第43話奴隷を買おう




 この世界にも奴隷が存在する。

 借金の形にされる、親に売られる、生まれた時から奴隷、犯罪の罪によって、誘拐されるなど、奴隷の身分に落ちる理由は様々だ。

 多くのWEB小説と同じく、奴隷には【服従の首輪】というマジックアイテムがはめられ、コレをハメられると主に逆らう事が出来なくなるらしい。

 奴隷が売却された時に主人の血を首輪に触れさせ、専用の呪文を使うことで初めて契約は成立する。この契約で奴隷は主人を害することが難しくなる呪い(孫悟空の頭の輪っかの様に激しい痛みに襲われるらしい)が刻まれた魔道具をしようする。

 奴隷は法的に主人の所有物となり、殺人や窃盗などの正当性がない限りは、他者が奴隷を殺すことは法で禁じられている。

 また奴隷の人頭税や衣食住にかかる費用は、全て主人が負担しなければならない。


 また不必要な虐待は、貴族であろうと罰に処されることとなる。この世界版の剣闘士奴隷スパルタクスのような人物達の活躍により、奴隷の扱いはかなり寛容クレメンティアになったものの、私有財産の所有は認められていない。

 そして旧貴族たちは、道具としてしか見ていない。奴隷かれらの権利が拡充するのは面白くないのだ。

 そう言った。経緯もあり、奴隷の扱いは決して良いものとは言えない。


「ユーサー様。御身自ら奴隷商人の元に等向かう必要はないのでは?」


 そう言って俺の行動をいさめたのは、警護の騎士だった。


「昔よんだ本では、古の帝国では貴族であろうと良い奴隷を買うためには奴隷市に向かい商品を直に見ると読んだのだが……」


 古代ローマでは良く、奴隷の出身地や技能の詐称が横行していた。ガリア人と言う木札を下げているのに、実際は違った。何て事は良くあったそうだ。


「確かにそう言った逸話は、ございますが今の世それも公爵領で公爵様の縁者に対してそのような愚行を犯す、奴隷商人が居るとは思えませんが……」


 彼の言う事ももっともだ。この領地で、当家に逆らうという事は、警察、軍、行政、司法その全てに喧嘩を売るのと同じだ。


「まぁ俺の傍回りを任せる女中メイドが欲しいんだ。自分で選びたいんだ」


「左様ですか……」


 暫くすると、何人かの少年・少女を連れて奴隷商が部屋に入って来た。

 少年や少女の顔色……肌の血色は悪くなく、唇と言った細部もガサガサになっていないのは、この奴隷商の扱いが良いからだ。

 衣服も質素ながら、冬のこの時期には十分な暖かさを与えてくれそうな服装をしている。


 コイツはアタリだな……


「これはこれは、ユーサー様。このような場においで下さり誠にありがとうございます」


「気にするな。貴殿らのお陰で民達はギリギリ生きていけている」


「そうですな。水害、獣害、モンスターの暴走、戦争、族の襲撃、村はその程度で崩壊してしまう……我々はその弱みに付け込んでいるのですよ」


 奴隷商は自虐的に微笑んだ。


「だが、その口ぶりからするとに貴殿は、奴隷商をある種の防波堤。セーフティーネットと思っているようだ。事実そこの彼らの扱いも悪く無いようだ……」


「無論。貴人であるユーサー様にお出しする人材ですから、有能なモノを揃えたまでです」


 と謙遜までする。


「実は、我が長男家は街道整備を貧困民への救済と商業の活発化のために行う予定でな。道路工事の『人』を求めているのだ。それを貴殿には用意して頂きたい。無論、兵士や貧民を雇う事が主目的なのだが人手が足りない事が予想される。だから信頼できる商人を探しているのだ」


 これは嘘ではない。道路や治水の事業はバレても問題ないが馬車の事業がバレてしまうのは不味い。この短時間では俺はこの奴隷商をそこまで信頼出来ていないからだ。


「分かりました。ご用意させて頂きましょう……私は奴隷制度が嫌いなのですが親の商売で仕方なく継いだのです。貴方なら解放奴隷としなくても十分な暮らしを彼らに与える事が出来るでしょう……」


「そのために頑張っているのだ。信頼してもらうためにも今ここにいる全員を買おう。俺の傍仕えとして雇い入れる! 男は、執事か兵士か騎士、女は女中だな……」


 俺はそう言って年もさほど変わらない奴隷たちを買う事にした。




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