第44話奴隷の行先
「お、お待ちください! 流石にこの人数に仕事を振り分ける事は難しいかと……」
騎士の一人が俺を
フム。コイツは上の言う事を素直に聞くだけの奴では無いようだ。使い勝手は悪いが側に置いておくことで、ストッパーとしては十分に使えそうだ。
「君の言う通りだな、新設する商会の見習いとして働かせよう。所有は……俺個人よりも
まさか意見を求められると思っていなかったのか、青年騎士は一瞬戸惑いの表情を見せるが、即座に
俺の目を真っすぐに見てこういった。
「新設する商会で働かせるのならば、所有者は商会で良いのではないでしょうか? なぜ公爵家の所有とするのでしょう?」
「理由は簡単だ。商会の所有権は俺……否。金を出したお父様にある。お父様は平民にも非常に
そこまで説明すると、机に置かれた水を飲んで喉を潤した。
「公爵家の金だけでなく私有財産を混ぜる事で、もし当家が政争で負けたとしても資金源を確保できるからな……まぁ無論負ける腹積もりで戦っていないから安心しろ」
俺は自信を持って宣言した。
父パウルにも継承戦争で負けた時のサブプランとして、このペンドラゴン商会を運営するとは、説明していないので早くから逃げる準備をしている。と、悟られる訳にはいかない。銃が登場する以前の戦争では、王や指官が前線で指揮を振った例は少なくない。
残念ながら昔の為政者のように、自らの身体を賭けて国を守るとか、一族を守る程の心意気はないのだ。
「どう言う事ですか?」
「あり得ない話だが、わが父パウルがこたびの政争で負け、次男家か三男家が家督を継いだとして、他の家はどうなるだろう? 良くて領地を没収され、主従の誓いを立て家臣になるだろうな……無論不満がないと言えばウソになるが……生きているだけマシかな……」
殺される可能性を考えれば大分マシな考えだ。世界中で行われた廃嫡の手段として他には、継承権を公式記録に残るカタチで破棄させ、神殿にでも放り込む。こうすると、大体の寺社仏閣は俗世に戻る事は難しいように出来ているので、公的な形と宗教と言う精神的な二重の正当性を消失させる事で、波風を立てないようにすることができる。
「……」
若い騎士は何も言う事が出来ず。ただ沈黙している。
「まぁそんな悲惨な結末にはならんだろうがな。何故ならこの戦の勝者は我が一家だからだ。そのために今、俺自らが城下に出て人と金を集めているのだ。」
騎士に言い聞かせるように……いや。自分に言い聞かせるように言葉を紡いだ。
奴隷の少年少女たちの視線に気が付いた。
その視線は結局自分たちはどうなるだろう? と言う不安の色を感じ取る事が出来た。
「ひとまず。屋敷に連れ帰り、基本的な教育を
口に出しながら基本方針を決めた。昔からの癖で喋りながら意見を纏める事があるが、この世界に来てからは意識的に抑制している。
変人と思われたくないし、自分の考えを盗まれる可能性があるからだ。だが今回は少し気が抜けていた。
「ジョバンニと仰いますと、商人
奴隷商は目を輝かせて質問してきた。
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