第18話 雨は血生臭くて涙が出る
昼ごはんを食べ終わり、仕事に戻った。
白桜は氷を水に変えてそして雨にする、そういう魔法を仮面を付けてリハーサルした。
秋は氷を渡す係だった。
今度は失敗せずにスムーズに出来たのだった。
リハーサルが終わり、少し時間が出来たので白桜さんは秋に自分の話をし始めた。
『秋、雨は突然降ったり、現世では夏になる前に降るらしい。それを梅雨というらしい。私は昔は人間だった。今は魔法使いだが、人間だった頃に雨は嫌いだった』
秋は首を傾げて言った。
『何故雨が嫌いなんですか。僕は雨を浴びてびしょ濡れになるのが好きでした。親には雨が降るたびにびしょ濡れになってしまうので、怒られてしまいましたが、好きでした』
白桜さんは言った。
『私は昔付き合っていた彼女が通り魔によって殺されてしまったんだ。その日は丁度雨でね。雨の匂いと血が入り混じってその後に涙が流れたんだ。私は彼女の血を止めようと必死になって彼女のお腹を止血したけど、血は止まらなかった。彼女を安全な場所へ運ぼうとしている時に、後ろから来たその通り魔に私も刺されてしまい、気づいたら私の背中から血が流れていた。あの時の通り魔の顔は忘れもしない。彼女の最後の言葉は『ゆきと...くん』だった。もし、あの雨の日に彼女と歩いていなかったら、今は現世で生きていたのかなって考えるんだ』
白桜さんは悲しそうな顔をしていた。
そんな白桜さんに秋は言った。
『白桜さんはその通り魔に殺されて転生されて来たんですか?』
白桜は秋に手をバツにして言った。
『それが気づいたら私は病院のベッドに居たんだ。でも、彼女は亡くなってしまった。その通り魔は今は逮捕されて刑務所にいるよ。私がここに転生したのは、その後だったかな。彼女を亡くして生きている意味が分からなくて死のうと思ったが死にきれなくてね。その結果、彼女にもう一度会いたくて、あの電話ボックスに頼ったんだ。そこで、彼女のメッセージを聞いて私は転生したんだ。私が転生してた頃は秋くんのように名前を変わらず保つ事ができなくてね。名前も顔も違う人に転生したんだ。『ゆきと』という名前も顔も違う、白桜になったんだ。彼女は私にあった時、最初は私だと気づいてもらえなかった。でも、どんなに顔や名前が変わろうと声だけは変わらなかった。だから、彼女は私だと分かってくれた。彼女と再会してその後まさか仮面サーカス団に入るとは思わなかったけどね』
秋はその話を聞いて言った。
『白桜さんもまさか転生組の人だったんですね。あの世の住人だと思っていました』
白桜さんは笑って言った。
『このサーカス団がまだ団員がいっぱい居た頃によくあの世の住人だろって言われてたよ』
秋は驚いたように言った。
『えっ⁉︎このサーカス団って団員さんいっぱい居た時期があったんですか?』
白桜さんは頷き言った。
『いっぱいというか30人前後は居たと思うよ。それが見習いが多すぎて、上手く魔法使いが魔法使いを育てられなくて、辞める人が続出しちゃって、残った見習いが私と駿太で魔法使いは礼夢しか残らなかった。だから、仮面サーカス団の事を知っている人からすると、あの団体は廃れたなって言う人もいるよ』
秋は仮面サーカス団の昔をもっと知りたくなったのだった。
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