第23話 かつての仲間①

 類を見ない急成長の末、たった一年足らずで勇者パーティーと呼ばれるに至った一行。


 数ヶ月前、パーティーリーダーであるダリスは、仲間の支援を担っていたエンシェンターであるアランを追放した。


 それからというもの…………


「くっ……!? このモンスターこんなに強かったかッ!?」


 額に汗を浮かべ両手剣を構えるダリスが不満を叫ぶ。


 そんなダリスの声に、メンバーの一人――セリアという緑色の髪を長く伸ばしたエルフ族の少女が、杖を構えながら呟く。


「や、やっぱりアラン君がいないから……」


「あぁッ!?」


 その呟きを拾ったダリスが怒鳴ったため、セリアは「ご、ごめんなさいっ!」と半泣きになりながら謝る。


 そんな二人へ――――


「今は戦闘中です! 目の前のモンスターに集中してください!」


 そう冷静な指摘をしたのは、片手剣を携えた金髪碧眼の少女ロティリア。


 そして、そんなロティリアの隣で拳を構えている青髪の少女メアも、無機質な表情で言葉すら発さないものの、ロティリアの意見に賛成だという風に頷く。


 リーダーである自分がメンバーに注意されたのが気に食わない様子でダリスは舌打ちするが、今は取り敢えず目の前のモンスターに集中する。


 全身を硬質な鱗で覆われた超大型の蛇型モンスター。


 そんなバケモノに向かって、勇者パーティー四名は攻撃を仕掛けた――――



 そして、しばらくして――――


「ったく、コイツこんなに強かったかぁ……?」


 倒した大蛇のモンスターを前に、ダリスが怪訝に眉を顰める。


 そこへ、ロティリアが剣を鞘に納めてから来た。


「やはり、戦闘中セリアが言っていた通りではありませんか? アランが抜けた穴は大きいということです」


 メアもコクコクを何度も首を縦に振る。


「や、やっぱり二人もそう思う……?」


 セリアの確認に、ロティリアとメアが頷いた。


 そんな彼女らに、ダリスは面白くない視線を向けるが、その視線を受けてもなおロティリアは話を続けた。


「『これ以上親友のアランを危険な目に合わせられない』――貴方がそう言ったから、私達はあえて最後アランに冷たく接し、パーティーを辞めさせるよう促しました。ですが、今の私達を見てください。とてもアランを心配できるような立場にあると思いますか?」


 そう。

 これまで皆異常なほどにステータスが成長していたのに、アランが抜けてからというもの、著しく成長具合が低下してしまった――否、のだ。


 それだけではない。

 戦闘面においても、やはりアランのサポートがなくなってから余裕をもってモンスターと対峙できなくなっている。


 後ろにはアランが付いている――その圧倒的安心感に、アランを失って初めて気が付いたのだ。


 そんな彼女らの意見を前に、ダリスは苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべながら考えていた。


(っち、折角邪魔なアランを排除して、俺だけのハーレムが作れたと思ったのによ……)


 ダリスはチラリと三人の少女を盗み見た。


 セリアは胸がやや貧相ではあるものの、線が細く肌も瑞々しい。流石エルフといった美少女っぷりだ。


 ロティリアは艶やかな金髪をなびかせており、凛々しい碧眼と言い精緻に整った顔と言い、まさしく戦場に咲く花――女騎士といった感じでこれまた美少女。


 そして、メアは表情を一切動かさないし口数も極めて少ない。背も低く華奢だが、それがまた人形めいた神秘的な雰囲気を醸し出しており、やはり美少女。


(へへっ、コイツらをいつか俺のモノにしてやりてぇ。だが、コイツらはアランが戻ってくることを望んでやがる。っち、鬱陶しいが、ここで三人と揉めるわけにはいかねぇ……)


「はぁ、わかった。だったら、やっぱアランを連れ戻そう」


 ダリスの言葉に、三人はパッと顔を明るくした――メアはほんの僅かにではあるが。


「じゃ、じゃあ、取り敢えず王都まで戻って、ギルド本部でアラン君が今どこにいるか調べてもらおう!?」


「ええ、そうですね」


「……ん」


 乗り気なセリア、ロティリア、メアに、ダリスは内心で相当憤っていた――――

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