第11話 懐かしの故郷①

 見事ゴブリンの襲撃を凌ぎ切り、中でも特に活躍した俺、フウカ、ミズハ、エリンは皆からしつこいほどに感謝された。


「な、何で勇者パーティーのアランさんがこんなところにいるのかわかりませんが、おかげで助かりました!!」


「い、いやいや、当然のことをしたまでだ。あはは……」


 と、俺と同い年くらいの冒険者の少年にお礼を言われ。


「おい、ねーちゃんスゲェなぁ!? 若けぇのにあんな炎魔法使えるなんて!」


「ま、当然ね」


 おじさん冒険者に絶賛され、サッと得意気にツインテールを手で払って答えるフレン。


「まさか、ゴブリンキングを一太刀でやるとはなぁ~。いやぁ、恐れ入った!」


「これしきのこと、造作もないっ!」


 こちらも褒められて嬉しかったのか、にこっと笑顔を作り、ゴブリンキングを斬ったとは思えないほどに細い右腕を曲げて力こぶを作って見せるミズハ。


「おねぇちゃんの弓矢凄かったぁ! あたしもいつかおねぇちゃんみたいに強い冒険者になりたい!」


「頑張ってください。貴女が立派な冒険者になったそのとき、またお会いしましょう」


「うん!」


 と、そんな風に幼い少女と約束を交わすエリンの姿もあった。


 以降、モンスターの襲撃はなく、俺達は夜明けと共に再び馬車に乗り込んだのだった――――



◇◆◇



「帰って来たなぁ~」


 あれから何度か馬車を乗り継ぐこと数日。


 俺が台車から降り立ってうーんと伸びをするこの街は『セルティエ』だ。


 王都が位置する国の中心部から、馬車で片道一日半程度といったところにある中規模の街。


 やや古風な景観の街並みで、鋭角に傾斜した屋根を持つ木組み建物が多い。


「ここがアンタの故郷なのね」


 馬車を降りたあと、石畳の歩道を歩いているとフウカが辺りを見渡す。


「何だか活気がないわね」


「ちょっとフウカ。主様に失礼ですよ」


 フウカの物言いに注意を出したエリンだが、フウカは「だって本当のことじゃない」と言い切った。


 ただ、実際フウカの言う通りで、主要都市とは言えずとも比較的王都に近い街にしては行き交う人々の身だしなみと言い表情と言い……何だか元気がなさそうに見える。


 少なくとも、俺がギルド直轄の孤児院で育てられていたときに比べたら、格段に活気が失われている。


 何かあったのかな? と考えていると、俺の腕をちょんちょんとミズハが突いてきた。


「そういえば若。今、拙らはどこへ向かっているのだ?」


「ん。ここだ」


 もう着いた、と俺が立ち止まった先には、年紀を感じさせる二階建ての大きな建物があった。


「ここは冒険者組合――通称『ギルド』のセルティエ支部。俺はこのギルドが管理している孤児院で育ったんだ」


「では、世話になった人へ挨拶にでも来たのか?」


 ミズハがこてんと首を傾げてそう尋ねてくるので、俺は「まぁ、そんなとこかな」と答えておく。


 そして、三人を連れてギルドの入り口を潜り、見知った顔が担当しているカウンターが開いていたので、そこへ向かった。


「お疲れ様ですっ! 依頼の受注ですか? それともモンスター素材の換金……でしょう、か……?」


 愛想のいい笑顔を浮かべた少女が、もう習慣付いているであろうギルドカウンターでの接客のセリフを口早に並べるが、俺の姿を見るなり徐々に目を見開いていった。


「よっ、久し振り。元気にしてたか?」


「せ……先輩っ!?」

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