四章 はじめて、兄妹らしく……
赤葉に戻ると、森也はさくらに言った。
「家に戻る前にちょっと付き合ってくれ。いくつか回っておく場所がある」
そう言って森也は車を運転していくつかの家を巡った。それはどこも、ひとり暮らしの高齢者の家だった。声をかけ、様子を確認し、困ったことがないかどうか質問する。さくらが驚いたことにそのときの森也の態度ときたら優しい歩笑みなど浮かべて、言葉使いも親しみいっぱい。何とも『親切な好青年』といった印象だった。この姿を見て、幼稚園時代、意地悪されても何も言えず、泣くことしかできなかった子供だったとは誰も思わないだろう。小さい頃から社交的で明るい性格だったと誰もが思うだろう。それぐらい、愛想がよくて打ち解けた印象だった。
「兄さん、あんな愛想よく振る舞えるのね」
さくらは意外なのと、驚くのと、感心するのとを同時にやってのけながら口にした。
「まあ、必要とあればな」
そう答えた森也の口調ときたらついさっきまでの愛想もどこへやら、例によって素っ気なく、事務的なものになっていた。この辺り『やっぱり藍条森也は藍条森也』という感じで、ある意味ホッとするのだが、
――だったら、あたしにももうちょっと愛想よくしてくれてもいいのに。
と、さくらはちょっと頬をふくらませた。さくら自身は気がついていなかったが、そんな風に不満をもてるようになったあたり、かなり余裕が出てきていた。一緒に学校見学をすることで、ようやく打ち解けたのだろう。『親の再婚で兄妹になって三日目』から『五歳の頃に兄妹になって、それから一〇年一緒に暮らしてきた』という程度の感じにはなっている。
森也は行く先々でひとり暮らしのお年寄りに歓迎されたわけだが、それ以上に気に入られたのがさくらだった。まるで、可愛い孫が久しぶりに訪れたような態度で歓迎され、行く先々で野菜やら菓子やらを渡された。おかげでバーゲン帰りみたいな大荷物を運ぶ羽目になった。
「……なんか、すごいわね」
「ただでさえ田舎で人が少ない。加えて歳をとったせいで外出もままならない。と言うわけで、客がきてくれるのが一番の楽しみというわけだ。まして、一〇代の女子なんてここにはほとんどいないからな。みんな、喜ぶさ」
「あんな風に歓迎されるなんて思わなかった。田舎の人ってよそ者をきらうって聞いてたけど」
「最近はそうでもない。何しろ、自分は歳をとる、若い人間は出て行く、子供はいなくなる……で、放っておいたら絶滅するのがわかっているからな。とにかく『人にきてほしい』というのが願いだから歓迎するようになっている」
「ふうん。そうなんだ」
「まあ、おれの場合、マンガ家という特殊な立場だったのも大きいな。イベント用のチラシやポスターの作成、頼まれて小学校で美術教師の真似事なんかをしたりもしているからな。この地域にとって『必要な存在』になれたことは大きい」
「美術教師の真似事? 子供たちに絵の描き方とか教えてるってこと?」
人付き合いなんて苦手だったはずなのに。
さくらはそう思った。森也は妹の内心を察したように言葉をつづけた。
「まあな。おれが学校で何かを教えるなんて変な気分だが、地域に溶け込んで暮らしていくためにはやはり、地域に貢献することが必要だからな。おれが学校に行かなかったのは学校に行く必要性がまったく感じられなかったというにも理由のひとつだ。いまだって学校に通う意義なんて何ひとつ感じられない。学習なんてひとりでいくらでもできるし、『社会性を育む』というなら似たり寄ったりの同年代ばかりを集めた場所にいるより、色々な立場の、色々な世代の人間のなかでもまれた方がいいに決まっている。ほんと、後悔しているよ。何で、学校制度なんぞに適応しようとしてあがいていたのか。すっぱり割り切ってひとりで思う存分学べていたら、おれはいまの三倍ぐらいは成長できていた。まったく、無駄な時間を過ごしたよ。
だが、ここではちがう。ひとり暮らしの年寄りのところに顔を見せるのも、草刈りや用水路の整備に加わるのも、子供たちに絵を教えるのもすべて、ここで暮らしていくのに必要なことだ。必要なことならやるさ」
そう言う兄の横顔を、さくらはジッと見つめていた。
「それにまあ、人の数そのものが少ないから付き合うと言ってもたかが知れてるし。七面倒な飲み会とかはマンガ家ならではの魔法の言葉で断れるからな」
「なにそれ?」
「〆切ヤバいので」
さくらは腹を抱えて笑い転げた。
家についてもらい物の山を置くと、森也はさくらを連れて畑に向かった。一〇アールばかりの小さい畑はいま、夏野菜が真っ盛り。トマト、キュウリ、ナス、オクラ、トウモロコシと言った家庭菜園の花形に加え、スイカやメロンなど高級フルーツまで実っていてなんとも華やかな印象。見ただけでお腹が減り、涎が出てきそうな風景だった。
「好きな野菜を適当に採れ。夕食のネタにする」
「何でも採っていいの?」。
「ああ。スイカでも、メロンでも、なんでも遠慮なく採れ。ただし、食える範囲でな」」
「でも、いろんなものがいっぱいあって、何を採ればいいのか……」
さくらは畑に入ると辺りをキョロキョロ見回した。色とりどりの野菜と果物に囲まれて何をどれだけ採ったらいいのか見当も付かない。
「あ、ねえ。このモサモサしたのは何?」
「アスパラガス」
「えっ? アスパラって言ったらあれでしょ? ツクシを大きくしたみたいなやつ……」
「それはまだ若いうちだ。あれが大きくなると葉が伸びて大きな草になる」
「へえ、そうなんだ。知らなかった。あ、この黄色くて大きいのは?」
「キュウリ」
「キュウリ⁉ だって、キュウリって緑で細くて……」
「あれも若いうちだ。成長すると瓜みたいにデカくなって黄色くなる。種採り用に成熟させているやつだが、黄色くなったキュウリは緑のキュウリとちがって何と言うかこう、水を食べているようで、それでいて水っぽくない独特の食感と味わいでなかなかうまい」
「水を食べているみたいで水っぽくない?」
さくらは小首をかしげた。
「何だか、よくわからないんだけど」
「まあ、実際に食べてみないとわからないだろうな。気になるなら食べてみるといい」
「うん」
町育ちでスーパーで売っている規格品の野菜しか知らないさくらにとって、畑で見る生きた野菜はどれもこれもめずらしいものばかり。森也にあれこれ教わりながら試食したり、収穫したりしていく。でも、一番気になったのは畑にある不思議なもの。森也の畑の特徴は腰までもある極端な高畝だがもうひとつ、普通の畑には存在しないものがある。畝と畝の間に張り巡らされたアーチ状の支柱だ。そのアーチが畝の端から端まで一定間隔でズラリと並び、そこに果菜類やフルーツの茎が伸ばされ、あたかも緑のトンネルと化している。おかげでスイカやメロン、パッションフルーツ、まだ熟す前のブドウなど様々なフルーツがぶら下がり、果物の空中王国のなかを歩いているかのよう。
「わあ、すごい。何でもある。でも、何でこんなトンネルみたいになってるの? 小学校の頃、校外学習で連れて行かれた畑にはこんなのなかったけど?」
「日除けだ」
「日除け?」
「夏の盛りに直射日光を浴びながら作業するのはつらいからな。と言って、屋根をかけたら金もかかれば、維持管理の手間もかかる。そこで、緑のカーテンに習って緑のトンネルを作ることにした。これなら畑に降り注ぐ日光を無駄なく利用できるし、繁った茎葉が日光を遮ってくれる。おまけに葉の蒸散作用でけっこう涼しい」
「へえ」
言われてみればなるほど。トンネルのなかは外より涼しい気がする。
「それに、ほら」
と、森也は手頃なパッションフルーツの実を手にとって渡してくれた。
「おれの身長に合わせた高さの天井からぶら下がっているから作業がしやすい。とくに、腰を曲げることなくまっすぐ歩きながら収穫できるのは、体への負担が少なくて楽だからな」
「なるほど」
さくらは思わず感心してうなずいた。農業なんていまのいままで何の関心もなかったけど、色々と工夫があるわけだ。
野菜の収穫が終わると、森也は今度はさくらに長い柄のついた網を手渡した。
「……なに、これ?」
「網だ」
「網はわかるんだけど……」
「魚獲りだ。田んぼのなかに魚を放してある」
「えっ? えっ?」
突然のことに戸惑うさくらを置いてきぼりにして、森也はズンズン田んぼに進んでいく。靴と靴下を脱いで田んぼのなかに入り込み、網を振るって魚をすくいはじめる。
「ちょっ、ちょっと……!」
さくらもあわてて後を追った。まさか、こんな展開になるとは想像もしていなかった。田んぼの脇で入るのを躊躇したが、森也は無視して魚を追っている。
――ええと……いつまでもこうして立っているわけにはいかないよね、やっぱり。
さくらは戸惑いながらも覚悟を決めた。靴と靴下を脱いで恐るおそる田んぼのなかに入っていく。
――うわっ……。
一歩、踏み込んだ途端――。
さくらは心のなかで悲鳴とも怖気ともとれない声をあげた。田んぼのなかは一面泥。その泥に足が入り込み、ひんやりした感触が足を包み込む。
――うわっ。泥のなかってこんななんだ。
田んぼのなかに入ったのはもちろん、泥のなかを歩いたこともこれがはじめて。ひんやりとした感触が気色悪いような、逆に心地よいような不思議な気分。とりあえず、網の柄を両手にもってよちよちと進んでみる。歩くごとに泥のなかに足が沈む。泥のなかから足を引っ張り出すにも力がいる。とにかく歩きづらい。気を抜いたら倒れてしまいそう。それでもなんとか両足を踏ん張り、田んぼのなかに仁王立ち。水のなかを見てみる。するとそこにはたしかに大小様々な魚が泳いでいた。
「この魚、飼ってるの?」
「食用にな。田んぼの水は栄養豊富で食い物も多いから、放っておけば勝手に育つ」
言いつつ森也はそっと水のなかをくぐらせた網で魚をすくい上げた。網のなかで日の光を浴びて銀色に光る魚体がビチビチと跳ねている。
――よしっ。
と、覚悟を決めてさくらも網を水のなかにもぐり込ませた。あれならなんとかできそうだ。森也を真似て魚を追う。ところが――。
「捕れないんだけど……」
魚のすばしっこさときたら予想外。網を近づけるとすぐに気付いて逃げてしまう。その瞬発力ときたら尻尾からジェットでも吹き出しているのかと思うほど。あっという間に見失い、あちこちキョロキョロする始末。追いかけようにも下は泥。足をとられて満足に歩けない。それどころか右を見たり、左を見たりの繰り返しで体が不安定になり倒れてしまいそう。年ごろの女の子としては少々はしたない、がに股姿勢になってしまう。
「がんばって捕れよ。でないと、食うものないからな」
と、こちらはさっさと捕り終えた森也が網のなかでビチビチ跳ねる魚を担ぎ、田んぼから上がっていく。
――もうっ! あたしはこんなのはじめてなんだから手伝ってくれてもいいじゃない!
さくらは憤然として頬をふくらませた。そもそも、こんなことをするためにきたわけではないのである。それでも、どうにかこうにか苦労を重ね、まるまると太ったフナを一匹、捕まえた。苦労した分、捕まえた喜びも大きい。網のなかでビチビチ跳ねるフナを見てさくらは満面の笑顔となった。『どうだ!』とばかりに森也のところにもっていく。
「お疲れさん」
と、森也がタオルを手渡してくれた。ねぎらいのやさしい笑顔を添えて。
――ちょ、ちょっと! いきなりそれは反則でしょ。
突然、やさしい笑顔で迎えられ、さくらはドギマギしてしまった。
ともかく、タオルを受け取り、足を洗って靴下と靴を履いた。
その間に森也はバーベキュー台に火をおこし、慣れた手つきで魚をさばいていた。さっきまで生きて動いていた魚がたちまち腹を割かれ、内臓を抜かれ、バーベキュー用の食材にかわっていく。まるで、魔法でも見ているかのような鮮やかさだった。
「兄さん、魚なんてさばけるんだ」
「こっちにきてから覚えた」
バーベキュー台の上に魚やら先ほど採った野菜、ソーセージやらが並べられ、ジュウジュウと音を立てている。卵を割ってパカンと落とすとたちまち目玉焼きが出来上がる。辺り一面に立ちこめる匂いのおいしそうなこと!
さくらは思わず生唾を飲み込んでいた。
「なんか……すごいね。庭でバーベキューができるなんて」
「田舎暮らしの特権だな」
森也はそう言いながら焼き上がった魚やソーセージを皿に盛り、手渡してくれた。さくらは礼を言って受け取ると、一口かじった。その途端、
「おいしい!」
思いきり、破顔した。さすが採れたて新鮮素材。都会のスーパーで買う品とはイキがちがう。身はプリプリしているし、味はしっかり濃厚だし、それでいて全然くどくない。体重のことなんか忘れて次からつぎへと食べ尽くしてしまうぐらいおいしかった。
まわりは一面の畑。遠くに見えるは美しい棚田風景。さらに、その向こうには奥深い山々。足元では元気よくニワトリたちが駆けまわる。美しくも雄大な自然のなか、誰はばかることなくバーベキュー三昧。もうその言葉だけで格別の満足度。それをいま、実際に体験しているのだ。胸がいっぱいになるさくらだった。
「なんか、これってすごい贅沢な気分」
「まあ、町ではできないよな」
言われてさくらはちょっと腹が立ってきた。いったい、どんな生活を送っているのかとずっと心配していたのに、妹を放っぽりだして、ひとりでこんな楽しい暮らしを作りあげていたなんて。
――こんな暮らしをしてるなら、たまには妹を呼ぶぐらいしてもいいじゃない。
そう思い、新鮮な魚の身に負けないぐらいプリプリと腹を立てるさくらだった。
腹いっぱいバーベキューを堪能したあとは、バーベキューの暗黒面である後片付け。森也とふたり、キッチンで並んで皿洗い。油でギトギトの皿を洗うのは面倒だったけど、こうして兄妹で一緒に何かするなんてはじめてのこと。さくらは何だか心がときめくのを感じた。
洗い物を終えたあとは食後のお茶。メントールの刺激が心地よい『世界三大紅茶』のひとつ、ウバ茶が振る舞われ、さくらは人心地ついた。
「……おいしい」
深い深紅に輝く液体を一口飲んで、さくらは思わずつぶやいた。
「なんか、ここの生活ってすごい楽しそうね。あたしも体験してみたくなった」
「ここに住むことになればいやでも体験できるさ」
森也のその言葉に――。
さくらの心臓は飛びあがった。
「あたし、ここに住んでいいの」
「兄妹だしな。お前が望むならかまわないさ」
「でも、兄さんはあたしのこと……」
恨んでるんじゃ……。
その一言はさすがに口に出して言うことはできなかった。
さくらは両手をひざの上に置いてうつむいた。華奢な体がよけい縮こまっている。森也はそんなさくらの姿を見て視線をそらした。ポリポリと頬などかいてみる。何やら言いたそうに口を開いてまた閉じる。そんなことをしばらく繰り返した。ようやく覚悟を決めたように言葉を発した。
「……お前に勘違いさせたのはおれのせいだ。すまない。だが、おれはお前のことを憎んだり、恨んだりしてはいない。もちろん、きらってもいない」
「でも……」
「ただ、恥ずかしかっただけだ」
「恥ずかしかった?」
思いがけない一言にさくらは目をパクリさせた。
森也はまたも言いづらそうに口もとをモゴモゴさせた。何か怒ったような表情で頬のあたりが赤くなっている。そして、ようやくのことで言った。
「兄でありながら兄らしいことは何もできない。人並みの生活なんて何もできない。妹の前でそんな姿をさらすのが恥ずかしくてお前の前に立てなかった。憎んだり、きらったりしていたわけじゃない」
「兄さん……あたしが重荷だったの?」
さくらはそう言ってギュッと体をちぢ込ませた。そんなさくらを見て森也はまっすぐ視線を向けた。
「あのな、さくら。おれの目的はおれ自身の価値を証明することだった。毎日まいにち説教されて、殴られて、布団蒸しにされて、殺される思いをして……そのなかで思っていたのは『おれが悪いんじゃない、おれがまちがっているんじゃない、悪いのは連中のほうだ、まちがっているのはあいつらのほうだ』ということだった。。おれはそれを証明したかった。それだけが、おれが人生で望んだ唯一のことだ」
「兄さん……」
「だから、おれはひとりでできる仕事に就こうとした。学校を経ずに自立できればおれがまちがっていたのではないと証明できる、おれに対する親や世間の扱いこそが不当だったのだと証明できる。そう思ってな。だから、ひとりでできることは何でもやったよ。マンガ、イラスト、小説、作詞、デザイン、絵画に至るまで、とにかく、挑戦できるものはなんでもやって応募しつづけた。どれも、ダメ。いくらやっても、何ひとつ評価されない。
『おれは自分の価値を証明することもできないのか』
そう思って夜中にひとりで泣いたことが何度あることか。何をすればいいのかもわからなかった。何もかもいやになり、放り出したくなったことも何度もある。そのたびに浮かんだのがお前の顔だ」
「あたしの?」
森也は淡々と話をしているように見える。しかし、その実、極度に緊張していた。テーブルに隠れた足はこまかく震えている。ここで話している内容が昨日、徹夜して繰り返したシミュレーションの結果であることをさくらは知らない。
「そう。このままズルズルと歳を重ねていけばますますお前に軽蔑されることになる。それが怖かった。だから、必死につづけた。そして、どうにかマンガ家としてデビューを果たし、とにもかくにも自分の稼ぎで暮らしていられる。お前がいてくれたからいまのおれがある。もし、お前がいなければとうの昔にすべてをあきらめ、いまだにニートの引きこもりだった。だから――」
森也は言った。
「お前には感謝している。ありがとう」
森也はそう言って頭をさげた。
「……兄さん」
さくらはうつむいた。ギュッと両拳を握りしめた。
「あたしは……あたしは、兄さんのこと、一度だって恥ずかしいとか、そんなふうに思ったことない。それどころか、あたしにとって兄さんは英雄だった。兄さんはどんな目にあっても自分を曲げなかった。屈しなかった。あたしなんて親に怒られるのが怖くて優等生やってただけ。でも、兄さんはあくまで親に抵抗して自分の力で人生を切り開いた。そんな兄さんがいてくれたから、あたしも自力で生きていけると思えた。兄さんはすごいと思う。あたし、兄さんのこと……尊敬してる」
さくらは立ちあがった。顔が耳まで赤く染まっている。体ごと頭をさげた。
「今日は本当にありがとう。学校見学に付き合ってくれて。あと、バーベキューとってもおいしかった! これで帰る。バスで行くから」
さくらはそれだけを言うと、まるで逃げるような勢いで森也の家を出て行った。
森也も後を追おうとはしなかった。
ふう、と、ひとり残された森也はテーブルの上に両肘をついてため息をついた。
「……やっと、兄妹らしいことができたな」
自分でも信じられないことに――。
涙があふれ出してきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます