第15話 失踪事件を調査せよ!②

 俺達は、捕縛した人攫いの男三人が意識を取り戻すのを待ってから、この女性失踪事件の裏にいるのが、やはり新領主ガレフ・ルージャスであるという証言を得た。


 まぁ、なかなか口を割らなかった男達から、どうやって証言を得たのかについては触れないでおこう。


 とにかく、俺達は取り敢えず捕縛した人攫いの男三人をセルティエの役所に突き出したあと、ギルドに顔を出した。


 そして、ミラのギルド支部長権限ですぐに馬車を二台用意してもらった。


 もちろん王国騎士団から調査官を派遣してもらう要請は出した。しかし、それでは今領主宅に囚われている女性達が救出されるのは少し先の話になってしまう。


 馬車が二台あれば、囚われている女性達を全員連れ出せるはず。


 俺は、フウカ、ミズハ、エリンと共に、領主宅へ乗り込み、調査官が派遣される前に女性らを救出するべく、今まさに馬車で夜道を駆けていた。


 俺とミズハが手綱を握り、屋敷の正面で降ろす予定のフウカとエリンは俺の馬車の荷台に乗っている。


「夜明け前に救出するぞ。あと、戦闘になってもなるべく殺すなよ? お前ら威力を加減しないと大虐殺しかねないからな」


 そんな俺の言葉に、フウカが半目を作る。


「加減する方が難しいんだけど……まぁ、わかったわ」


「了解しましたご主人様。では、手筈通り私とフウカさんが屋敷の正面から派手に攻め注意を引いているうちに――」


「――拙と若様で裏から潜入。囚われた者達を速やかに救出する」


 エリンの確認に続けたミズハ。


 作戦を確認したところで、皆が首を大きく縦に振った。


 そして、そうこうしているうちに領主の屋敷に到着した。


 俺はフウカとエリンを屋敷の正面近くで降ろしてから、ミズハと共に馬車で屋敷の裏手に回り込む。


 屋敷は人の背丈を大きく上回る頑丈な外壁に囲われていた。


 俺達は馬車を少し離れたところに停車させ、屋敷正面でフウカとエリンが衛兵らの注意を引いてくれるのを待つ。


 そして――――


 ピカッ、ドォオオオオオンッ!!


「な、何だ!?」

「正面に敵襲ぅ~~ッ!」

「賊だ賊だぁあああッ!!」


 ……恐らくフウカの攻撃だろうな。さっきの爆撃はちょっとやりすぎな気もするが、まぁ、当初の目的通り、甲冑の擦れる音を交えた足音は皆屋敷正面の方へ向かっている。


「よし、ミズハ。行くぞ」


「御意!」


 俺とミズハは外壁を高々と飛び越える。


 屋敷の敷地内に着地し、気配を殺しつつも、迅速に屋敷内部へと入れる場所を探す。


「若、この小窓から入れるのではなかろうか」


「……いや、無理あるだろ」


 ミズハが言うそれは、室内に日光を取り入れるためだけの文字通り小窓。とても人間が入れるサイズではなかった。


「せめてその小窓の下の、この扉の鍵が開いてればいいんだが」


 俺は小窓の下にある出入り口のノブに触れてみるが、やはり内側から鍵がかかっており開かない。


「では、拙が小窓から入り、内側から扉の鍵を開けてくる」


「いや、だからどうやって入る――って、えぇえええ!?」


 俺の目の前で、ミズハが溶けた。


 溶けたミズハは人の形を失い、完全に半液体状――そう、元のスライムに姿を変化させていた。


「そんなことも出来るのかよ。便利な身体だな……」


 スライムと化したミズハは、その柔軟極まる身体で小窓から屋敷内部へと侵入。そして、ガチャッと内側から扉の鍵を開けた。


 開かれた扉の先には、既に人の姿を取り戻したミズハが立っていた。


「よ、よくやったミズハ……」


「お褒めに預かりありがたき幸せ」


 ポン、と胸に手を当てて微笑むミズハに、俺は苦笑を浮かべながらも「よし、早く女性達を救出しよう」と言い、二人で屋敷の中を進んでいく。


「うむぅ……侵入できたのは良いものの、一体どこに囚われているのやら……」


 大きなフロントへと出て、物過激隠れている俺達。


 衛兵は正面でフウカとエリンが引き付けてくれているとはいえ、安易に探し回っていると流石に見付かりかねない。


「まぁ、地下室っていうのがお約束だが……」


 どこが地下室への入り口なのかがわからない。


「ま、こんなときにお役立ちなのが元勇者パーティーエンシェンターなんだけど」


「若様?」


 俺は一度呼吸と精神を整えるように深呼吸をしてから――――


「スキル【ディテクション・アイ】」


 物体を透視、視野大幅拡大、洞察力向上の効果を持つ上級魔法。


「さて、入り口はどこだ?」

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