第22話 『革命の奏者』

 不気味な雰囲気をまとう、突如として現れた二人組の男女。

 ベールにおおわれている故に表情こそ読み取れないが、敵意と……殺意が込められていることだけは全員がわかった。

 一斉に戦闘体勢へと入るEチームの四人を見ても、彼らは何一つ態度を変えることなく動き出した。先に攻撃を仕掛けたのは女性の方だった。


「消えな! ひよっこ共! 術式じゅつしき肆銘しめい雷砲烈火らいほうれっかぁぁぁぁ!!」


 両腕りょううでから青い炎を吹き上げながら、女性が技を放つ。


「な、な、なぁああああああ!? 蒼主院そうじゅいん退魔術式たいまじゅつしきと同じ技ぁ!? 同じトクタイってこと!?」


 驚きの声を上げながら志修那しずな護連ごれんを出す。青い炎を防がれながらも、女性が声を張り上げ答える。


「トクタイ!? この私をそんな生ぬるい連中と一緒にするな! 私達は『革命かくめい奏者そうしゃ』! 全ての妖魔を……殲滅せんめつしてみせるわよ!! すべて! すべてね!!」


 その声色には妖魔への憎悪ぞうおがハッキリと感じられた。自然と辰真たつまの背筋に冷や汗がつたう。


(この人……いや、……


 魔本、刹歌せつかを握る手に自然と力が入る。それは、護連ごれんを召喚している志修那しずな以外の二人も一緒のようで、気づけば武器を手にし、臨戦態勢に入っていた。


 楓加ふうか操姫刃ときは、二人と視線が交わった。


「しずなんはそのまま防いどいて! トッキー、たっくん達は攻撃を!」


 楓加ふうかからの指示に従い、操姫刃ときは辰真たつま護連ごれんの守りから出る。


「行くぞ辰真たつま


「……はい!」


 青い炎を、辰真たつまつち術式じゅつしきで防ぎながら、操姫刃ときはきん術式じゅつしきで払いながら女性に向かって前進して行く。そこに立ちふさがったのは、女性の後ろにいた男性の方だった。


「ボス、ここで火は不利です。荒ぶる水神の力が増していますし、挨拶はその程度で」


 ボスと呼ばれた女性は後退し、高い木へと飛び移る。そして、宣言した。


「いいかい!? 生ぬるいトクタイのひよっこ共! 私達は妖魔も、それを容認する人間も全部殲滅せんめつするわ! 全てを! これは始まりに過ぎない! この世界は変革するのよ! 我々『革命かくめい奏者そうしゃ』の手によって!! あははははは!!」


 狂気すら感じられる笑い声が遠のく。意識が一瞬飛んだ感覚。その違和感を打ち破ったのは、争護そうごが放ってくれたみず術式じゅつしきだった。


「え~皆様~。あのは~なんとか相殺そうさいしましたが~。時間を取られました~、もはや水神の荒ぶりは~町へ甚大じんだいな被害を及ぼしそうです~」


 その言葉を受けたEチームの四人は、争護そうごの案内を受けながら水神の元へ急ぐことにした。『革命かくめい奏者そうしゃ』がほどこした術式じゅつしきは破壊した。なのに、水神の荒ぶる気配は……どんどん危険度を増しているように感じられた。


(……なにが、起こっているんだろう? 水神様に)


 根本的な疑問に立ち返った辰真たつまの思考。それの答えが出たのは、水神を視認できる距離までたどり着いた時だった――。

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