第41話 今こそ

「作戦会議って言っても……どうするんですか?」


 尋ねる辰真たつまに対し、等依とういが微笑みながら返す。


「そうっスね~。……辰真たつまちゃんは、作戦会議の前に、向き合うべき相手がいるっぽいスね?」


 そう言うと、等依とういが視線を移す。そこにいたのは……艶やかな黒髪をした青年、月詠つくよみみことだった。


「タツマ……」


 声をかけられても、辰真たつまは視線を彷徨わせるだけで口を開こうとしない。その光景を見ていた操姫刃ときはが不思議そうに訊く。


「誰だ? ……いや、この気配は……ライか? その姿は一体?」


「ワタシは……ライであり、そして……月詠つくよみみことと呼ばれる存在だ……。真名を呼ばれたことで……本来の姿に、あるべき姿に戻ったんだ」


「え……? あるべき姿ってなに!? どゆこと!?」


 志修那しずなが困惑しながら、声を張りあげに説明を求める。

 だが……。


「すまない。説明をしている時間が……もうないんだ」


 その言葉を聴いた辰真たつまが、伏せていた顔をあげる。


「それ……は? 妖魔殺しの儀式、が、あるから……か?」


「……そうだ」


 それを聞いて、辰真たつまの表情が強張る。しばらく黙り込んだ後、彼はゆっくりと呼吸を繰り返し……そして覚悟を決めた視線を向けた。

 


「話を、しよう。二人で……


「タツマ……」


「そいじゃ~! 二人は少し離れたところで話しをしていてもらうとして! 残りでちゃちゃっと作戦会議しちゃうっスかー? いうて、オレちゃん、部外者っスけどね!」


「あぁぁぁぁ!! た、確かに等依とういさんアンタ、トクタイ……じゃない!?」


 志修那しずなの指摘に、等依とういが頬を搔きながら、口を開く。


「まぁ、一応トクタイっスけどねー? まぁそれもおいといて! 急ぎめで、どーするっスかね?」


 ****


 少し離れた所で、相対する辰真たつま


「それで……その、ライって呼んで……いいのか?」


「……あぁ、構わない……」


 少し沈黙した後、ゆっくりと辰真たつまが口を開く。


「なぁ……なんで、俺と契約をしたんだ?」


 問われた彼は、はっきりと言い切った。


「タツマ、君だからだ」


「俺……だから?」


「お前は、ワタシをおそれなかった。それでいて、ワタシのゆるしてくれた。だから、契約をしたんだ」


 その言葉を聞いて、辰真たつまがゆっくりと深呼吸をして――呟いた。


「俺に、望むものはなんだ?」


 一瞬、目を見開く彼。

 その上で、彼は真剣な眼差しと声色で辰真たつまに告げた。


「世界を……ことわりを……全てを救ってほしい。何者でもなく、タツマ。お前に」


 ここに来て、ようやく辰真たつまの瞳に光が宿った。


 今まで何も為して来なかった自分を――変えるために。

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