第5話 “創造”のロゼリオ
——それから数日が経ち。
『対エネミー戦攻略8ページ
球形の黒い敵/体長四メートル』
『ホイール持ち/時速約百キロ/遠距離攻撃手段なし/中硬度/対面△/直線動作』
シュインと高速なホイールの音を鳴らして、小型エネミーは向かってくる。
「早い……来るっ!」
まずは、身体慣らしがてらの回避。
「 創造 」
次は敵が向かってくる方向に地雷を撒く、エネミーはそれでも走るのをやめない。
態勢を立て直し、爆発の煙から出てきた敵の攻撃を避け。
(アニメの戦闘シーンを思い出せ、アニメの主人公みたいに勇敢かつ勇猛に戦うんだ!)
「はあっ!!」
双剣の一振りは地面をえぐり、目の前の地層はぐいっと
「ほら、飛んでけや!!」
——シュィィィィィィン!
「……はあ、まだか。じゃあ、こんな攻撃ならどうかな」
向かってくる敵に双剣を投げつける、その図体には一本の剣が突き刺さった。
「とりゃあ!!」
エネミーが再びこちらに向かってくるタイミングを見計らい、刺さった双剣の柄の部分を全力で蹴った。
——シュォォォォォン。
小型エネミーは、ボロボロに崩れ去った。
「よっしゃ」
上手くいっている、不思議なほどに上手くいっている。あれからエネミーが結界に侵入してくる度に相手をしているが、まるで俺の体じゃないように動いてくれるんだ。
「……うん、帰るか」
俺の家は街の近郊のアパート、親族親戚とも縁がないということだ。
アニメの記憶ではこの街のどこかには魔法少女を統治するための組織があり、エネミーとの戦闘をさせる代わりに資金提供がなされるという仕組みになっているはずだ。
その本拠地についてはアニメ内で描写がなかったから分からない、そのうえ連絡手段までないときたら、たまったもんじゃない。
アニメでも、よく組織の白服が魔法少女たちに戦いを強制していた。
全く虫がいい話だ、だが彼らもセンスを持った人に頼るしかないのだろうか。
そうと分かっていても、組織のあの無慈悲さには———
俺は、その愚行を画面の外からただ眺めていることしかできなかった。
でも、今ならいくらでも干渉できる。
幸いまだ彼女たちは魔法少女化していない、今は“時系列的にアニメ1話以前”らしい
これはきっと神が与えてくれたチャンスだ、絶対に逃したりしない。
「しっかし、小道具とか武器調達しないとな。闘騎士は自然治癒は早いが、捨て身でやっていたら体がもたないぞ本当」
「何言ってるッピ、おまえには”ロゼリオ”があるだろうが、ッピ!!」
「……ああ、ポッチか」
この白くて立派な耳をつけた生物はポッチ。ぷわぷわと飛ぶ、高性能のぬいぐるみだ。
こいつが言うことによると、ポッチは俺のロゼリオに宿った妖精なのだという。
確か”ロゼリアル”の主人公である
「そういえば説明してませんでしたね。ロゼリオというのは、各魔法少女ごとにそれぞれ備わったキューブ内の武器のことだッピ」
まあ、俺はアニメを観たから知ってるが。
「ロゼリオは魔法少女それぞれの信念の形に応じて形成される、いわばその人個人の魂の形を型取ったものだと言えるんだッピ」
「ほう、そんな設定もあったのか」
「ちなみにい、あなたのロゼリオは”創造”だッピよ!」
「創造……? じゃあ、なぜあの時双剣が出たんだ?」
「創造というのは、イメージしたものならどんな武器でも生み出せるという力だッピ」
「あの時あなたの手に双剣が握られたのは、頭の中でその形を強くイメージしたからだと思われるッピ」
「……そうなのか、てっきり俺のロゼリオは双剣だと思ってたよ」
「創造はその名の通り”創り出す”力、”イメージさえできれば”何でも生み出すことが出来るんだッピ」
創造、確かに俺にぴったりな能力だな。
“何か一つを選ぶことができない”、“一つに集中することができない”
うん、やっぱりピッタリだ。
「そんなことより、その——ッピってのはどうにかならないのか?」
「ピー! これは天命だッピ! お前も人間だからうんッピーするだろッピ? それと同じくらい当たり前のことなんだッピ!」
「お、おう……」
(見た目のキュートさに反して残念な感じだが、驚くべきことに悪意は感じられない。とりあえず放っておこうか、もし本当に困った時はこいつを頼りにしよう。)
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