんど踏むことは無く、エンジンブレーキのみでコーナーをクリアしていきます。


うーん、割とブレーキ踏まなくても大丈夫なコーナーって多いんでしょうか。速度は余り出ていないのですが、緩いコーナーもヘアピン気味のコーナーも同じ位の速度で突っ込んでいくので、あ、少しキツイかな?と思っても割とエンジンブレーキだけで行けちゃうんですよね‥。まぁ月都さんのペースについて行っているだけですが。


そんな中、特に何事もなくシビックのハザードランプがゴールを告げます。と、特に何も起こりませんでした‥。と、車を降りるとメイコさんがいません。あ、少し遅れてゴール地点に到着しました。


「ちょっと!マーチのブレーキランプ壊れてるんじゃないの?ブレーキほとんどしてなかったわよ!真似してたらとっ散らかるわ置いていかれるわで‥。」


月都さんがニヤニヤ。予想通りみたいな顔をしています。まさかメイコさんが離されていたなんて。前を走るシビックばかり見ていたので気づきませんでした。


「メイコもミクも少し考えてみたら?どうしてこうなったか。結構大事な事が幾つかあると思うよ。」


んー、さっぱり皆目見当もつきません。


「ヒントとか‥?」


つい甘えてしまいます。なぜなら今まで月都さんが全て教えてくれて腑に落ちていたからです。はやく知りたいです。


「んー、ノーヒント!走りは考えて試して、自分で答えを出す事で身になるよ。教えられて言葉で理解するのとは全然違う事がよく分かると思う。」


メイコさんも私と同じ気持ちみたいで、えー、とぼやいています。


「なので、答えが出たら教えてね。」


どこかの先生の様に宿題を出されてしまいました。メイコさんと顔を合わせ、うーん、と悩んでしまいました。


「よーし、今日は割と遅くなったから先週と同じく最短で帰ろうか。最短は長いから右折左折のポイントを覚えてね、ミク。」



さてさて、もうクタクタです。家に帰って来たのですが、先週よりも早く帰宅できました。と言ってももう5時ですが‥。月都さんは家に着くなりお布団に直行されました。私はというと、デトロイトのノーブレーキで走る意味が未だにわかりません。月都さんが良く考えてみて、と行っていたのでGoogle先生に聞くのも少し控えてみようと思います。とりあえず‥寝ましょう‥。疲れたです‥。でも楽しかったなぁ‥。



「あ、おはようございます。月都さん。」


月都さんが眠たげに起きて来ました。随分とお早いですね。まだ10時を過ぎたところです。私は1時間前には起きて家事をしていました。えへん。


「おはよー、ミク。いつもありがとー。」


クンクンと朝ごはんの匂いを確認しながら、もそりもそりと動きお風呂場へ向かっています。


「あ、今日の午後、少しだけ付き合ってくれるかな?大丈夫そう?」


「大丈夫です。アルバイトは土日休みにしてもらっているので。どちらへ行くのですか?」


「うーん、大きい駐車場みたいなとこ‥かな?」


私の頭には?マークが現れました。ニヤニヤしている月都さん。最近わかりました。変に楽しそうにして隠し事をしている時は何か企んでいる時です。一体どこへ連れていかれるのでしょうか。



こ、ここは‥!


シビックとマーチでツーリングみたいな感じで来たここは、四街道‥あたりでしょうか。広い駐車場というより‥なんでしょう。地面がアスファルトで広場に三角コーンが置いてあり、車が1台、コーンの合間を縫って走っています。その車が走り終わると、また次の車が同じルートを走っています。サーキットではないですし‥。


「月都さん、ここは一体なんなんですか?」


「ジムカーナ場だよ。浅間代スポーツランド。」


ジムカーナ。聞いたこと無いです。車の運転を練習するところでしょうか。しかし、すごいスキール音とタイヤの焦げた匂い、テンションが上がります!


「こ、これって今日走れたりするんですか!?」


「大丈夫なんだけど、今日は日曜日だから混んでるとは思っていたけど、ここまで混んでるとは‥。初心者のための説明も受けなきゃいけないからそこまで時間ないんだよね。」


ガーン。ここまで色々な車が走っていると‥うー、はしりたぃぃー。ワクワクしている私を見て月都さんが提案します。


「よし、今週平日に仕事で休み貰うからまたここに来よっか。多分休めると思うんだよね。多分。恐らく‥、大丈夫なはず?」


最後は語尾のイントネーションが上がって?マークがついていましたが大丈夫でしょうか。


「無理なさらなくても大丈夫ですよ。でも、なんでジムカーナ場に連れて来てくれたのですか?」


きっとあのニヤけた笑みは意味があるはずです!


「昨日のシルヘアでとっ散らかったじゃん?初めてスピンしそうになったって言ってたから、一回スピンしてみれば色々わかるかなって。ここならスピンし放題!笑」


いや、笑、じゃないですよ。あれ本当に怖かったんですからね。

でも、確かにどう運転したらスピンしやすいか‥試してみたいですね。


「確かに走ってる皆さん、スピンしてる方もいますね。広場なだけあって安全で、色々試せそうです。」


「そうなんだよね。少し話は変わるんだけど、ウチのチームは峠主体、公道を走る事をメインにしてるから公道でのワンミスは命取りになりかねない。だからサーキットやジムカーナみたいなクローズドのコースで色々試して公道でのリスクを下げるんだ。」


なるほど。普通はサーキットがメインでお金が無いから峠行く、みたいなのはインターネットでも見た事があるのですが、ウチのチームはそもそも峠がメインだから逆って事ですね。


「ジムカーナとかサーキットって、チームで行くことってよくあるんですか?」


「年に1、2回くらいかなぁ。企画していくぞー!ってノリで走行会とかに参加する感じだよ。誰かが言い出さないと行かないね。」


そんな会話をしていると、小さい子供、男の子でしょうか。凄い勢いで駆け寄ってきました。


「おーい、月都にいちゃん!なんでここに来てるの?!にいちゃんのEK、なんか変えたの?試運転?」


なにやら月都さんも驚いていらっしゃいます。

お知り合いでしょうか‥?

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