第11話 かっぱ湖の街での出来事

窓から見える大きな湖はとても見たことない湖だった。

そんな秋の姿に寝ぼけて起きた白桜は言った。

『もう着いたのか。今回のイベント場所はかっぱ湖か。秋にとっては初めてづくしだよな。一応説明しとくと、かっぱ湖はその名の通り頭にお皿を乗せた人たちがいる。みんな優しくて良い人ばかりだよ。ただ夜はこのサーカス団を出るな。お前みたいな魔法を扱えないものはかっぱに食われるからな。そうだ、これやるよ』

そう言って、白桜からかっぱの皿が書かれた時計をくれた。

白桜が言った。

『それがあれば、夜になっても擬似かっぱになれるから。でも、外したらお前の命はないと思え』

怖いことを言う白桜を見て言った。

『外でてもいいですか。勿論時計は付けますから』

白桜は笑いながら言った。

『勿論、いいぞ。それとかっぱ紙幣を持っていけ。これはこの街のお金だから。サーカスが始まる夕方には帰ってこいよ。夜は危ないからな』

僕はハイ。と言い、手を横に掲げてブーンと声を上げて湖の街めがけて走った。

初めてのサーカスツアーで僕は浮かれていた。

周りはみんな頭にお皿をつけた人ばかりだった。

僕とあまり変わらない女の子と男の子がボールで遊んでいた。

僕は声をかけた。

『こんにちは。僕も一緒に遊んでも良い?』

そう聞くと男の子は言った。

『いいけど...』

女の子もうん。と頷いた。

僕らはボールで遊んだ。

2時間くらい経った頃、男の子も女の子もそろそろ帰ると言い出した。

男の子は言った。

『お前、面白い。また、明日遊ぼうぜ』

僕はうん。と言ったが、いつまでこの街に居られるかも分からなかった。

曖昧な返事をして明日来られなかったら嫌だなとも思った。

楽しい時間というのはすぐ終わってしまうのだなと悲しくなった。

時計を見るともう夕方だった。

僕は慌てて、仮面サーカス団へと向かった。

道で僕は転んでしまった。

すると、時計にヒビが入り中からかっぱのお皿が出てきてしまった。

すると、周りは僕をじっと見て言った。

『かっぱではないお前は誰だ』

周りは僕の手を掴み、湖へ連れて行こうとする。僕は必死に手を離した。

腕には掴み掛かってきた時に跡がついた。

僕は水が出てくる右腕にしていた時計の水を必死に止めようと左腕で右腕をずっと抑えながら、山の上にあるサーカス団がある所まで登った。

掴み掛かってきた時の記憶が蘇り、早く早く白桜さんに会いたいとさえ思った。

サーカス団に着き、白桜さんのいる部屋に戻った僕を白桜さんは大丈夫かと声をかけてきた。

そこからの記憶はほとんどない。

後で聞いたが、僕はずっと時計を壊してごめんなさいと言っていたり、ずっと怖かったと言っていたらしい。

白桜さんはそっと僕の手を握って、僕が目覚めるのを待っていた。

玉田団長は秋に時計を持たせたことで怖い目に遭ったがそれも経験だと言っていたらしい。

今日の魔術イベントは中止になった。

白桜さんは、僕が目覚めてから中止になったのは、僕のせいではないとずっと言ってくれた。

僕はその日から山を下ってかっぱ湖の近くの街へ行くことは無くなった。

結局、一緒に遊んでくれた子達との約束さえ守れなかった。

楽しさよりも怖さのほうが勝ってしまい、僕は本当にビビリだなって自覚した。

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