君を探して

26-1 君を探して



──────────────────



 上杉『元気そうで、良かったです』



──────────────────




 返信した。

 画面を見ていたが既読がつかない。

 LINEの通話ボタンを押した。



 カランコロンカラン カランコロンカラン カランコロンカラン… …


 

 でない。我慢できず電話した。



 〈現在 電源が切られているか 電波が 繋がらない場所にいます〉





 なんだか違和感があった。

 ドイツ、本当なのか。

 今日は、8月15日。

 現在の時刻は、深夜3時2分。

 リィ──ン 

 夜風に吹かれて風鈴がせわしなく鳴った。

 ぼくは、その場で立ち上がり深呼吸した。

 左手に持つスマートフォンを、胸の前にかざす。

 ネットで、

 国際便の運行スケジュールをチェックした。


「ドイツ便などない」




 コロン。

 スマートフォンから音が鳴った。

 LINEの通知音。

 内容は、今井からのメッセージだった。

 前のつづきだった。

 ぼくは、それを読んだ。




 ながれる文字、

 ながれる文章、

 ながれる意味、

 画面を超えて、聞こえてくる、響いてくる、

 強い想いが。

 忍びよる不安と不穏、

 ひしひしと指先で受けながらスクロール、

 ぼくの予感が、 確信へと変わった。

 最後の言葉をかみしめた時、

 ぼくは、今井の真意を悟った。

 瞬時、死神が、

 ぼくの心臓を鷲掴みにした。


 おそらく、

 今井は、現実世界の肉体、

 今井雪をすてて


 ──────死ぬ




 ぼくの直感が反応した。

 視界が歪み無音が轟いた。

 起きていることが、事実なのか疑いながらも、

 再度、時計を確認した。

 3時8分。



「今井、どこにいるんだ」




 ──上杉くん


 胸中で呼ぶ声がした。

 そして、思い出す。


「上杉くん、わたしの秘密……。

 教えたら、助けてくれる?」



 君と過ごした時間のなか、

 君が口にした言葉が、

 つぎつぎと脳裏によぎってきた。



 絶対に探す。

 ドイツだろうがどこだろうが、

 世界の果てまでも探しに行く。

 たとえ、

 そこが、地上に存在しない場所であっても。

 たとえ、何万光年も離れた星にいても。

 ぼくは、君を探し逢いにいく。













  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る