67 募金活動

 水曜日。

 浅神の妹ちゃんを救うための募金活動を初めた私達。

 事前にカフェテリアグループのメッセージで募金開始の旨を伝えてあったからか、早々に天羽さんが莫大な金額をしたためたっぽい小切手を入れてくれた。

 それを皮切りに、どんどんと生徒たちから募金が集まっていく。


「私もこれくらいなら出せるから」


 といってお札を入れてくれる桜屋さん。

 カフェテリア面子の二人に続き、どんどんと生徒たちが募金に集まってくる。


 さすがはブルジョワの巣窟である統制学院。

 私は最初100円入れただけだったが、お札で入れてくれる生徒のほうが圧倒的に多い。

 中には天羽さんのように小切手を書く人や、万札を惜しげもなく投入してくれる人もいて、募金活動は順調に推移していた。


「浅神、どうよ統制学院も捨てたもんじゃないでしょ?」

「おう……本当助かるわ」


 浅神は募金箱を抱えながらも少し嬉しそうだ。

 と、そんなところへキーネンが爺やを連れ立ってやってきって大仰に言った。


「俺も募金することにした。目標額はいくらだV1」

「えっと1億数千万円だよ? でもなんで?」

「爺や1割だ」

「は!?」


 私が驚いていると、「かしこまりました坊ちゃま」と爺やがすぐに1500万の小切手をしたためた。

 そしてそれにキーネンが最後に確認のサインをすると、「ほらV1」と私の募金箱へと入れた。


「なんでさ……?!」

「別に……たまたま思い立っただけのことだ気にするな」


 それだけ言って、私達の元を去っていくキーネン。


「ちっ……カッコつけやがって」

「まぁでも有り難い」


 浅神がそう言って、キーネンを見送るように深々と頭を下げた。


 そんなところへ黒瀬が針山を伴ってやってきた。


「よう! 俺達も微力ながら協力するぜ」


 そう言って百円玉を取り出す黒瀬と針山。


「ほんっと微力だけど感謝するよ」


 私がそう言ってペコリとお辞儀すると、黒瀬は「もっと感謝してもいいんだぞ?」と押し付けがましい。さっさと消えてほしい。ほんとに。


 すると、水無月さんと豪徳寺、佐籐らが募金活動をしている方にイヴンたちオケ部男性陣の面々が集まっていき、次々と募金をしていく。

 ふっふっふ、いいぞお前たち精々貢いでいきたまえ。


 最後、イヴンがなにやら水無月さんと話をしているように見えたが、気のせいかもしれない。

 しかしイヴンの野郎、末弟とはいえ石油王の息子なんだからはした金だったら承知しないぞ! まぁいまのあいつにはそれほど自由にできるお金ないかもだけど……。


 次いで、鈴置さんたちがオケ部女子を引き連れてやってきて、「協力するよ香月さん」とドンドンと募金箱にお金を投入していく。


「ホントありがとうみんなー大好きだよ」


 私が礼を述べると、ひつぐちゃんが「ふふふ、もっと好きになっていいんですよ?」と淡々と言った。


「でも鈴置さん、どうして募金のことを?」


 いまはちょうど部活開始前だ。

 募金活動も始めたばかりだし、こういう地道な活動ほどそう簡単に噂など流れるものでもない。だから不思議に思ったのだ。


「それは瀬尾さんに聞いたのよ、ね? 瀬尾さん」


 呼ばれ、後ろの方にいた瀬尾さんが出てきて、


「前にご飯食べた時にも話は聞いてたし、香月さんにはいつもお世話になってるから!

 それよりも例の件、お願いね……!」


 と黄色の瞳を滾らせつつ満面の笑顔を向けてくれた。

 守りたい、この笑顔……!

 てか例の件ね。把握把握! 書類選考を通過するとも思えないけど、もし受かったら頑張って付き添うよ!


 鈴置さんたちが去って少しして、校内アナウンスで守華さんによって募金開始の旨が学生たちに知らされた。下校開始からちょっと経ってしまっているが仕方あるまい。

 放送で善意ある生徒たちが集まってくれると嬉しい。


 そんな事を考えていると、後ろから肩を急に叩かれた。

 振り返ると、ふらりと現れたのは矢那尾さんだ。


「……こちら新聞部一同からになります」


 そう言って札束を1束入れてくれた。

 厚さ的にたぶん100万円だ。うわー凄い持ってるんだな新聞部。


「有難う矢那尾さん! 新聞部って一般人側の人ばかりと思ってたけど、もしかして結構お金持ちも多いんだ?」

「さぁ……それはどうでしょうか。

 まぁ唯野さんは比較的裕福であるとは伺ってはいますが、ゴシップというものは人を惹き付けてやまないものですからね。資産家の子が所属していてもおかしくはないでしょう。

 しかし、今回のお金の出どころはタブーということでお願いします」

「うん、了解了解。表に出せないようなお金じゃないならおっけーおっけー」


 お礼を矢那尾さんに言うと、「いえいえ、今後もご贔屓に」と言ってすっと消えゆくように去っていく。

 きっと黒子とか向いてるよ、矢那尾さん。

 それに協力してくれないって水無月さんから聞いてたけど、こういう事なら協力してくれるんだな。根はやはりとても良い人に違いない。


 校内アナウンスのおかげか人が増えてきた。

 このまま順調に行けば、ゲーム同様に浅神の妹ちゃんを救うことができるだろう!

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