02 俺の失恋と父さんの再婚報告

 約4ヶ月前の話。

 それは、公立校の受験が差し迫った時だった。

 放課後、突然幼馴染みの羽田はねだ 亜里沙ありさから別れ話を切り出された。


「私達、もう終わりにしましょう。 好きな人が……出来たから」


 羽田から他に好きな人が出来たというのについては、昨日に年上のイケメンと羽田が付き合っている様子を密かに見ており、こっそりスマホのカメラに収めていた。

 当然ながらショックはあった。

 だが、ここ最近の羽田の様子から、他に男が出来たのではと予想していたが、ここまで当たるとは思わなかった。


「そうか……」


 俺はそれだけ言って羽田に背を向けたまま、何も言わずに羽田から離れた。

 そのまま家に帰宅し、父さんに話したら公立校の受験をやめるかと聞いてきたが、俺は受けると言った。

 今の精神状態では、受験を受けても上手く解答が出来ずに不合格になると睨んでの事だろう。

 幸い、併願としてある私立高校には合格しているので、公立校に滑ったらそこに入学するだけだ。

 それもあって、公立校の受験をしないのは失礼にあたるので、敢えて受験に挑んだ。

 まぁ、やはりショックが続いていた状態で受験したので、上手く解答出来る筈がなく、結果は公立校は不合格となり、併願で合格した『私立あいの山学園』に入学する事になった。

 私立なので学費は高いが、父さんの弁護士事務所が盛況なので、お金には困らない。


「ただいまー」


「おお、お帰り。 その様子だと公立は駄目だったみたいだな」


「まぁね。 父さんの言うように振られてからあまり日が経ってなかったからね。 失恋のショックが思っていた以上に影響したよ」


「なら、報告と顔合わせは後日にするか?」


「ん? 顔合わせ?」


 父さんから『顔合わせ』という単語を聞いて首を傾げる。

 少し視線を下駄箱付近に向くと、知らない人の靴が幾つかあった。

 さらに、小さい子の靴もあった。

 三組あるという事は、おそらく三つ子だろうな。


「父さんな、再婚する事になったんだ。 だから新しい妻とその連れ子達に顔合わせをしてもらおうかと思ったんだがね」


 再婚……。

 父さんはそう言った。

 確かに前の母さんは、俺達の家族に嫉妬した女に拉致された上に崖から落とされて死亡した。

 だが、奇跡的に目撃者がいた事と付近の防犯カメラで犯人が割れて、殺人容疑で逮捕され、父さんも自身が育てた優秀な弁護士を雇って母さんの親族と共に慰謝料や懲役刑を求めて裁判も起こし、その結果、懲役刑と慰謝料を勝ち取った。

 実はその犯人は、かつて中学生時代に母さんをいじめていた主犯格の女だった。

 その犯人に最愛の母さんを殺され暫くはショックを受けたが、弁護士の仕事はしっかりこなしていた。

 そんな父さんが俺がもうすぐ高校生になるというタイミングで再婚するに至ったのだ。

 だが、俺が未だに失恋のショックを抱えているなら日を改めて顔合わせをしようかと父さんは提案したが、せっかく来てくれたのに後日にするのは失礼すぎるので、俺は顔合わせに応じる事を父さんに伝えた。


「いや、今から顔合わせするよ。 靴の多さからしてその人達はもう来てるんだろ?」


「そうだが……、いいのか?」


「構わないよ。 その人は今どこに?」


「リビングにいるよ」


「分かった。 早速行こう」


 俺がそう言いながら、父さんと一緒に再婚相手が待っているであろうリビングへと向かった。

 どんな人か……見てみる必要があるからな。


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