第46話奴隷商を説得する。
貴族と言う生き物は目立ちたがり屋なのですぐに結果を求める。だから博打のような真似はしないのか? と不思議がっているのだろと思う……
異世界や前世問わず、塩の専売や紅茶に重税を課したり、旅費実費で辺境で数年兵士をしろ! とか色々と無茶な改革や制度が多かった。
「あぁ、奇抜な事をやるほど追い込まれていない。10年単位での計画で十分に勝機はあると考えている。古代の大帝国の道路と同程度のものを整備する。コレを作る事が出来ればより高速で物資を運搬できる」
「なるほど……それだけでは奴隷商の私にはメリットがありませんな」
「だろうな。河や橋や道を作るときには人手がいる。それをスラムの住民と奴隷で賄う予定だ」
「なるほど、多く買うから安くしろという事ですか……」
「その通り、道が整備されれば、飢饉のときでも食料は多く安価に買うことが出来る。貴殿の理想にもそう話だと理解しているが……」
「確かにそのとおりだ。道や河川が整備されれば、奴隷や貧民の職は無くなり元の通りになると思いますが……」
奴隷商は懸念事項を口にした。
確かに一時期仕事があったって仕方がない。これは事実だが一時だけでも仕事がなければ、貯蓄が底を尽けば死を待つばかりになってしまう、座して死を待つなんて事は常人にはできない。
「解放した奴隷や、貧民には土地の
そうする事で、多少日当が安かろうと文句はでまい。軍に入りたければ試験を受けてもいい。貧困を救うのは国や貴族が行う公共事業だ。平時にはただ飯ぐらいの軍にも良い訓練になろうだろう」
平時にはただの無駄飯ぐらいの軍隊でも、保持していなければ他国に攻められる原因になる。前世では、武力組織を持っていない国家はほぼ存在しないからな。
次男家・三男家と差を広げるためには、税収をアップさせるのが手っ取り早いだろう……
「なるほど、河川を工事するためには、大量の物資と人を輸送する道路が必要。道路を工事するためには金と人手が必要。そう言う事ですか……」
奴隷商は俺の意図に気が付いたようだ。
さて、ここからどれだけ吹っ掛けられるかが腕の見せ所かな……
「その通りだ。我が父パウルに君の事を話し奴隷調達の優先する事を約束しよう……それと幾つか仕事をお願いしたい。国法と領地法で定められた待遇に違反した奴隷商の密告をお願いしたいんだ」
法に抵触した奴隷商は即時営業停止となり、その商会の持つ所有物は公の物として没収される――――
古代ローマ奴隷の値段は成人男性で約1000S、女性の場合は約800S程度で、1家4人の年間の生活費が500〜1000S程度と考えると大変高価な物だと分かる。
※Sは通貨単位セルテルティウスの略で、作者が見づらいから置き換えた。
――――つまりは法を犯している奴隷商を摘発し、金と物……奴隷を巻き上げようと言っているのだ。
「確かに法を犯す奴隷商が居る事は否定しません。彼らの中には奴隷を不当に虐待する者も居ます。しかし、奴隷制度は弱者のセーフティです。それに不用意に改革の手を加えるのは反対です」
ちっ……この奴隷商ならば、『人権』を盾にして俺の都合を押し通す事が出来ると思ったが、大きな
「――――ではこうしよう……君の判断で良い不法に該当する商人のリストを作成し、A級、B級、C級に選別し順に刑罰を軽くする。
A級は……そうだな奴隷の虐殺など人道に反する国法を犯した者。B級は領地法を犯した者。C級が情状酌量の余地があるまたは軽微な犯罪である者とし、それぞれ死罪と財産没収、財産没収、罰金(現物納付可)とでもしようか。
まだお爺様の代官である我が父パウルの許可は降りていない。今すぐ必要と言う訳ではないが早めに用意してほしい」
彼の表情は一言で言えば迷いそのものだ。
大方、
江戸時代の身分制度のようにこの世界でも、士農工商の身分があり、商人の中でも奴隷商は嫌われる立場なのだ。自ら奴隷商になるものよりも、奴隷商の跡継ぎで奴隷商になる方が多いと聞く、恐らく推測どうりだろう……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます