10 友人から知った幼馴染の話

「ただいまー」


「「「ままー、おかえりー」」」


「お帰り母さん、お疲れ様」


 もうすぐ夜6時になる時にようやく由佳里母さんが帰ってきた。

 パートと言っても、コンビニで週5日シフトに入っているらしいので、安めの時給でもそこそこお金が入るらしい。

 父さんの弁護士の仕事としての報酬で得たお金がたんまりあるが、三つ子幼女の妹たちをも養わないといけないし、仕方のないことだろう。

 俺も社会勉強のためにバイトも少ししようかな……?

 あいの山学園がバイトを認めているかはまだ分からないが。


「今日は彼方が晩御飯作ってくれたぞ」


「まぁ、ごめんね。 娘を迎えに行ってくれただけでなく料理まで」


「ああ、気にしないでくれ。 父さんが再婚するまでは俺が料理していたし」


 そうそう、今日の夕飯は俺が作った。

 もちろん陽愛達の為の料理もしっかり作っておいた。

 準備が完了しても、母さんが帰ってくるのを待ってから食事にするよと言っておいたので三つ子幼女は大人しく待っていた。

 その間に、今度は由奈が抱っこをせがんできたのだけど、可愛いし癒されるので抱っこしてあげた。


 家族団欒で夕食を食べ終え、風呂は幼女達のお願いで一緒に入ることに。

 シャンプーを丁寧にしてあげるなど、苦労はしたがそれも心地いいものだった。


 風呂の後は、三つ子幼女の妹たちは父さんや母さんと遊んでいるので、俺の部屋では教科書などの整理をしていた。

 そんな時、不意にスマホに着信が入っている事に気付き、スマホを見る。


服部はっとり 三太さんたか……。 どうしたんだ? こんな時に……)


 着信の相手は、中学生の友人の服部はっとり 三太さんただった。

 この友人から、俺が落ちた『公立栃木西部高等学校』に幼馴染の羽田が合格したという事を知ったのだ。

 当然ながら、三太もこの公立校に合格して、今日入学式に臨んでいたはずだ。

 こんな時間帯に着信が入って来たことを気にしながら、俺は通話を始める。


「もしもし」


『おおっ! 彼方でござるか!』


「ああ。 で、こんな時間に電話するなんてどうしたんだ、三太?」


『卒業後に栃西高に合格した羽田についてでござるが……』


「羽田がどうかしたのか?」


 やはり羽田についてか。

 三太のトーンからして真剣そうだが、俺としてはもう過ぎたことだが、一応聞いておくか。

 奴が付き合っている男が、ガールフレンドになった小梅崎さんにも関わっていた男だから尚更だ。


『今日の入学式に来てないからおかしいと思って、両親に聞いてみたところ、どうも両親が各書類を出さなかっただけでなく、家を追い出されたらしいでござる』


「……はい?」


 まさかの報告内容に、俺は変な声が出てしまった。

 合格したのに奴が入学していないどころか、必要書類を両親が出さなかっただけでなく、家を追い出したって……。

 一体どうなってるんだ?

 羽田があの男……悪山と付き合っている事に関係があったりするのか?

 俺の頭の中に、次から次へと疑問が湧いたのだった。


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