第12話 魔法の意味を知らなすぎた

白桜さんは夜まで泣いていた僕の腫れぼったい顔を見て言った。

『泣きすぎだ。悲しい時にとっとかないと泣くことを忘れてしまうよ』

白桜さんは僕が時計を壊してしまったことに対して、何も言わなかった。

その代わり白桜さんは仮面を渡して言った。

『昨日は中止だったイベントを今日、やることになったから、準備してくれるかい?』

僕は仮面を掴んで不安な表情をしていると、白桜さんは僕の肩を掴んで言った。

『大丈夫だ。同じ失敗は繰り返さないと自分の中で決めただろう。それならきっと今日は上手く行く。それより今日は山の下を下った街に行かなくていいのかい?』

僕は下を見て言った。

『上手く行くようにやってみます。街にはもう行かないです。昨夜が怖すぎて、また同じことが起きたら今度こそ帰って来れなくなるから』

白桜さんはクスッと笑って言った。

『街...怖かったか?私も最初は浮かれて君と同じ事をした。怖かったよ。ただ街によってだと思うけど、優しく迎え入れてくれるところもあるんだよ。ただ、今回は私らは見世物に近いと思う。この街の人たちは魔法というものを知らない。未知のものなんだよ。だから、私らを見たら基本は湖に持ち込んでかっぱ人かどうか確かめるんだ。私もよくそこで溺れかけたよ。でも、懸命に逃げたよ。でも、怖い思いをしてもツアーは続く。次に来た時に、この街が怖かった事を思い出して嫌になると思う。でも、みんながみんな怖い人とは限らないからね。それだけは理解してね』

僕は言った。

『でも、時計を壊してしまいました。どうしたらいいんですか?』

白桜さんは高らかに笑って言った。

『まだ、気づいていないのかい。確かに君は人間だし、転生しても人間だった。でも、このサーカス団はなんだと思う?仮面サーカス団だ。つまりは、魔法を使ってなんでもできる。私も今は仮面がなくても魔法を使うことができる。だから、魔法で時計も直せることが出来るんだ。謝らなくてもいいんだよ。魔法があればなんだって出来るんだから』

秋は魔法の素晴らしさを知った瞬間でした。


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