第43話 介入

 その頃。


「儀式は順調に進んでいます」


 部下からの報告を受けて『革命の奏者』の代表である彼女はほくそ笑む。


(計画完遂まであと少し。ふふふ……)


 彼女……矢成やなりが確信した瞬間だった。突然、異音が鳴り響く。


「何事!?」


 声を荒げれば、彼女の部下の一人が叫ぶ。


「大変です! 半妖を使用した儀式が! 何者かに介入され、乗っ取られました! このままでは、儀式が遂行できません!」


「介入? トクタイか! ちっ、うざいわね! 皆はそのまま! 諒詠りょうえい、行くわよ!」

 

「承知しました」


 側近である彼を連れて、矢成やなりが儀式の場から出て行く。術式の中心には、椅子に座った李殺道りつーうぇいが眠るように目を閉じている。

 一瞬そちらを見ると、彼女はの元へ向かうのだった。


 ****


「介入に成功したけどさぁ……これからの事、本当に上手く行くわけ?」


 志修那しずなの不安げな声が響く。今、まさに空飛あきひが『革命の奏者』の儀式を防いでいる所だ。

 彼は床に胡坐をかいて目をつぶりながら、等依とういの指示で志修那しずなが生成した術式に囲まれている状態だ。


等依とういさん、これから敵が来ると思うが……どう迎え撃つ?」


 操姫刃ときはが尋ねれば、等依とういが顎に手をやりながら答えた。その声色は真剣そのものだった。


「おそらく、敵はまっすぐこっちに来る。オレちゃんは空飛ちゃんと志修那ちゃんを結界で守りつつ、援軍待ちってところ?」


 そこで言葉を一端区切ると、彼は辰真たつまの方へ視線を向けた。


「その間に、辰真たつまちゃん達は為すべきことを為す! っところ? 操姫刃ときはちゃんと楓加ふうかちゃんは雪原ゆきわらむすめさんの願いのために。辰真たつまちゃんは申し訳ないけどうちの先祖のために。それぞれよろしくっス~」


「ねぇ!? 僕は不安しかないんだけど!? 結界ってどれくらい持つわけ!? それに援軍来る保証あるぅ!?」


 声高に不安を叫ぶ志修那しずなに対し、等依とういがはっきりと宣言した。

 

「来る。それが……トクタイの使命であるかぎり、ね?」


 ****


 黒樹市内にて。


「門への接続、完了しました! また、内部にて現蒼主院そうじゅいん当主のものと思われる術式と、先行した夜明空飛よあけあきひの気配に行方不明である件のEチームの気配も観測いたしました!」


 部下からの報告を受けて、ルッツが静かに頷く。その横で、五奇いつき鬼神おにがみが戦闘体勢に入っていた。

 それを確認した上で、ルッツが指示を出す。


「それじゃ『革命の奏者』との決着をつけようか。総員、門の中へ!」


 その言葉を合図に、次々と門の中へと突入して行く。今回、トクタイは総力をあげての作戦展開を行う事にしたのだ。

 なにせ――世界の命運がかかっているのだから。

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