第2話 ミク、後をつける

あれから約一ヶ月が経とうとしています。月都さんとの生活が始まってから、これまででわかったことは沢山ありました。

平日は夜遅くに帰ってくる事。それでも晩ご飯は必ず食べてくれる事。朝は7時に起きて、朝ごはんはお米派な事。


「うーん、やっぱり気になるなぁ。」


そう、今一番気になることは、土曜日の夜から日曜日の朝方まで必ず外出することです。月都さん、恋人でもいるのでしょうか。イライラ。

ん?怒ってないですよ。なんでもないですよ。


今日は土曜日。この後、晩ご飯を食べたらきっとまた出かけるに違いないです。でもなんだか詮索するのも申し訳ない気持ちもあるのです。私に伝えなければならないことがある時は、月都さんから言ってくれますし。言わないということはあまり知られたくない事なのかもしれません。



「ごちそうさま。美味しかったよ、ミク。」


サバの味噌煮を食べ終わった月都さんはやはり、外出するようです。


「あ、月都さん。」


「ん?」


モサモサの髪の毛をセットしながら月都さんが答えました。


「どうしたの?ミク。」


「あ、いえ、なんでもないです。」


やっぱり、なんで外出するのかを聞くのはやめました。


「それじゃ、出かけてくるね。」


「いってらっしゃい!‥‥気をつけてくださいね!」


そう言うと、月都さんの表情が少し険しくなったような気がしました。


「わかった。行ってきます。」


いつもとは違う、真面目なお顔で出かけられました。

余計な事を言っちゃいましたでしょうか。


「あ、ハンカチ。」


月都さんにハンカチを渡すの忘れてました。いえ、もしかしたら自分でお持ちになってるかもしれませんが、一応渡しにいきましょう。念のためです。なぜ外出してるか気になって後をつけるとかじゃないですよ。ほんとですよ。


と、思いながらも若干の後ろめたさを感じながら玄関のドアを開け、月都さんを追いかけました。


あれれ?どこへ行ったのでしょう。

駅へ向かう道には見当たりません。‥こっちかな?

駅とは真逆の道を行きます。少し歩くと‥あ、いました。

駐車場に入っていくようです。月極の駐車場でしょうか。


ガチャ。


白く、型式は少し前の車でしょうか。車の後ろがワゴンっぽい感じ。確かハッチバックっていう形だと思います。その車に乗り込んでいる月都さんを見つけました。

ささっと、他の車の影に隠れてその車を見ていると


キュルキュル‥ブォン!ドドドド‥


かなり大きい音を立てて発進したその車はとても綺麗で、美しく、なぜか目を離せなくなりました。


カキッ、カキッ、カキッ、‥ブォーン‥


道路へ出る時に、曲がりながら白い車は妙な機械音をたてて走り去って行きました。


‥なぜでしょう。とてもドキドキしています。いえ、月都さんの後をつけて悪いなって気持ちとかではなく‥わかりません。なんでしょう、この気持ち‥。

家に歩いて戻っている途中、ずっとその車の事が頭から離れません。


綺麗だったなぁ、あの白い車。というか、月都さん車持っていたんですね。


家に戻り、パジャマに着替えながらそんな事を考えていました。音はかなりうるさかったし、改造車っぽかったですね。月都さんの趣味なのかな、車。でもなんでこんな夜に、何しに行ってるんだろう。ドライブかな。でも朝まで?

色々な事を考えながら寝床につくことにしました。


‥‥はぁ、寝られるかなぁ。

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