第7話 治安維持パトロール部
「何、二体目だと!?」
蓄積された疲労と、その巨大なエネミーの威圧感に足はすくむ。
「でも、やるっきゃねえよな……!!」
『燃やせよ燃やせ、情熱の炎
ほとばしる熱意を全身に滾らせ
あらゆる困難を打ち砕く烈光の双剣
俺は流星火の魔法少女、
再びキューブは展開され、変身する。
『対エネミー戦攻略13ページ
遠距離砲台型エネミー/体長八メートル』
『”弾”属性/鈍足/弾速早/射程狭・長/威力超強
/攻撃周期10秒』
硬い老樹を見分けて盾にしては走り込んで、少しずつエネミーに接近していく。
10秒ごとに撃たれる砲弾は超威力、一度
まともに食らえば大ダメージだ。
トントンと枯れ果てた森の中を駆け抜け、砲弾が撃たれる瞬間に老樹に誘導。
あとこれを、三回ほど繰り返せばいい。
——イメージを創り出せ。
「 創造 」
〈ソード・アクス〉
双剣はぽかぽかと光り輝き斧型に変形する。巨木に切れ込みを入れると、大きな音と砂煙を上げてエネミーの方向に倒れる。
「 創造 」
すぐさま、武器を双剣に持ち替えた。
『”弾”には”斬”が弱点』
倒れた巨木の上に飛び乗り一直線に走り、飛び降りる。高低差を利用した砲弾を空に誘導する作戦———
「何……!?」
砲撃口が拡張した、よく見たら砲台の形がちょっと違う。
「おらあぁぁぁっ!!」
空中で全力で双剣を振り回した。扇状に繰り出される砲撃の衝撃を抑えようとするが、ダメージを抑え切れなかった。
【クロスセイス】
発狂。無心で、巨大の体を削いだ。
「ふう、何とか勝てた。まだまだ検証は必要みたいだな」
『対エネミー戦攻略13ページ追記』
『近距離戦になると銃口が変形し射程範囲が広がる場合がある』
「メモメモっ、と」
日記に追加事項を記入して、ポケットにしまった。
うっすら雲がかかった空に初夏の夕暮れ、家までの帰り道をゆっくり歩いていた。
——すると、近くからどこか聴き覚えのある声が。
「じゃあじゃあ、こんどは鍋パにするー?」
「鍋にするならスルメも入れなさいよね!」
「いいですね! 今日のたこ焼きもすっごく美味しかったです!」
「ほうほう、おぬしわしの隠し味、たこ焼きチーズかまぼこを理解するか、ほほほ」
「なんですか、それ?」
「えー、せっかく紛れ込ませたのに気づいてくれなかったのか〜」
「その、ちーず何ちゃらって端っこにあったやつかなぁ?」
「そうそう、崩れないように固めて置いたんだよー」
「それなら私、全部食べちゃったよー。あのトロっとしてじゅわーっとしたやつでしょ!サイコーだよ」
「お粗末さまであります!」
「えぇ、何なのそれー逆に気になるわ。」
「今年の夏休みは海に行って、花火もしたいね〜!!」
「はい! 夏祭りも行きたいですね〜」
「焼きそばにわたあめ、焼きとうもろこしに……サイコーだね!」
「あんた食べ物ばっかじゃない!」
五人並んで歩く制服姿の女の子たち、それは“治安維持パトロール部”の五人組だった。
“魔法少女ロゼリアル”の主人公たちだ。
背中越しにでも笑い声が聞こえる、五人揃って手を繋いでいる。
「よかった、本当にみんな生きてる……! みんな元気そうだ……!」
気づいたら、頬に涙が垂れていた。
——心地いい、心に響く声。
実際に顔を見たいという気持ちが溢れ出しそうになったが、思いとどまった。
彼女たちは俺のことを知らない、いきなり話しかけられたらビックリするだろう。
「それに俺には、決定的な欠点がある」
それが、もう一つの理由。
コミュ障すぎで、人前に立つと何を話せばいいか分からなくなってしまうからだあああああああああ!!
「絶対、恥ずか死ぬな……」
「相変わらず残念な人だッピねえ……」
「うっせえよ、ポッチ」
魔法少女たちを見守る、影の救世主。俺は今、そういう存在なんだ。
“本物”の声を聞けて、勇気が出た。今は、ただそれだけでいいんだ。
「うおおおおおおおおお!!!」
俺は大声を上げて走り出す。街の道路を抜けめ橋を渡り、階段を一歩一歩踏み締めながら駆け上り、展望台まで全速力で走った。
「俺は絶対に、この手で世界を救う!!」
地平線には赤い太陽が煌めいている。展望台を飛び越す勢いで、拳を天に突き上げた。
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