第47話 それぞれ動き出して……。

 辰真たつま達が動き出した頃。

 操姫刃ときは達もまた、動き出していた。

 気配だけを頼りに、妖魔王の元へ走る。禍々しい妖気に近づく程、鳥肌が立ち、冷や汗が背中を伝う。

 それでも、操姫刃ときは楓加ふうかは走り続ける。

 何としてでも、託された想いを叶えたいからだ――。


 ****


 一方その頃。

『革命の奏者』の襲撃を受けている志修那しずな達は、他のトクタイメンバーの援護により、どうにかその場を維持していた。


「ちょおおお!! やばいって!! 無理だって!! 破壊されるの、時間の問題じゃんんんん!!」


 叫ぶ彼に等依とういが優しく声をかける。


「落ち着いた落ち着いた~。まだいけるっスよ、多分」


「多分んんんんんん!? 何さ、多分てぇぇぇぇぇ!?」


 悲鳴じみた泣き言とは裏腹に、やる事はやっている志修那しずな等依とういは感心しながら見ていた。

 その間にも、矢成やなり諒詠りょうえいの猛攻は止まらない。

 結界を守るために、動くのは五奇いつき鬼神おにがみだ。

 二対の武器を振るう五奇いつき鬼神おにがみの鬼、百戦獄鬼ひゃくせんごくきが援護する。二人が先を行くのを、ルッツが更なる援護を行う。紙札を出し、簡易式神を無数に出して、『革命の奏者』達を翻弄する。

 だが……それも時間稼ぎにしかならない。

 故に――託された想いに早急に答えなければならない。

 世界を救うために。

 今度こそ――。

 

 ****


「それじゃあ……やるけど、ライ。お前は……それでいいのか?」


 辰真たつまが尋ねれば、彼は静かに頷いた。その覚悟に応えるべく、辰真たつまも覚悟を決めた。ライの指示通りに、術式を展開させる。

 機構が動き出し、世界が回る。

 ――妖魔王と蒼主院公謐そうじゅいんきみひつ、そして雪原ゆきわらむすめをこれより、この空間から解放するのだ。

 そして……新たな理の守護者として、ライもとい月詠つくよみみことがなる。

 つまりは、代変わりだ。

 それで何が解決するのか?

 わかるのは実行に移してからとなる。


「術式……起動。ことわりに、接続開始!」


 展開された術式により、彼の身体が淡く光り輝き出す。そして、姿を変えて行く。身体は大きくなり、だけれど神聖さをより増して……人型の妖魔でもない、神の姿へとする。

 そして、ことわりに接続した彼により……止まっていた世界の未来は進み始める。

 回り始めた機構は、どんどんその速度を上げて行き、同時に彼と融合していく。

 茫然とする辰真たつまの脳内に、声が響いた。


 ――タツマ。お前と共に過ごした絆……この信頼が糧となり、我が力となる。改めて、出会ってくれてありがとう……。


 その言葉を聞いたのと、異空間が変異し始めたのは同時で、辰真たつまは気づけば涙を流していた。

 悟っていたのだ。

 もう、彼と相棒にはなれないのだと。

 決着まで後……。

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