第8話 秋の父の後悔
秋からの電話に秋の父は後悔した。
彼は父親として秋のそばにいてあげなかったこと、秋をちゃんと見てあげれなかったこと、悔やみきれない事はいっぱいあった。
秋は私が思っているほどもう大人になっていたことにも驚いた。
秋に言われたひと言ひと言が秋の父に刺さったのだった。
もっと近くで秋を見ていたのに、秋が孤立していたことも分からなかった。
秋が自分の手を離れて行ってしまうのに、何も言えない自分を責めた。
全部、秋の何もかもを壊してしまったと父は後悔して男泣きした。
秋からの電話に嬉しくも悲しくもなってしまい、秋の父親の中で秋という存在がいた時間がいなくなってから止まってしまった。
彼は再婚した相手と暮らしていたが、秋からの電話の後、彼ら2人は言葉を交わす事がなくなり、冷えきった家族関係になってしまった。
父は夜になると決まって噂のある電話ボックスに行き、秋に繋がると信じて電話をかける。
繋がらないと分かっていても、何度も何度もボタンを押して10円玉を入れる。
秋の父は必死に電話口で『秋...あき』と呼びかけるのだった。
秋の父はその場に倒れ込み、電話ボックスの中で天を仰ぐ。
秋の父は電話ボックスの中で体育座りして言う。
『こんなの嫌だ。秋、帰ってきてくれよ。お前が居ないと家族が成立しないんだ。なあ、秋お前は今どこにいるんだ』
どこにも存在しない秋に独り言のように言う秋の父はとても寂しそうだった。
秋の父は夜遅くに家に帰ってきて、寝床につく時も涙ばかりが枕を濡らす。
そんな姿を妻は見て、そっと彼の背中をさする。
彼の姿を見て、初めて息子に酷いことを言っていたことを妻は悔やんでいた。
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