第10話畑を手に入れた
数日後
俺は
「先日、自分の花壇が欲しいと仰られていた件ですが、庭師が場所を用意してくれました。良く肥えた土を移してありますので、今からでも花を植えても大丈夫との事です。」
良く肥えた土が入っているのは嬉しい事だが……俺がやりたかったのは、贈答品用の花の調達と
「ありがとう。贈答品として喜ばれる花があれば、是非種や球根が欲しい庭師に頼んでおいてくれないか?」
「既に庭師が用意してあるそうです」
「そうかありがとう……」
俺はマリーネと共に庭師の元へ向かった。
規則正しいシンメトリーを基調とした。秩序ある複雑な幾何学模様を作り出すような庭ではなく、屋敷の周囲にある騎士の詰め所や使用人の宿舎が近くにある。通路と呼ぶべき場所に移動してきていた。
そこにはレンガによって囲われた。小さな花壇が作られていた。
庭師は頭に被った帽子を取ると会釈をする。
庭師は庭の管理だけでなく、突然の来客があれば来客の案内を務める。だから庭師は紳士的な人物でなければ務まらない仕事だ。
「ユーサー坊ちゃま、これ位の広さで宜しいでしょうか?」
「あぁ問題ない。レンガと
「かまいませんが何をするつもりですか?」
「少しやりたい事があってな。この花壇を四分割する」
「何やら分かりませんが……必要なのはレンガと鍬ですね。分かりました直ぐにお持ちします」
庭師はそう言うとこの場を後にした。
「ユーサー様。なぜ四分割する必要があるのであるのですか?」
「実験だよ、実験。本で読んだんだけど、同じ作物を同じ畑で作っていると段々実りが少なくなってくる。現在の農法では新しい土を混ぜるか掘り起こすか一年土地を休ませる農法と、魔法で地力を回復させる方法があるんだ。それ以外の方法を試せないかなと……」
ぶっちゃけ嘘である。
実際のところ
今回実験するのは
作るのは麦ではなく、公爵家の長男が育てたと言う付加価値の付いた花だが……
「素晴らしいお考えです! 「ユーサーの本分は勉学です」と言いたいところですが、そちらの方は完璧なようですし……なので魔法と武芸の時間を増やしましょう。魔力のコントロールが苦手なようですので……」
「ぐっ!」
「園芸は心が疲れる貴族にとっては趣味の領域です。
他には釣りや裁縫、旅行、本の執筆、食などを趣味にされている方は多いと聞きます。ユーサー様も挑戦されてみたらいかがでしょう?」
「考えておくよ……」
俺は予め用意して貰っていたカーネーション、ユリ、カスミソウ、バラと言った花束に向いている花々の種や球根、株を植える。
良くも悪くも貴族の主な仕事は人間関係にある。
賄賂は礼金や心付けとして、この世界の貴族の間には存在している。賄賂を悪とする風潮がないのだから当然である。
俺は子供だから、まだ金を右から左へ流す事なんて、金もないし人望もないから出来ないから、出来ないが花を贈る程度は出来る。
前世の経験から消え物以外を貰うのは、少し嵩張って使いどころや置き場所に困る。
消え物でなおかつ見た目も華やかで、公爵公孫が自ら育てた花ともなれば価値は高いだろうと判断しての事だ。
庭師から道具を受け取ると、
「ユーサー坊ちゃん。雑草摘みや選定もご自分でなさるそうですが……」
庭師が作業中の俺を見守りながら話しかけてくる。
「ああ、そのつもりだ。どうせ五歳になるまでは、屋敷からは余り離れられない。雑草摘みは自分で出来るだろうが、忙しくなったら手伝いぐらいは頼むかもしれない。できるだけ自分でやりたいからな……」
「それは良い事だと思います。上位貴族とは言え農業をする事は、民草の暮らしの一端を知るのにはうってつけかと、過去の平民出身の執政官も「農業はいいぞぉ(意訳)」と言っていますし」
この世界にも共和制ローマの執政官である大カトーの様な人が居たんだ。
「すまないが、俺が世話を出来ていないようなら世話をしてくれ、枯れても構わないから今から渡すメモを守って世話をしてくれないか?」
「もちろんですとも、何なりと仰って下さい……」
俺は四つの区画一つ一つの育て方を説明し、メモも渡した事で庭師からの貴重な意見を聞くことが出来た。
この国では地力の回復のために、栄養豊な土を足す事はあっても、堆肥を作ると言う発想には至っていないようだ。
なのでこの畑を弄る事は許可しないが、他の場所を使うのなら俺の考えた方法を試して、アレンジを加える事は許可すると言ったら、泣いて喜んでいた。
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【あとがき】
まずは読んでくださり誠にありがとうございます!
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新作異世界ファンタジーの
【魔剣士学院の悪役貴族(ヒール)の四男は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めました。】
https://kakuyomu.jp/works/16817330649742962025/episodes/16817330649866158494
こちらもよろしくお願いしますm(__)m
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