9-2 VRグラス

 

 


 令和の時代に突入し、

 VR革命が加速度的に発展した。


 VRとはバーチャル・リアリティー、

 仮想現実のこと。

 AI、IT技術はもちろん、

 VRのハードウェアも高度に発達した。

 VRゴーグルや、

 ヘッド・マウント・ディスプレイは、

 小型化、軽量化され、

 一般のメガネサイズとなった。

 それは、VRグラスと呼称される。



 『自宅にいても、どこでも行ける』

 『一人でいても、みんなと会える』



 これをキャッチフレーズに、

 時間と空間を超える擬似体験を可能にした。


 VRグラスをかけると、360度、

 超高画質の立体映像が視える。

 上下左右に見まわ体を動かすと、

 自分の動きに連動して映像も動く。

 高速通信のため、遅延時間は皆無で完全同期する。

 音は専用ヘッドホンで、立体音響が聴ける。

 視覚と聴覚、

 目と耳が、現実の世界から遮断され、

 デジタルの空間と音を認知する。

 そのため、自分が本当に、

 美しい仮想空間に存在しているような、

 経験ができるのだ。



 VRグラスに映る仮想空間に入り、

 未知の場所へ行くだけではない。

 自分とそっくりの

 仮想の3Dキャラクターを創造できる。

 アバターだ。

 アバターは自分の容姿と肉体を、

 緻密にデジタル上で再現してくれる。

 アバターとなり、なんと他者のアバターと、

 コミュニケーションがとれるのだ。


 これらの技術が、

 社会の多分野に恩恵をもたらした。

 そして、ライフスタイルが劇的に変化した。


 自宅でVRグラスをかけ、

 アバターになり仮想空間に作られた

 デジタルオフィスで仕事をする。

 そんな勤務形態をとる会社も増えた。


 ショッピングや旅行、

 コンサートやスポーツ観戦も、

 自分の部屋で楽しめる。

 VRグラスを使用すれば、

 その場にいると同然の臨場感を堪能できた。

 特にゲームなどの、

 エンターテインメントの分野で大活躍だった。

 ヘビーユーザーの間では、

 どれだけ仮想世界に没入して、

 リアルに近づけるかを、

『没入感度』というキーワードで表現していた。



 また、医療分野においても大いに活用された。

 治療は無論、

 寝たきりの患者もVRグラスを使った。

 病室にいながら外出したり、

 入院中でも家に滞在している気分になれた。



 他に、特別な部屋や建物、街や遺跡などを、

 VR対応のデータで保存していく。

 それらのデータを仮想空間に反映させて

 指定した過去の場所を行く。

 そんな時間旅行の疑似体験もできた。

 どんどん可能性は広がるばかりだった。


 VR技術の導入が遅いのは、

 もっぱら学校などの公共機関だけだ。

 一部の私立学校では、

 アバターによる遠隔授業が行われている。

 公立の学校は、

『人との、直接のふれ合いを大切に』

 という方針のため、

 授業の有り様は、昭和のままだと言われている。



 それから、多くの人々が、あれを待望していた。

 フルダイブで仮想空間へ行けるシステムだ。

 ライトノベルの、VRMMOように、

 リアルの世界では意識を失い、

 完全に異世界に行けるものだ。


 残念ながら、

 2035年の現在では、まだ開発されていない。











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