第8話 捜索

「任務はわかった。だけどさぁ! なっんで夜に任務開始なわけ!?」


 情けない声を出す志修那しずなに対し、操姫刃ときはが冷静に告げる。


「妖魔憑きが夜しか活動しないのだから、仕方がないだろう? 諦めろ」


「うわぁぁ! なんって無慈悲な!! 何度も言うけど僕は!」


「前線向きじゃないんだよねー! わかってるよーしずなん! だからそんな大声出さんといてね?」


 楓加ふうかが優しい声色で言うと、そのまま辰真たつまの方へ視線をやる。


「それで、ライライが感じる妖魔の気配はどうなってるん? たっくん!」


 楓加ふうかかれ、困惑した顔をする辰真たつまのかわりにライが答えた。


【今のところ、妖魔の気配はなさそうだ】


「そっかー。じゃあどうしよっかなー? みんな、なにか意見とかないかな?」


 楓加ふうかの言葉に反応したのは操姫刃ときはだった。


「おれが思うに、妖魔憑きは今のところ人気ひとけのないところでしか。つまり……探すならば路地裏とかではないか?」


 彼女の言葉を受けて、辰真たつまがぎこちなく口を開いた。


「あの……。じゃあ、二手に分かれて路地裏を探す、とか……?」

 

「なぁんだって!? 二手!? 僕がいるのは足手まといにしかならないと思うんだけど!?」


 志修那しずなが大声でネガティブな発言をするので、辰真たつまは困惑してしまう。


(この人……なんでこんなに卑屈なんだろう……?)


 そんなことを辰真たつまが思っていると、楓加ふうかが右手を上げて進言した。


「じゃあ頼りになるライライ含めた、たっくんとしずなん、ウチとトッキーでわかれるでいいかな?」


「ま、まぁそれならいいかな……! 辰真たつま、ライ! 頼んだからね!?」


「あ……はい」


 話がまとまった四人は、妖魔憑きを探して二手に分かれることとなった。


 ****

 

「な、なぁ……辰真たつま?」


「……はい」


 街灯だけを頼りに夜の市内を歩く中で、突然志修那しずなが口にしたのはいがいな言葉だった。


「僕は本当に前線向きじゃないんだけどさぁ……。その、君らってどうなのさ?」


「どうって……」


 一端言葉を切り、しばらくの沈黙の後辰真たつまは静かに答えた。


「……戦う必要があるなら戦うだけです」


「うっ……マジかぁ……。そっかぁー」


 何故か額に手を当てる志修那しずなの反応を不思議に思いながらも、辰真たつまは前を進んで行く。元々人避けのふだを使っているとはいえ、どんどん薄暗くなっていく道に志修那しずなの表情が歪む。


「……ほんっとうに、嫌なんだけど……」


 一人呟く彼に声をかけようか迷って……辰真たつまはやめた。し、下手に触れて痛い目をみたくなかったからだ。


 だから、気付くのに遅れてしまった。紅蓮の炎の弾丸が迫っているのを――。

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