第24話 現れしは

「せっかくのうたげを台無しにしてくれたのは……お前達か、トクタイ。そして、彪ヶ崎あやがさきぃぃ!!」


 現れたのは白髪しらが交じりの壮年の男性。その目はにごり、むき出しの敵意があつとして襲ってくる感覚に襲われる。


「彼が~瀧ヶ原勇生たきがはらいさおですね~。皆様、お気をつけてください~」


 争護そうごの言葉を受けて、Eチームの面々は勇生いさおと対峙する。ここでも先に動いたのは操姫刃ときはだった。

 勇生いさおに向かって伍掛剣いつかのつるぎを振りかざす。だが……。


「お前さん、? 動きの雑さが目立つぞ?」


 勇生いさおが片手で操姫刃ときは剣技けんぎを受け止め、彼女を蹴り飛ばす。そして、そのまま猛スピードで水神を保護している楓加ふうかに向かって突進して行く。

 そこへライにまたがった辰真たつまが割り込み、勇生いさおこぶしによる攻撃を黒い刀で阻む。


「っ! 妖魔と共存しているガキか! 邪魔だ!」


 なぜかやいばで防がれても無傷な勇生いさおこぶし。その事実に一瞬目を丸くした後、すぐに勇生いさおからの蹴りをギリギリでかわし、ライから降りると辰真たつまは魔本・刹歌せつかから拳銃を取り出し、容赦なく発砲する。

 その弾丸は勇生いさおこぶしによりはじかれた。


「な、な、なぁぁ!? 人間じゃなくない!? ちょ、えぇ……?」


 武律ぶりつを出して、勇生いさおから距離を取っている志修那しずなの動揺の声が響く。しかし、その声に答えている余裕はなかった――勇生いさおを除いて。


「ふっ。あははは! わしは人間だ! まごうことなき、そして混じりもない純粋な! そう、ただの人間だ!」


 どこか狂気すら感じさせる勇生いさお猛攻もうこうに、Eチームの四人も、争護そうごされる。


「恐れろ! さぁ、人間様の世の始まりだ! 天下を妖魔共なんかに渡してなるものか!」


 独り言のようにも、宣告にも思える言葉。その勢いが尚更恐怖をあおり、辰真たつまの足を思わずすくませる。

 その一瞬のスキを突いて、水神・篠雨主命さざれぬしのみことの治療で動けない楓加ふうかに元へ近寄り……彼女を容赦なく蹴り飛ばした。


楓加ふうか!」


 操姫刃ときはが叫び、急いで楓加ふうかの元へ走る。勇生いさおはそれには目もくれず、篠雨主命さざれぬしのみことの頭を踏みつけた。


「っ!?」


 極度の疲労と反動で身動きできない篠雨主命さざれぬしのみことに向かって、今度はこぶしを振り上げようとしたその時だった。


「……おい」


 気づけば、さきほどまで弱音を吐いていた志修那しずな勇生いさおこぶしをハルバードで防いでいた。その目つきはいつもと違って光がないかわりに鋭かった。


人造式神じんぞうしきがみとかいうのを扱うガキか。なんだね? その目つきは!」


「うっせぇ。黙れ」


 普段とはあまりに違う様子に驚く辰真たつまとライに、それどころではない操姫刃ときは楓加ふうか。対照的な状況にすら無反応に志修那しずな? が言葉を発する。


「オレの目の前で……やりやがったな? てめぇは……殺す」


 そう告げる彼に勇生いさおが尋ねる。


「ほう? お前さんは……誰だね?」


「……答える義理はねぇよ」


 にらみ合う両者の殺し合いが……始まった。

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