冒険者たちの衝撃 ※コレット視点①
ギャレック領に帰って来てから七日ほどが経った。ちょっと前まで王都で冒険者してたなんて嘘みたいに、ここでの生活は私に馴染んでる。
「やっぱ、故郷は違うなー! 肌に合うってこういうことを言うんだね」
「コレットにとっては余計にそうかもね」
「ちょっと、リタ。私がお転婆みたいじゃない」
ムッとリタに文句を言いつつ、朝の空気を吸い込みながら両腕を上げてうーんと伸びをする。こっちの方が空気も清々しいや。実際、王都は人は多く自然が少なくて、なんとなく息苦しかったからね。
こっちも人は多いけど、街の中に自然が残っていたりして居心地が好いんだよね。お洒落さはあんまりないけど。
私は生まれた時からこの街に居たから、流行の物で溢れた王都にずっと憧れていたんだよね。洗練された建物も、そこに住む人たちのお洒落な感じも、全てがカッコよく思えてさー。私もいつか行ってやるんだってずっと思ってた。
後悔してるわけじゃないよ? 王都も素敵なところだって思うし、行って良かったって思ってる。ただ、やっぱりしっくりくるのが故郷だな、って改めて思えたっていうか。
「だな。それに、こっちの依頼の方がやりがいがある」
「あー、それはね。仕方ないよ。
隣を歩くリタがどこか獰猛に微笑んでいる。大人しそうに見えて血気盛んだよね、リタって。私も人のことは言えないけどさー。
王都で冒険者をしていた時、私たちのパーティーはかなりランクが上の方だった。それでも中級冒険者を名乗っていたのは、このギャレック領においては下級でしかないから。
ギャレック領周辺は出てくる魔物も強く、場合によっては他国からのスパイともやり合うことになる。そのため、ギャレック領の冒険者ギルドでは独自のランク付けがされるんだ。
私たちのギャレック領でのランクは、全員が最低のC級。ちなみに、能力値としては一般的に言うところのA級に位置する実力だ。意外と強いんだよ、私たちって。
それに初めて気付いたのは、王都に行った時。冒険者ギルドで初めての依頼を受けようとした時、ギャレック領出身だと聞いた受付の人から教えてもらったんだ。
いやー、驚いたねー。つまりギャレック領で仕事をするには、最低でも一般的なA級まで上り詰めなきゃいけないってことなんだもん。ビックリもするよ!
で、あちこちでランクを名乗る時にややこしくなるってことで、ギャレック領でランク付けされた冒険者たちは頭に「S」を付けられるんだ。
つまり、私たちのランクはSC級になるってわけ。
そんな「S」ランクを求めて腕試しをしたい冒険者がギャレック領に集まったりもするわけなんだけど……今のところ、最高でSA級が数人いるって感じかな。
SS級もランクとしては存在するみたいだけど、その称号を持つ者は未だに誰もいない。
だからこそ、憧れで挑戦する脳筋は後を絶たないんだって。不思議だったんだよね。やたらこの街に強い人たちが集まるんだもん。その謎が、王都に行ってから解けただけでも行った価値はあるよ。
ま、私たちはゆるーく長ーく仕事を続けられればそれでいいから、今後も高望みはしないんだけど。
「ねー、リタ。髑髏師団の人たちなら、SS級になれる人がいそうじゃない?」
「あー、どうだろうね。だってSS級ってドラゴンを単独討伐出来る実力なんでしょ? それこそ、髑髏領主様だけじゃないか?」
ギャレック領を守る髑髏師団の隊長クラスの方々は、みんな化け物じみた実力者だ。隊員の実力は、私たちと同じで最低SC級の人たちから採用されるらしいんだけど。
たぶん、その化け物じみた強さの方々が直接指導するからこそ、実力もメキメキ上がっていくんだろうな。でも厳しすぎて途中でやめる人もいるんだっけ。だからこそ、髑髏師団は少数精鋭だって話。
それでも全部で十一小隊、プラス司令部で構成されているから、そこそこの人数だと私は思うんだけどねー。
モルトが言うには、一国の辺境を任される軍隊にしては少なすぎるんだって。よくわかんないや。
そんな強者揃いの髑髏師団でさえ、SS級に値する人物は髑髏領主様くらいしか耳にしない。つまり髑髏領主様がやべーってことで話はまとまっちゃう。本当に規格外すぎるよー。
ドラゴンを単独討伐なんて、凶暴な暴れ牛を蟻が一匹で倒すのと同じくらいあり得ないよー。
「じゃ、各隊長はSA級かな? それでも十分バケモノだけどー。でもさ、一人くらいは髑髏領主様に張り合える人がいないのかなって思っちゃう」
「いたとしたら、すでに有名になってるだろ」
「それもそっか」
でも実は隠し玉がいるとか、秘蔵っ子を育てているとか、裏ではあったりしないのかなぁ? 私好みの妄想でしかないけど。
だってワクワクしちゃうじゃん? 影で暗躍する裏ボス的な! ロマンあるぅ!
「ギャレック家の執事さんとか、実はものすごぉい実力者ってことはないかな?」
「ああ、マイルズさんか。確かにあの人もSB級くらいの実力はある気がする。ただ、あたしが見たところ魔力量も普通だし、SS級には遠く及ばないんじゃない?」
「えぇー。実力を隠してるとかない?」
「なんのために隠すんだよ……それほどの実力があったら、髑髏領主様の右腕としてもっと有名になってるでしょ」
ちぇーっ。まぁ確かにいつもニコニコとした紳士だし、馬鹿みたいに強い人って印象はないけどさ。もうちょっとくらい夢を見たかったなぁ。残念。
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