第12話 決着

【オレォ、カァ? アハハハハハ!!】


 不敵な笑い声を上げる『爆炎の妖魔』の思念に向かって、辰真たつまが接近し刀を振り下ろす。そのやいばをかわすことなく、片手で受け止めると、思念は炎の威力を増幅させた。


「っつ……熱い……!」


 辰真たつまが持つ黒い刀身の刀は、特殊な素材で出来ており炎程度で溶けることはない。だが、その熱波はダイレクトに辰真たつまへと届く。


(くっ……射離凪いりなぎ様の……。俺自身に加護は……ない……だから!)


封呪文ふうじゅもん、改変解放! 術式じゅつしき参銘さんめい爆炎列弾ばくえんれつだん!」


『爆炎の妖魔』の思念の炎と相打ちさせる形で、術式じゅつしきを放つ。紅蓮の炎と淡い赤の炎がぶつかり合う。


【マダマダマダマダ! オレハァ!」


 炎の勢いを増し、辰真たつまを焼き殺そうとする思念に対し、術式じゅつしきの威力を上げる。


「……来い! ライ!!」


 珍しく声を張りあげる辰真たつまに答えるように、ライが辰真たつまの背後から飛び出した。そして……。


【お前を、!】


 ライが大口を開け、思念を炎ごと飲み込んだ。声にならない思念の断末魔が周囲に響くとともに、周囲を包み込んでいた炎も消えて行く。その光景を見つめながら、辰真たつまが静かに息をく。


「……終わった……か」


 ****


「いやぁー二人とも大丈夫だった? ごめんね? ウチとしずなん、炎の威力が凄すぎて上まで登れなかったの! 本当に、ごめんなさい!」


 炎が鎮火してすぐに駆けつけて来た楓加ふうかに対し、操姫刃ときはが治療を受けながら答える。


「気にするな。おれを屋上にお前はあげた。それだけで大助かりだし、今の治療も助かっている。問題はない」


 彼女の言葉を聞いて、困惑した声を上げたのは志修那しずなだった。


「……は? 初架はつか浮風うかせが……あげた? ってどうやって……まさか……え?」


「ん? ウチが思い切りぶん投げて、トッキーを屋上まであげたよ~? それがどうかしたの?」


 まさかすぎる答えに、志修那しずなは黙って同じく横で治療を受けながら固まっていた辰真たつまの肩を叩く。


「……伊鈴ノ宮いすずのみや先輩? あの、地味に……痛いです……」


「ごめんなさいね!? でもさでもさ! わかっておくれよ! なぁ辰真たつま! なぁ!?」


 そんな二人のやり取りを不思議そうな顔をして見合わせる操姫刃ときは楓加ふうか。彼らのやり取りを横目で見つつ、目を覚ました榛登はるとがぼやく。


「……とんでもないことになったな……オレ」


 ****


 同時刻。某所にて。

 月明りだけを頼りに逃げる妖魔をは追い詰める。


「はぁはぁ! わ、わしが何をしたというんじゃ! 下界でなにもしとらんぞ!?」


 涙を浮かべて叫ぶ壮年の人型の妖魔に対し、彼女は容赦ない言葉を叩きつける。


「うるっさいわね。アンタ達が……妖魔が生きていること自体が罪なのよ? そんなこともわからないわけ? あぁ! うっかり答えちゃったじゃない! うっざ、気持ち悪っ! だから、死ね」


 全く会話になっていないが、そんなことなど気にもせず彼女は怯える妖魔に容赦のない斬撃を喰らわせ、その命を奪った。


「……妖魔は殲滅せんめつさせる。トクタイのやり方なんて……生ぬるいのよ……」


 憎悪に満ちた声が夜の闇の中、響くのだった。

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