78 カフェテリアで神奈川さんを迎えて
金曜日。
お昼休みの時間になり、私はいつものようにカフェテリアへと顔を出した。
今日はといえば神奈川さんをカフェテリアに誘っている。
今後も一緒に御飯を食べようと誘うつもりだ。
これでカフェテリアメンツは水無月さん、天羽さん、桜屋さん、瀬尾さん、守華さんに続き神奈川さんで6人目。私を含め7人になる。
カフェテリアにある一番大きいテーブルでも手狭になってきたので、今後はテーブルを2つ使うことになるだろう。
神奈川さんの姿を探すと、既に来ているようだ!
「やっほい神奈川さん!」
「あ、香月さん!」
神奈川さんが知っている人を見つけて安堵するように表情を緩ませる。
「あれ? 水無月さんは?」
「それがイヴンくんと少し話があるから先に行っててって言われて……」
「そっかそっか。イヴンと神奈川さん達は同じEクラスだもんね」
なんだろう? 留学についてなにか話があるのだろうか?
イヴンの攻略手順は把握している。
そこから逆算して考えていると、既にカフェテリアに来て座っていた桜屋さんに声をかけられた。
「香月さんこっちこっち!」
既に桜屋さんによって席は確保されている。
カフェテリアグループのメッセージで、“一番先に授業が終わった人は2つテーブルを確保しておいて”と頼んでおいたのだ。新しい人が来ることも知らせていた。
「やっほ桜屋さん。こちら言っておいた神奈川さんだよ」
「こんにちは香月さん、神奈川さん。
私の名前は桜屋立日よ。皆は桜屋さんとか
好きな方で呼んで頂戴」
「えっと神奈川
「桜屋さん、守華さんは?」
「
「あーもしかして桜濤学園の人から連絡があったのかな、今日来るって話だから」
「へぇ、そうなのね……あ、天羽さん! こっちこっち~」
桜屋さんが天羽さんを見つけ声をかける。
天羽さんがいつものようにふわりとした雰囲気で「こんにちは皆さん」と囁く。
「天羽さん、こちら神奈川茉莉さん! 今日からカフェテリアメンツに加わって貰うことになったんだ」
「それはそれは……2Cの天羽文歌と申します。よろしくお願いします」
神奈川さんに握手の手を差し出す天羽さん。
「こちらこそ! 神奈川茉莉です。よろしくね天羽さん」
神奈川さんがその手を握り返して微笑む。
「あ、水無月さんと瀬尾さん! こっちこっち~」
私が二人を見つけて声をかけた。どうやらカフェテリアに向かう途中で会ったらしい。
「瀬尾さん! こちらメッセージで伝えてた神奈川さん!」
「神奈川さん。オケ部ではあまり話したことないけど、これからよろしくね!」
「こちらこそよろしく瀬尾さん」
瀬尾さんと神奈川さんが挨拶を交わし、私が「あと来てないのは守華さんだけかな?」と確認する。
「
水無月さんが私に問う。
「桜濤の生徒会から連絡があってその対応してるみたい?」
「へぇ……今日の予定だものね合同会議」
「うんうん。どんな子が来るんだろうなぁ」
「あぁ……香月さんには教えていなかったわね……」
そう言って水無月さんはビニール袋からコンビニおにぎりとサンドイッチを取り出す。
そうして、各々にお弁当を取り出すと、食べ始めた。
「神奈川さんはキーネンの家でメイドバイトしているのよね?」
桜屋さんが神奈川さんの方を見て切り出す。
「はい。水無月さん、香月さんと3人で」
「へぇー時給いくらなの?」
「3000円ぽっきりだよ」
「そんなに出してるの……?
へぇ……うちは使用人とかはいないから羨ましいわ」
私が答えると、桜屋さんがそう言ってお弁当をつついている。
すると守華さんがやってきた。
「――ごめ~ん。生徒会の用事で少し遅れたわ」
「守華さん。桜濤との話はもういいの?」
私が聞くと、座りながら守華さんが答える。
「えぇ……ばっちりよ」
「そっか、どんな人が来るか楽しみだなぁ。女の子はいくら増えたっていいよ」
私がちらりと神奈川さんの方を見ると、守華さんが神奈川さんに気付いたようだ。
「えぇ、そうね! 神奈川さんもよろしくね!
このカフェテリアの食事会も大分人が増えてきたけど、まだ増やす気なの? 香月さん」
「うーんまだまだ増えるみたいだよ? ね、水無月さん」
「えぇ……差し当たってはあと二人ほど増えるかしら」
水無月さんがそう答える。
きっと鈴置さんとひつぐちゃんのことだ。
「来年になったら更にもう一人増える予定だよ!」
私が周防ももちゃんの事を暗に告げると、天羽さんが「それは楽しみですね。後輩さんでしょうか?」と手を合わせて微笑む。
「香月さん、来年に増えるのは一人ではなく二人の予定よ」
水無月さんが訂正するようにそう言う。
「え? そうなの?」
誰のことだろうか? 私には皆目見当がつかないよ。
「それはまぁおいおい話すとして……香月さん、留学のお話だけれど……」
「あーうん。どうなったー?」
私が水無月さんに聞くと、皆が目を丸くした。
「留学……? 香月さん、ご留学されるんですか?」
瀬尾さんが私に心配そうに聞く。
なんで心配なんだろう? オーディションの日程にかち合うと思ってるのかな?
オーディションは7月末だからギリギリ夏季短期留学へ出る前だから大丈夫だよ。
「あーうん。水無月さんと一緒に8月からの一ヶ月間、サウジアラビアの夏季短期留学に申し込もうかなって」
「そうなんですね……夏季短期留学……8月からならばまぁ……」
瀬尾さんは納得するように卵焼きにかじりつく。
「それって、何人も一緒にいけるものなの?」
桜屋さんが私に聞く。
「さぁ……それは私も聞きたい話だよ。どうなった? 水無月さん」
「えぇイヴンくんに先程聞いたのだけれど、お父さんに頼んだら喜んで受け入れてくれるみたい。何人でも連れてきてくれだそうよ」
「おぉ~気前がいいね、何人でもオッケーだなんて」
「えぇ、そうね」
水無月さんが返事をしながらも、なにか納得いかなさそうな表情をする。
「その夏季短期留学、何人でもおっけーって話なら私も応募してみようかしら」
桜屋さんが興味津津そうに言う。
「え!?」
「え?」
私と水無月さんが驚くように声をあげる。
「なに? 二人だけサウジアラビアに旅行なんて不公平じゃない? 費用はいくらなの?」
「留学費用は50万円よ……」
水無月さんが留学費用を教えると、桜屋さんは俄然乗り気になったようで嬉しそうに言う。
「良いじゃない。中東への1ヶ月間の旅行としては格安じゃない?」
「えぇ……とってもお安いですね」
それに天羽さんが同意した。
「ちょっと待ってね。サウジアラビア、旅行、費用っと……。
本当だ首都のリヤドまでのフライトで片道15万円弱かかるって書いてあるわ。
ほとんど航空券代の大サービスじゃない?」
そう守華さんが言い、「ショッピングもできたりするのかしら……」と目を輝かせる。
桜屋さんが「良い経験になるだろうし私も応募してみるわ」と言い、「私もご一緒したいです」と天羽さんが続く。
それに「私も買い物へ行けるなら行きたいわ!」と守華さんが更に続いた。
「ちょっと待ってみんなサウジアラビアだよ!?」
私が冷静になってそう言うが、当の3人は海外旅行にも慣れているらしく、「それが何?」と言わんばかりの表情を私へと向けた。
だって、占拠事件が起きるんだよ!?
とは言えない。
イスラム教だし女性の扱いがーって言っても私はあまり詳しくない
どうしたものか……。
「そう……それじゃあイヴンくんへ相談してみたら良いと思う」
私が悩んでいると、水無月さんがそう言い切った。
ど、ど、どうしてそうなるの水無月さん!?
「な、なんで?」
私が動揺して声を漏らすと、水無月さんは「だって皆こんなに行きたそうにしているし、止めても多分無駄よ」と冷静に言った。
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