12 幕間~幼馴染、転落の始まり~

「な、何なの!? あの両親!!」


 一方その頃、幼馴染である桂川かつらがわ 彼方かなたを振った羽田はねだ 亜里沙ありさは、友人である葛埼くずさき 千冬ちふゆと共に公園で黄昏れていた。


「イケメンの悪山くんと付き合うのを認めないばかりか、栃西の入学を取り消しただけでなく家を追放かつ絶縁するなんて!」


「千冬ちゃん……」


 激昂する千冬を見つつ、両親から追放そして絶縁を言い渡された事に落胆する亜里沙。

 なお、悪山はこの件を受けてひとまずある準備の為に一時別れた。

 すぐに亜里沙の元に戻るとは言っていたが、色々と不安が頭をよぎってしまう。


「私、どうすれば……」


「二度と家に帰って来るなと言われたからには、今日はあたしの家で泊ってもらうしかないわね。 着替えとかも必要だしね。 身支度すらしてもらえないまま追放されたんだから」


「うん、ごめんね」


「あんな分からず屋の両親だなんて思わなかったしね。 悪山くんのどこが悪いのかしら……!」


 千冬は、見た目で男と付き合うべきというある意味歪んだ考えを持っている。

 性格重視の亜里沙の両親とは相容れない考えなのだ。

 なので、千冬が何故亜里沙の両親が悪山との付き合いを認めなかったのかは全く知らない。

 いや、多分この先も知ろうとしないだろう。


(悪山くんは、桂川くんより素敵な人なのに……何でパパとママは……)


 それは、俯いたままの亜里沙も同様であろう。

 彼女も両親が悪山の本性を知っているから認めなかったというのを一切知らないのだから。

 ずっと両親からそう教えられたにも関わらず、友人の彼方よりイケメンな男と付き合うべきという言葉に耳を傾けてしまったのだから。


「とにかく今日はあたしの家に泊りなよ。 ごはんも作ってあげるからさ」


「ありがとう、千冬」


「悪山くんには、あたしから連絡しておくから」


「うん……」


 家に戻る事すら許されない亜里沙は、今日は千冬の家に泊まることにした。

 ひとまず食事付きで。

 悪山にも連絡しておくことを約束してもらった亜里沙は、今は何も考えたくはないみたいだ。

 千冬に支えてもらいながら、亜里沙は千冬の家に向かう。


 これが、彼女の転落の始まりでの一幕であった……。

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