70 募金活動の終焉

 月曜日。

 いつもより早めに我が家を出る。

 父と母は今日は休むらしかった。

 きっと土日の疲れが溜まっているに違いないし、なにより父が学校まで私を送り届けると言い張って聞かなかった。


 水無月さんと話をした後、父と母に番号くじが当選してたことを伝えると、父は気楽そうに「お、10億円当たったかー」と言っていたのだが、いざ私が10億円を6口、合計で60億円が当選したことを伝えると、見事に固まってしまった。

 何度も何度も確認するように番号くじを眺める父と母。


 そして寝不足で眼を擦りながらも、その日の内に銀行へ行って早速の換金。

 私の口座にはあっさりと60億円ものお金が振り込まれることとなった。


 募金用に3000万円をその場で引き出すと、私が家から持ってきたスポーツバッグは札束で一杯になった。その光景を眺めて、本当にこれはお金なんだろうか? という問いが何度も脳裏に反芻した。


 札束入りのスポーツバッグを抱えて統制学院へと着いた私と父と、そしていつものように一緒の瀬尾さん。

 瀬尾さんには悪いが、最近募金活動をするために早めに登校して貰っていた。


 私は「早速募金してくるから」と父に言うと、父は「気をつけてな!」とまだ心配な様子だ。

 瀬尾さんが「今日は私もお手伝いします」と言い、一緒に生徒会室へと向かう。


 生徒会室に入ると、今日も朝の募金活動を行う為か、既に守華さん浅神、佐籐、水無月さんがいた。


 私は守華さんと佐籐が募金箱を持って校門へ向かったのを確認すると、スポーツバッグから札束を取り出して、水無月さんと浅神の持つ募金箱へと投入していく。

 唖然としてただ見守る瀬尾さんと浅神。


「よいしょ、これで3000万」


 私がそう言って募金箱をぽんと叩くと、瀬尾さんが「こんな大金どうしたんですか!?」と驚いた様子で聞いてくる。私は「ちょっと臨時収入があって……あぶく銭だし寄付することにしたんだ」と苦笑い。


「人に言えないような金じゃないんだよな……?」


 と浅神が睨みつけるように私を見る。


「無論、その辺は全く心配なし。至極まっとうなお金だよ」

「そうか……それなら有り難く貰っておく」

「うんうん。妹ちゃんの手術成功するといいね!

 あ、この事は他の人達には内緒だからね!」


 それだけ話すと、私達も朝の募金活動を開始した。

 と言っても、既に目標金額には到達している。

 浅神の他にも水無月さんが心なしか嬉しそうな顔をしていた。

 あとは海外での手術を待つのみだ!




   ∬




 放課後。生徒会活動。

 早くも浅神妹ちゃんを救う為の募金活動は目標金額を達成。

 豪徳寺はじめ、浅神自身がこれ以上の募金活動は不要と決定したため、私達は早くも募金活動を終了させることになった。


「あのアマバネの天羽あもうさんが1億も出してくれたことには驚いたが、しかし残りの5000万も一週間も経たずに集まるだなんて、俺は少々この学院に通う生徒の懐具合を舐めすぎていたらしい」


 豪徳寺が驚嘆する。

 無理もない話だ。私だって天羽さんはともかくとしてキーネンのやつが1500万も出してくれたことには物凄く驚いていた。

 一体どういう風の吹き回しだったのだろうか?


「まぁ集まったことは良かったのだし、素直に喜びましょう」


 水無月さんが冷静にそう言って、みんなが「お疲れ様!」と言い合う。

 そして浅神が席を立つと、


「皆さんには本当にお世話になりました。

 まさかこんなに早く集まるとは思っていなかったけど、本当に助かりました。

 ありがとうございました!」


 と生徒会一同に頭を下げた。


「良いってことよ浅神、せいぜい妹ちゃんと仲良くしてやりな」

「えぇそうね。妹さんを大切になさいな」


 私の言に水無月さんも続いた。


「うん。妹さんを大切にすることは良いことだよ」

「よくやったな浅神!」

「良かったわね浅神くん!」

「おめでとうございます」


 と佐籐、豪徳寺、守華さん、唯野さんの4人も浅神を祝福する。


「この御恩は一生忘れません! ありがとうございました!」


 最後にそう浅神が言い放ち、本日の生徒会は解散した。

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