第6話 対エネミー戦攻略日記
そんなわけで気がついたら、俺はまた
「おばさん、ざるそば一つ」
「はいよ、ざるそばね」
ずるずると音を立ててすすり上げる、やっぱりいい”音”だった。
ポッチから聞いた情報によると”大崩壊”が到来して世界が終焉を迎えるまで、あと一年もないくらいらしい。
だからそれまで俺はエネミーとの戦闘経験積んで、もっと強くならないといけない。
悪い方向から考えると、”大崩壊”が来る前にうっかり俺が死んでしまったらこの計画は水の泡になってしまうということだ。
エネミーの分析を
まあ、何にせよやることは一つだ。
生きて、戦い、勝つ、ただそれだけだ。
「ふう、帰るか」
この街もまだ慣れていないし、ちょっと
ランニングがてら回り道していこうか。
「ここが遊園地、ここが八百屋さん、んでここが公立公園か。橋を渡って、ここが彼女達の学校? ここが神社、階段きついな。で、ここがショッピングモール」
どうやらここが家から一番の近場らしい。
「うーん、ちょっと寄ってくか」
【みたらしアイス三本二百円】
「お、これ見たことあるぞ。日常シーンでよく出てきてたやつだ」
試しに一本100円で購入して、食べてみることにした。
「うまい、なんだこの口溶け。あったかいのと冷たいのが見事に口の中で溶け合ってタレが見事な風味を醸し出してる。そしてこの後を引く香ばしさ、これは納得のおいしさだ」
そんな感じで脳内食レポしながら、とほとほ歩いていた。
そんな中でも街の活気は変わらず、なんの
変哲もない日常の風景を写している。
(この世界が、本当に危機に瀕しているのか。しかし、あの最悪な結末の記憶も本当で実際今もエネミーが現れている。)
でも、今見えてる日常も多分本当だ。
「だから———こんな時くらいは、日常を謳歌しないとな」
……………………………………………………
「あっ、噂をすればお出ましか」
侵攻の周期はどうなっているか分からない、一週間来ないこともあるし、一日に二連続出現したこともある。予測困難だ。
一面の景色は木々に覆われ、結界の外側からはエネミーが現れた。
「ええっと」
『対エネミー戦攻略11ページ』
『スピード接近タイプ』
まずは、乱弾を見切る。
(よし、分かるぞ)
『素早く駆動する6本足が厄介、属性は“速”の小型虫系エネミー』
「 創造 」
打ち込まれる粘着液、素早い足は止まる。
「せい!!」
エネミーが粘着液に絡め取られ止まったところを双剣を全身のバネを使って振るうと、双剣の刃は硬い攻殻を貫通した。
『イメージさえすれば何でも生み出せる』
——固定観念を捨てろ。
「 創造 」
「ブーメランだ」
『このエネミーは瀕死になると自爆する』
「とりゃあ!!」
体内を貫通したままの状態でブーメランに変形させ、地平線に向かって投げつけた。
その直後、遠くの空で花火が上がった。
「キャッチ」
俺のロゼリオは”創造”の能力。この力は武器以外にも爆弾や毒薬、火炎に水泡など何でも生み出せる。
だが、同時に扱うのはかなり難しくて今でも二つ同時に”創造”を使用することですら成功確率10%くらいの感覚だ。
『対エネミー戦攻略』
これは、俺が”日記”につけ始めたエネミーの攻略本(自分用)だ。
エネミーの見た目や属性、弱点や注意点。
備考では状態異常付与が可能かどうかの分析がなされている。
予防線を増やして、敗北パターンを徹底的に除去していくんだ。
「まだなんかうるさくないッピか?」
「あれ、確かに言われてみれば……!」
まだ、結界の景色は戻っていなかった。
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