3章47話 部活見学3

俺たちが戦術戦闘部に向かう間ふたりから部活動を行うエリアについて説明されていた。


「この部活エリアは運動系の部活と文系の部活の施設が立っていてそれぞれ分かれているんだ。東側は運動系の、西側は文系の施設があるぞ。流石に魔道具とか錬金術なんかは専用の道具がないと厳しいからな。ああ、食堂の薬研は違うぞ、アレは勝手にあそこで研究をして失敗しただけだから本来の場所は西側にあるからな。」


「あ、そうなんだ。何で危険区域が食堂の近くにあるのか謎だったんだ。他にはどんな部活があるんだ?」


「まとめて言うと各種スポーツと【マギスポーツ】、それと【武芸百般部】かな?あとはもうどんな部活があるのかわからん。人数さえいれば部活として認められちまうからな。」


マギスポーツとは各種スポーツに魔力を使用して良いというルールを追加したもので例えばサッカーならボールから火を出すなんて芸当もザラだ。ほぼ同じ競技なだけあってどちらもやる人がほとんどだ。だが


「武芸百般部ってなんだ?他と比べても結構違う気がするんだが。」


「ああ、それはな色々な武芸や流派をひと集めにして一つの部活にしてるんだ。一つの武器一つの戦法では戦えなくなるって言う理念らしい。年二回部内で最強決定戦もやるから学校行事みたいなもんだな。」


「へぇー。私能力で武器作るから使えるように練習したいんだよな。そこも行ってみよう。」


「着いたぞ、ここが戦術戦闘部だ。ちょっと待っててくれ。   おーい部長ー!見学に一人連れてきたんだがどうする!」


しばらくして司ともう一人女の人が出てきた。


「君が見学のこか!うーん、飯食べてるか?もう少し筋肉がないと競り負けるぞ?まぁいい。

司から聞いてると思うがうちでは戦術を考え実行する部活だ。前線で戦うだけが戦闘ではないからな。後方での司令塔や援護なども行えるから良ければ入部してくれ。今日はちょうど戦闘日だからな、どうする?体験入部ってことでやってみるか?」


「はい!あまり実践経験がないので戦ってみたいです!」


「よろしい!君はどう言う戦闘スタイルなのか見せてもらいたい。ついてきてくれ。」


部長さんについて行くとかなり広い訓練場に連れてこられた。そこには十数人の生徒がいた。


「ここはうちの部活が今日借りている訓練場で環境、立地など様々な条件で戦うことができる。さて、どんな条件で戦う?」


「障害物なし、このままでお願いします。」


「いいのか?見たところ前衛タイプには見えないが。」


「はい、大丈夫です!」


「そうかわかった、皆聞いてくれ!この子が今日、体験入部ということで戦闘に参加する。今から私と模擬戦を行うのでしっかり戦術として加えられるよう見ておけ!よし、ではえーと」


「血桜 雪です。」


「そうか、私は戦術戦闘部 部長 【千手 神奈】だ。では始めよう。」


模擬戦開始!


「【血刀 血桜】行きます!」


(千手先輩の能力は未知数!なら一気に詰めて見極める!)


「ほう、血の刀か面白い。ならばこちらも【鋼木刀】フッ!」


千手先輩の刀と俺の刀がぶつかって血と木とは思えない音がする。


「ほう、硬いな。なるほど身体強化で戦うタイプか。なら持久戦は辛いか?」


「どうでしょう?やぁ!」


(いける!少しずつだけど慣れてきた。それにかすり傷でも血を吸えてる。なら勝ち目はある!)


「ほう、意外と持つな。何かカラクリがあるのか?」


「それを言ったら面白くないでしょ!なんだと思います?はっ!」


「おそらく血液操作の類だろうがそれだけでは・・・無いな?それに刀だけでは私には勝てんぞ?」


「ああ、そろそろ頃合いですね。本気で行きます。【吸血】+【血刀】 【簒奪刀】」


(これなら魔法を切れる、あの刀ごと切ってやる!)


「奥の手と言ったところか?ならばこちらも一つ技を出そう。【吸血樹】【鋼木刀】」


「はあ!?それアリですか!?完全にこちらを潰せる技じゃ無いですか!」


「まあ、先輩だからな、さあ最後の攻撃だ。いくぞ!」


(全く、先輩っていうのはすごいな。でもこっちもアレを仕込んでる。いけるか?)


「「はあ!!」」


撃ち合いの瞬間土煙が舞い勝敗がわからなくなる。しかし両者の決着は決まった。

煙が晴れるとそこには両者首元に攻撃を届くギリギリで止めていた。


「まさか、簒奪刀が切りきれなくて吸われるとは。」

「こちらこそ、まさか地に落ちた血液を操作出来るとは。」


「「引き分けだな」ですね」


結果どちらも致命打を与えるということで引き分けとなった。だが、部長に引き分けるという意味を雪はまだ理解しきれていなかった。


「疲れたー!司、あんな人がいるんだね。父さん以外にあんな強い人がいるなんてやっぱりこの学校来てよかったよー。ん?どうした?」


「どうしたじゃ無いよ、全く。部長と引き分けるって相当なことだからな?この短期間でよくこんなに強くなったな、お前。にしてもこんだけやらかすと、ほら、お迎えが来たぞ?」


「お迎え?一体何が・・・?うわっ!」


「なあ、最後の技何!」

「あの刀見せて!」

「刀の強化もう一回!」

「なんであの部長に引き分けたんだ!?秘訣教えろ!」


「あわわわ」


流石にこんな大番狂わせを起こした雪に詰め掛けないわけもなく囲まれまくっていると


「血桜 雪さん。とてもいい試合だった。どうだろう?もし良ければうちの部活に入らないか?君のような人材が欲しい。」


「そのことなんですが他にも見てみたい部活があるんです。兼部でもいいという話でしたので他の部活も見てから決めてもいいですか?」


「ああ!いいぞ!特にうちは戦術の幅を広げる意図もあって兼部を推奨している。他の部活も我々との兼部ならば認めるだろう。ところでこの後戦闘演習をするのだが参加していくよな?」


「いや、その、今日は疲れたし・・・」


何か良くない予感がしたので全力で断ろうとしたのだが後ろから拘束された。拘束した犯人を見ると


「雪、久しぶりに戦おうぜ?」


「司、お前もか・・・!」


「さあ!演習開始ー!」


そんなわけで連れてこられたのだが明らかに人数がおかしい。


「あの、なんでこっち私一人なんです?」


「今回の演習は広範囲遠距離攻撃を行う敵に対処することを目的としている。だから雪には全力で抵抗して欲しい!」


「はあ!?それリンチと何が違うの!?なら全力で対抗するよ!?」


全力と言うと流血沙汰になるのだが良いんだな?


「この訓練場の環境などを変化させる仕組みは【夢幻の結界】というものを使っていてたとえ死んでも無傷で外に吹っ飛ぶだけになる。だから遠慮するな?ボコボコになるぞ。本来は私がやる予定なのだが模擬戦で戦いたいやつが多数出てきてな、まあガンバレ。」


「ふ、ふはは、フヒッ」


「よーし、開始位置についたな?演習開始!」


「フハハ!みんなやられろー!【吸血】+【血の雨】 【魔吸の雨】!」


演習に選ばれた生徒の中の一人が攻撃力のない雨に油断していると


「【ファイアーボ、あれ!?でないぞ!?魔力が吸い取られる!」


「マズイ!雪の血は魔力を吸うんだ!このままだと魔力切れで全員やられるぞ!とりあえず雨を防げ!」


司がいち早く気づき皆に叫ぶと各々の防御技で防ごうとする。が、


「おい!どんどん防御も吸われていくぞ!マズイ、接近して早く倒さないと!」


すぐに行動した生徒は自ら貼った結界を解き雪に向かうだがストレスが溜まりに溜まった雪は遠慮がなかった。


「【魔吸の雨】+【形状変化 槍】みんなやられろぉー!」


「ちょ雨が小さな槍になって、、!マズイ魔力の吸収が早くなって、、、!」


すぐにその生徒は結界の外に吹き飛んだ。


それからしばらくして


「やばいな、もう俺しか残ってないぞ?龍の鱗で塞いでたから最小限の魔力しかとられなかったけど鱗からも魔力を吸いやがる。こりゃ全力で詰めるしかないな。」

(脚力強化+龍鱗の脚で今出せる全速か)


「いくぞ、雪!」


司は本来なら足が壊れるほどの強化を施すが龍の鱗で強化したおかげで走れるようになっている。そして、雪まで届く距離まで近づけた。


否、近づいてしまった。


「いらっしゃい♪司!父さん借りるよ!【赤縄地獄】!」


かつて雪が暴走した時秋が使った【黒縄地獄】と似ているこの技は司の体に付着していた血と地面の血を使って完全に司の体を捕縛した。


「あーそのなんだ、すまん、ちょっとお前が強くなったから嬉しくなって調子乗ったんだ、許してくれ。」


「ダメ♪お腹減ったの。イタダキマス!」


そうしてストレスの溜まった雪は司の血を吸ってツヤツヤになるのだった。




後書き

作者です!いやー構想も浮かんでたのに何故か平日じゃないと書く気にならなかったこの状態は一体?

さて、美少女に噛まれるという美味しい思いをしたと思われた司の未来はどっちだ!?




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