第19話 状況把握

「……それで? 彪ヶ崎あやがさき一族と因縁のある人物とは何者なんだ?」


 操姫刃ときは争護そうごに鋭い視線を向ける。その目に怯えるでもなく、彼はただまっすぐに見つめ返すと口を開いた。


「はい~。名を瀧ヶ原勇生たきがはらいさおと言いまして~。元は彪ヶ崎あやがさき家と同じく蒼主院そうじゅいん門下の退魔師の一族だったのですが~、数百年前でしたか~? 現在の妖魔王ようまおうが誕生した頃に~どうやらようでして~。その意志を引き継いだ勇生いさおと私達は~対立関係にあるのですよ~」


「ちょっと待ってくださいよぉ!? え、なに!? 彪ヶ崎あやがさき家って退魔師たいましの血統だったの!? それがなんで今こんなことになってんの!? 『革命かくめい奏者そうしゃ』でしたっけ!? それの援助受けてたんですよね、弟さん! ねぇ!?」


 志修那しずなの真っ当な指摘に、争護そうごが額に手を当てながら答える。


「はい~。弟は退魔師たいましの才に恵まれなくてですね~? それで家を出て行きまして~……いやはや困ったものですな~……はぁ」


 口調とは裏腹に、その表情は暗い。咳払いをすると、争護そうごが話を強引に戻す。


「さて、そろそろ本題に戻りましょうか~。『革命かくめい奏者そうしゃ』の仕業にしろ、まずはこの水害をなんとかしなければ~この町は終わりますので~」


「ウチらはそのために来たんです! そのためにも、早速動きましょう!」


 楓加ふうかが明るい声でうながせば、心なしか争護そうごの表情の曇りが晴れたように見えた。


「はい~。それでは~暴れておられる水神様の近くまでご案内いたします~」


 土砂降りの中、Eチームの四人は争護そうごの案内で町内を進むことにした。だが、足場が悪くその上どんどん雨の勢いが凄くなってきたために進みが悪い。


(……こんなひどい雨の中なのに、洪水みたいになっていないのは……なんでだ?)


 不思議に思っていると、ライが魔本の中から辰真たつまに向かって声をかけてきた。


【ふむ。どうやらトクタイの者達が、被害を最小限にとどめているのだろう。そんな気配を感じる】


「……なるほど……」


 辰真たつまが納得したのと轟音ごうおんが鳴り響いたのは同時だった。


「うひゃあ!? なんだなんだなんだよぉ~!!」


 志修那しずなが怯えた声色で近くの木につかまる。それを冷静な目で見つめながら操姫刃ときは争護そうごに尋ねる。


「この音、覚えは?」


「いえ~全く~。ですが~忌々ゆゆしき事態であることは確かでしょうな~。先を急ぎましょう~」


 楓加ふうか志修那しずなを木から引き離すと、そのまま彼を引きづり先へ進む。


「あいたたた!? わかったって! 歩くから引っ張るのはやめておくれよぉ~!」


 志修那しずなの情けない声が雨の音でおおわれた町中に響くのだった。

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