第4話 転生しても自分だった
どのくらい目をつぶっていたのだろうか。
気がつくとここは夢ではないと手で頰を摘んで分かった。
よく言う三途の川というのだろうか。それが目の前にあった。
向こうから船に乗って男の人が来た。
彼はにっこり笑って言った。
『お久しぶりです。空我です。電話で話した、覚えてますか?』
僕は苦笑いで言った。
『ごめんなさい、覚えていないです』
空我はしょうがないですよと言って、船へと手招きした。
僕は戸惑いながら船に乗った。
彼は船の中で言った。
『あなたに言っておかなければいけないことがあります。この世とあの世は身近に誰か死んだ人間がいなければ、あの世とこの世は繋がることができません。あなたとあなたの母親は繋がっていました。でも、あなたの父親は繋がりが薄かった、だから繋がれませんでした。それから、この世の人間をあの世に繋げるためにあなたはこの世で死に、あの世で生を受けました。
つまりは転生しました。そしてあなたはここでは秋と名乗ってください。あの世では苗字は上の者でしか使えませんから』
秋は言った。
『転生しても自分になれるって不思議ですね。普通は転生したら知らない誰かなのに。面白いですね』
空我はそれが普通ですからとポツリと言った。
船を動かす船頭がもうすぐあの世橋に着きますよと言った。
うっすら見えたのは人だかりだった。
秋は空我に尋ねた。
『あの人だかりはなんですか』
空我は答えた。
『あれはあの世相談に届けるメッセージを届ける電話ボックスです。あなたに届けたメッセージも全部あそこから届けた郵便でした。ほとんどの人はメッセージを聞き、こちらに転生してきます。あなたもそうだったようにこの世では行方不明者扱いですがね』
岸に着いた段階で向こうのこの世にはもう行けそうにないと秋は悟ったのだった。
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