第12話 ミク、初めての出走①
今日は週末の土曜日、現在21:50分。初めてチームに参加しての出走です。集合時間は22時と月都さんが仰っていたのですが、少し早くスーパーせんどうに着いてしまいました。緊張して少し震えています。
月都さんは用事があるらしく、現地集合と言われましたが‥まだ私1人しか来ていません。1人だと不安になります。
既に灯が消えたスーパーの横の自販機前で待ちます。飲み物でも買おうかなと思っていると、遠くからうるさいマフラー音が近づいてきます。チームの方でしょうか。
ブォン、カキッカキッ‥
駐車場に入ってきたのはメイコさんの真っ赤なシルビアです。
マーチさんの横に停めて、メイコさんが車から降りてきました。
「やほー、ミクちゃん。ふわぁー。あれ?月都は?」
メイコさんが少し眠たげに言います。寝起きなのでしょうか。
「月都さんは用事があるらしく、おそらく少し遅れるかもです。メイコさん、眠そうですね。」
伸びをしながらメイコさんはマーチさんの方を向きます。
「まったく、ミクちゃんほったらかしにして自分ばっかり遊んでるんじゃないわよ。‥それにしてもマーチは車高も下がってやる気満々みたいだね。」
そう、マーチさんはパワーアップしたのです!いや、馬力は全く変わっていないと思うのですが足回りが一新しました。もともと古い車でしたので、月都さんが少しずつパーツを買って交換する予定だったみたいです。街乗りですと、そこまで違いは分かりませんでしたが‥。
遠くから甲高いエンジン音が聞こえます。この音は月都さんのシビックですね。ぶいてっく?のエンジンはわかりやすいです。
あ、やはり月都さんでした。ふふ、ちょっと嬉しい。駐車して車から月都さんが降りてきました。
「ごめんー、少し遅刻かな?」
頭を少し下げながら謝っていますが、メイコさんは特に怒っているわけでもないです。もちろん私も怒っていたりしません。ですが、メイコさんが少し気難しい表情です。
「今日の出走は私たちだけみたいよー。なんだか皆んな忙しそう。ご主人の都合次第なとこあるからね、私たちアンドロイドは。」
そうそう、聞きたいことがあったのです。
「うちのチームってアンドロイドの方が多いのですか?カイトさんもメイコさんもアンドロイド、VOCALOIDですし。」
実はアンドロイドサークルみたいにコンセプトがあるのでしょうか。世間的にはアンドロイドだけのサークルなど、人間と同様に活動していたりします。思考型アンドロイドに限られますが。あ、でも月都さんは人間ですし、違うかな?
「うちのチームはなんと、月都以外はみんなVOCALOIDなのよ!趣味思考型アンドロイドのカテゴリは沢山あるのにVOCALOIDばかりなの。珍しいでしょー。」
誇らし気にメイコさんが胸を張り、続けて眉間に皺を寄せながら話します。
「でも昔は普通に人間とアンドロイド半々くらいだったのよ、うちのチーム。でもあいつのせいで‥」
話を続けていたメイコさんを月都さんが真面目な表情で遮ります。
「メイコ、そこまで。‥まぁうちのチームも結構長くてさ。俺が6代目のリーダーだし、まぁ色々あるよね、ははっ。」
苦笑いでそう言う月都さんは、何か隠しているように見えます。脈拍も少し上がってます。
「さてと、今日は3人での出走になるけどミクが初出走になる。人数も少ない事だし、今日は道を覚える事を重点的にペースを落として行こうか。」
すごい助かります、月都さん。先週、ほとんど往復することがないコースばかりなので、正直、海のコンビニまで辿り着けそうにありません。遅くて置いていかれたら迷子になること間違い無しです。
「あ、ミクに目的地までのルートのデータは今日走り終わったら送るね。今日は集中して道を覚えよう。ナビを見ながら走るのは危険だから、景色で覚えて行こう。」
なるほど。それでもこの前の最短コースのペースでしたら絶対についていけないですぅ。
「お、お手柔らかにお願いします。」
ペコリと私がお辞儀をするとメイコさんが笑いながら私の頭をなでなでします。
「大丈夫よ♪今日はドライブ、ペースはかなりゆっくりだから安心して。隊列は‥どうしようか、月都。」
隊列。一番後ろでいいです、と言おうとしましたら月都さんはもう決めていたようでした。
「隊列はメイコ、ミク、俺の順番で行こうか。あと、トランシーバーの使い方だね。」
それからはトランシーバーの使い方と、スタートの合図のウィンカー、クーリングする際のハザードのタイミングなどを教えてもらいます。先週、月都さんのナビシートでなんとなく理解できたので、その辺は大丈夫だと思います。
『シーバーテスト。メイコ、ミク、聞こえる?』
トランシーバーから月都さんの声が聞こえます。
『感度良好。良く聞こえるわよ。』
メイコさんの後に私も続けます。
『ミクです。クリアに聞こえます。』
トランシーバーのテストも完了し、これから出走です。ドキドキ。口から心臓が飛び出しそうです。いや、心臓は無いのですけど。
点呼も取り終え、シルビアを先頭に駐車場から出て行きます。
『さーて、んじゃ深夜のドライブと行きますか!』
メイコさんの声を皮切りに、街乗りより高回転域を使用したドライブの始まりです。
じ、事故だけはしない様に‥!とハンドルを強く握る私でした。
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