10-2 文化祭  開幕




 トントン。

 議長の矢野が小槌を打った。

 背が高く大人っぽい顔立ちの矢野は、

 議長役に適任だった。

 小嶋が、そんな矢野に熱い視線をおくっている。




「みなさま、ご静粛に。

 これより都立西第一高校、

 二年A組による、臨時議会を開会します!」


 議長がたからかに宣言した。

 ざわざわしていた会場が落ち着いた。



「議題は、自殺管理法です」



 舞台には三つの議席を設置した。

 客席から見て、右にぼく。

 まん中に、小嶋。

 左に、今井。

 右端に立つ、矢野が議会を進行する。



「みなさまもご存知のとおり、

 昨今の世間を、さわがせている話題です。

 私たち一人一人が、

 真剣に考えなければなりません」



 客席の前の方で、カメラがまわっていた。

 文化祭の模様は、ネットでライブ配信され、

 学校の関係者に公開されている。


「自宅で視聴している方々も、

 スマートフォンにて、

 忌憚のない意見を、どしどし投稿してください。

 ご参加、よろしくお願いします」



 舞台の上部に、

 特大スクリーンが設置されている。

 議題が映しだされた。




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 【議題  自殺管理法】




【自殺の現状】


・日本は、自殺大国である。


・令和16年。

 政府発表による年間自殺者の数は、

 6万人を超える。


 一日、約160人が、自殺している。

 令和元年からの累計自殺者の数は、

 80万以上である。


・自殺であるのに、

 事故死や不審死と判定される事例がある。


 平成15年以降、

 年間、約15万人の変死者がいる。

(病死や自然死ではない)

 日本では自殺者と認定しない。


 世界保険機構(WHO)の方針では、

 不審死の約半分を、

 自殺と計上するよう示唆している。


・年間自殺者の実数は、

 10万人を超えていると推定できる。





【未遂者の現状】


・自殺未遂者のための、救急車の搬送人数は、

 年間9万人を超える。


・専門家の見解によると、

 自殺希望者は、

 未遂者の10倍以上は存在すると言う。


 現在、およそ100万人以上が、

 自殺を望んでいると推察できる。

 



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